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第211話 竜、仲間を集める

「あーい♪」

「ぴよー♪」

「また来てね♪」

「コメ、確かにいただいた。すまないが移住ドラゴンは一度ここへ連れて来てから、各国へ打診を取るからよろしく頼む」


 モルゲンロートとの話が終わり、城から出てくる。

 ひとまず里を出たいドラゴンの内、友を数人連れて来て欲しいとのこと。

 今日はこのまま家へ帰り、ロクローのところへ行く予定になった。

 すっかり目の覚めたリヒトは掴まり立ちをしながらローザにハニワを掲げて笑っていた。


「ではその時が来たらよろしく頼むわい」

「荷台……ディラン殿が引いてきたのですかな?」

「うむ。そんなに変かのう、あちこちで言われるのじゃが」

「まあ、大量の野菜とコメを引いていたらドラゴンと知っていてもとは感じますぞ」

「馬か牛を手に入れたらいかがです?」

「考えておこう。こやつらと違って馬や牛はあまりウロウロできんじゃろ? じゃから家にずっと置いておくのも可哀想じゃ」

「そうなんですよねえ」

「ああ、そういう……」


 モルゲンロートとローザが荷台を引こうとしたディランを見て目を丸くしていた。

 ドラゴンに変身するなら分かるがこのまま山まで引こうとしていると聞いてのことである。

 しかし、馬や牛は町においそれと入って散歩するのが難しいということで手に入れていないと返していた。

 置いていくとしても檻の中にずっと入れておくのは可哀想であることも気がかりだそうだ。


「牧場のようなところがあればいいが、山だと魔物も居るしなあ」

「管理する人を置いても一家で過ごすのに気になりますものね……」

「そうですね、まあ変身できるようになったから荷物が多い時はドラゴンになりますよ♪」

「はは、皆に知られて良かったということにしておきますか」


 モルゲンロート達は納得してディラン達を見送った。

 リヒトも歩くようで、空の荷台を引いて町へ出た。門へ向かっているとトワイトが口を開く。


「牛さんが居ればミルクは自分達で手に入れられるようになりますけどね」

「食料になる草が山に無いのも難しいわい」

「あーう?」

「うんうん、牛さんよ。静かでいいからあそこは離れたくないですしねえ」


 リヒトが通りを歩く牛を指さして首を傾げた。トワイトは笑顔で頭を撫でてそうだと頷く。


「牛か馬……もしくは羊とかか? うーむ、難しいのう」

「お金を稼いでミルクは買いましょう♪ 羊さんたちは村で会えばいいですし」

「あーい!」

「わほぉん」


 村に行くと聞いてダルの尻尾がピンと立つ。相変わらずあの木彫りの狼に敬意を払っているようだ。


「よーし、町を出たらデランザでも見て帰るかのう。みな荷台へ乗るのじゃ」

「わん♪」

「うぉふ♪」

「あう」


 よちよちと歩くリヒトを抱えてトワイトが荷台へ乗り、ペット達も飛び乗ると早足で道を進み出す。


「あー♪」


 自分で歩きたかったようだが、速いことに感動してすぐに機嫌が良くなった。

 ハニワとでんでん太鼓を振りながら道行く人に笑顔を振りまく。


「いいなあ坊主!」

「可愛い~」

「あーい♪」

「「「わふ」」」

「わんちゃん達が顔だけ出してるのもいいわね」


 もちろん町の人は顔をほころばせていた。

 そして門を出てからデランザの到着する場所へ行くも彼は居なかった。

 今日は来ない日なのだそうだ。


「残念だったわね」

「次は先に会っておくべきじゃな」


 ディラン達は仕方ないと山へと帰るのだった。

 ロイヤード国へは空を飛んだ方が早いかと


◆ ◇ ◆


 ロイヤード国


「父上、今日のお勉強が終わりました!」

「お、早いな。どれどれ……ほう、やるじゃねえか。さすが俺の息子だ!」

「えへへー」

「王子は勉強熱心でございますよ」


 午前の勉強が終わったギルファが先生と共にギリアムのところへやってきて成果を報告していた。

 先生は微笑みながらギルファは勉強にしっかり向き合っていると話す。


「ご褒美があるから今日は特に頑張ったんだ! 狩りに連れて行ってくれるんだよね?」

「ん、ああ、そうだな」

「あ、忘れてたとか?」

「そうじゃねえよ」


 と、ギリアムは答えたが実は忘れていた。

 いつも頑張っているからなにか欲しいものがないか聞いたところ、外に出て狩りを見たいと言っていた。

 その約束をして、勉強が早く終われば連れて行くと言ったのを『今』思い出した。

 準備をしていないからどうしようかと考え言い淀んだのだ。


「……まあ、なんとかなるか。よし! 出かけるぞ! 騎士を数人連れて行く!」

「ハッ、承知しました。カーラ様には?」

「伝えるだけ頼む。連れて行くわけにもいかないしな」

「かしこまりました」

「やったー!」

「良かったですね王子。ではわたくしはこれで」


 ギリアムが傍に居た側近に準備を進めるようオーダーすると、先生がにっこりと微笑んでから退室する。


「そういやお前の装備はできたのか?」

「うん! この前、鍛冶師のおじさんが作ってくれたんだ。ロクローさんの爪で作ったからとても強いって」

「マジか」


 そういえばロクロー爺さんと仲がいいなと思っていたが、まさかそんなことになっているとはとギリアムは真顔になる。

 ドラゴン装備であれば下手な金属よりも硬く、魔法防御が高いので騎士よりもいい装備だからだ。


「あ、ロクロー爺さんも連れて行くか。コックに言って、昼飯も外だ」

「分かりました。カーラ様が後で知ったら怒りませんかね?」

「……埋め合わせはするから大丈夫だろ」


 城に誰も居なくなるのは避けたいので、娘のカーラには黙っていることにした。

 程なくして装備を整えた一行が城の庭に集まりだした。


「王子、いいのを着ていますね」

「ありがとう! ロクローさんの装備なんだよ!」

「いいですなあ」

「剣も切れ味が良さそうだ」


 ギルファも装備を手伝ってもらい、騎士達と和やかに話をしていた。

 そこでギリアムが現れた。


「おう、助かる」

「陛下、準備は出来ております」

「ああ……って、ギルファ、お前その木彫りの熊を持っていくのか?」

「うん! ロクローさんが来るから安心だけど、ディランさんのお守りもあるといいかもって」

「まあ、危ない目には遭わないと思うがいいか」


 好きにさせておこうとギリアムが口にするとギルファは嬉しそうに笑っていた。


「おう、わしと散歩に行きたいんじゃと?」

「あ、ロクローさん!」

「ようロクロー爺さん、すまないな。どうだ住処は」


 そこへ片手を上げてロクローが庭へやってきた。ギリアムは今の住処はどうかと尋ねる。


「かなりええぞ! 山に行ってもええが、町も困っている者がおるからのう、手伝って金と酒を貰っておるわい!」

「はっはっは! 適応するの早すぎだろ。まあ、好きなところに住んでくれていいからな? それじゃ皆、狩りへ行くぞ」

「ハッ!」


 そしてギリアム達は近くの森へと出発するのだった。

 

 それから数時間程経ったころ――


「おや、ディラン殿ではありませんか」

「ごきげんようじゃ。ギリアム殿とロクローはおるじゃろうか?」

「あー、少し前に狩りへ出て行きました。すぐ戻ってくると思うので、お待ちください」

「あら、入れ違いでしたか」

「あー」


 ――ディラン達がロイヤード国へ到着した。

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