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第210話 竜、決定を聞く

 ディラン達は荷台を引いて城へと赴いた。

 道中、注目されていたがディラン達の顔を知っている者は手を振るなどして通り過ぎていく。リヒトが起きていないのが残念そうだったくらいだ。


「ディラン殿をお連れしました」

「入ってもらってくれ」

「ハッ!」


 謁見の間へ案内された一家は中から聞こえてきたモルゲンロートの声を受けて中へ入る。


「お久しぶりですなディラン殿、トワイトさん」

「お邪魔するぞい」

「おはようございます」

「あーい……」

「あら、リヒト君は寝ているのね」

「わふ」


 謁見の間はいつも通り騎士達とモルゲンロート、そしてローザが居た。

 中央ほどまで歩いて行くと、二人も椅子から立ち上がりディラン達の下へ降りてきた。


「座ったままでええのじゃが」

「なに、あなた達に堅苦しいことは必要ないということですよ。テラスへ行きましょう」

「お天気がいいですものね」

「わほぉん♪」

「わん」

「うぉふ」


 テラスに移動すると聞いてダルが浮足立つ。日向ぼっこをしながら寝そべる算段だ。そこでルミナスとヤクトが気づき、前足で背中をお腹を押していた。

 まあまあと王妃であるローザが困った顔で笑いながらアッシュウルフ達も移動させた。


「こけー!」

「ぴ、ぴよ……!?」

「あら、起きてしまったわね」

「これ、いきなり大きい声を出してはいかん」

「ははは、構いませんよ。椅子に座ってください。君たちもその辺でくつろいでいいぞ」


 ジェニファーが高いところへ来てテンションを上げていた。モルゲンロートは気にしないでいいと言い、ダルは早速日当たりのいい場所で寝そべった。


「あーう……」

「そろそろ起きそうだけどダル達に任せようかしら?」

「わほぉん」


 ダルはそれを肯定するように一声鳴き、トワイトは敷物を用意してリヒトをダル達のところへ寝かせた。


「わん」

「え? ああ、おもちゃね。カバンを置いておくから大丈夫よ♪」


 起きた時にハニワが無いと泣くかもしれないとルミナスがトワイトの持つカバンを引っ張っていた。

 それに満足したルミナスはリヒトの下へ戻り、寝ているひよこ達を一羽ずつ丁寧にリヒトの胸ポケットを入れた。


「それでモルゲンロート殿、ドラゴン達の住処についてどうなったか決まったと聞いたが?」

「ああ、そうなのだ。このひと月あまり、ドルコント国のことが終わってから、各国の王に時間が合う日があって話し合いが行われた」


 なかなか時間が取れない上に、距離もある各国の首脳陣だが。たまたま時間が取れたそうだ。

 とはいえ、実はトーニャが変身して各国を回り、王を一か所に集めたという。


「あやつ、なにも言っておらんかったぞ」

「私が口止めをしていたから話さなかったのだろう。実は会談をしていたというのはあまり知られたくない」


 ドルコント国の事件がまさにそういう話だったことを言う。

 要するに暗殺などをしやすい状況だったので、周りに知らせず、書状のやり取りを数度して王たちだけが合う日に飛んでもらったのだという。

 

「よく行くと言ってくれましたねえ。ドラゴンに襲われるかもと思わなかったのかしら?」

「周辺でロイヤード以外でそれなりに近いのはエンシュアルド、ガリア、サリエルド、テンパールがあるのだが、エンシュアルドとガリアにサリエルド、そしてドルコント国が応じてくれた」


 四つの国はそれなりに交流があるため打診をしてみたところ、テンパールは遠いため辞退。ドラゴンについては一度見に行きたいとのことだった。

 サリエルド帝国とは交易をしていて、そういうことに興味があると参加した。

 ということで、エンシュアルドとガリア、そしてドルコントの四国が話し合いに望んだそうである。


「それでも四国が話し合いに参加したのは凄いのう。モルゲンロート殿の人柄のおかげじゃろうて」

「はは、ほめ過ぎですよ。帝国の王は自身の強さに自信を持っているから大丈夫と思ったのだと考えます。ドラゴンに国を守ってもらえばいいなどと言っていたのであまりお勧めはできないかもしれないが……」

「まあ、そう考える者が居てもおかしくはないですしね」

「あいつは圧政は敷かないが、武を肝としている。どこと戦うのか知らないが、騎士や戦士、魔法使いの練度はかなり高い。そこにドラゴンが加わればと考えていそうだ」

「気概は高いのう。他は? ドルコント国は最近行って知っておるが」


 ディランがそう尋ねるとモルゲンロートは頷いてから続きを話し出す。

 まず、エンシュアルドは肯定的で、トーニャを見て決めたそうだ。話が通じて人型になれるなら国民の一人として扱えるだろうと言う。

 ガリアは来るドラゴンの性格によると答えたらしい。トーニャは女性で大人しい方だが、ドラゴンによっては気性が荒かったりする。

 それでは民が怯えてしまうと人を見るならぬ、ドラゴンを見てから受け入れたいそうだ。


「まあ、ワシを含めた年寄りはそこまで我を通すやつはおらんから大丈夫じゃろう」

「サリエルド帝国は?」

「ひとまず紹介無しでいくそうですわ」


 モルゲンロート的に悪い王ではないが、サリエルド帝国の王は少々強引なことを言ったり行動を起こす。

 戦争をするとは思えないが、変な気を起こさないように一旦モルゲンロートが保留にした。

 ドルコント国はウォルモーダが参加したが、二つ返事で受け入れをOKしたとのこと。


「……例の件で迷惑をかけたからと言っていたな」

「ウォルモーダもようやく楽になったじゃろうに」

「そうですなあ。あの傲慢な態度は息をひそめて、今はただの頑固親父という感じになっていますが」

「うふふ、真面目すぎたのかもしれません。リーフドラゴンのフラウさんが行けばお花を咲かせてくれるから安らぎになるかもしれませんね」

「その方、ウチにも欲しいですわね」


 リーフドラゴンは殺伐とした場所に花を咲かせるため、心が荒んだ人間が接するのはアリだとトワイトは言う。ローザは花が好きなので、クリニヒト王国に来て欲しいと微笑んでいた。

 結局、トーニャとも話をしてドラゴンを受け入れてみようかという結論が出たとのこと。


「それはめでたい。ボルカノやベルクラント、サタケあたりは喜ぶじゃろうて」

「うむ。移住に関してはそういうことなので、ディラン殿かロクロー殿を通じて話をしてもらえるだろうか? ひとまず各国二人ずつくらいで」

「承知したぞい」

「良かったわねえ。ありがとうございます」

「なに、これも何かの縁でしょう。そういえば息子さんは?」

「ハバラはまだ来ておらんな。引っ越しする前に顔を見せるよう言っておるからそろそろじゃろう」

「その時は声かけをしていただければ助かりますな。北の山を使ってもらおうかと考えています」


 それならとディランはロクローに連絡を取るかと考えだす。ひとまず数人、友に声をかけるかと。


「少し待ってもらえれば集めて来るわい。多分、まだ里におるじゃろうしな」

「こちらはいつでも大丈夫なので、ゆっくりでも構いませんよ」


 そう言ってモルゲンロートは笑う。

 とりあえず今後の指針は決まったので、ロクローへのコンタクトを取ろうと決めた。

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