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第21話 竜、伝説の存在みたいになる

「人間の王よ、お主が見たドラゴンとはワシのことで合っておるじゃろうか?」

「……! あ、ああ、遠かったがあの山に下りたドラゴンと似ている! あ、あなたがそうだったとは……!?」

「でかい……!?」


 変身しきったディランは見事な金色の竜となっていた。そんな彼が尋ねると、モルゲンロートが冷や汗をかきながら返答した。

 バーリオ以下、騎士達は咄嗟に国王を守る位置に移動しているのは流石だった。


「あー♪ だうー♪」

「あら、どうしたのリヒト? お父さん怖くないのかしら」

「あー♪」

「こけー」

「ぴよー」

「ふむ、やはり将来大物になるかもしれんのう」


 トワイトがディランに近づくと、リヒトはペタペタと鉄よりも硬い鱗を嬉しそうに触っていた。

 ペット達は不思議そうに見上げ、鋭い爪のある足に乗っかるなどの行動を見せていた。


「お、奥方は彼がドラゴンであることをご存知で……?」

「え? ああ、はい。私もドラゴンですし」

「「え!?」」

「あなた、リヒトをお願いします」

「あいわかった」


 妻が声をかけるとディランはすぐに人間の姿になり、リヒトを預かった。

 続けてトワイトも魔力を放出して、鮮やかな翡翠色のドラゴンへと変化した。


「あうー♪ ああああう!」

「こりゃ、暴れてはいかん。落ちてしまうぞ」

「こけー!」

「ぴょっ!」

「あらあら♪」


 母も変化したところリヒトとペットは大興奮だった。だが、その場にいた騎士達とザミールは二体目のドラゴンを見て立ち尽くしていた。


「……」

「……」

「という感じで、最近あの山へ移り住んだのじゃが……おや、村人がきおったわい」


 トワイトがその場で変身したまま居ると、門番を含めた村人がこちらに来ているのが見えた。


「ちょ、なんだよこれ!?」

「すげえ! ドラゴンってやつか!?」

「ど、どっから現れたの? あれ、トワイトさんが居ないわね」

「私がトワイトですよー」

「「「喋った!?」」」

「あー♪」


 場が一気に騒然となり、トワイトが喋るとリヒトが喜んでいた。姿は違えど母はわかるようだ。

 やがてトワイトも元に戻ると、ザミールが渇いた喉を水で潤してから話し出した。


「私はキリマール山にドラゴンが現れたと陛下に言われ、あなた達夫婦ならあるいは知っているかもと思ってきたのですが……まさか当のドラゴンだったとは……」

「まあ言っておらんかったしのう。山なら人間も居ないだろうしいいかと思ったのじゃが……」

「ダメでしたか?」

「あ、いや……」


 申し訳なさそうなディランと悲し気なトワイトが口を開く。その様子にモルゲンロートが困惑する。

 そこでバーリオが咳ばらいをして一歩前へ出て来た。


「ご夫婦がドラゴンということは承知しました。それで、どうしてこの国へやってきたのでしょう? それをお聞かせいただけますかな?」

「バーリオ……うむ、そうだな。この国の王であれば事情は話すべきか。ここで話すが良いか?」

「構わない。村の者よ、下がっていても良いぞ」

「いやあ、ディランさんとトワイトさんがドラゴンって驚いたけど危害を加える感じじゃないからご一緒させてください。話を聞いてみたいです」


 若者が頭を下げると、モルゲンロートは騎士達に目配せをしてから頷いた。

 ディランへ視線を移すと、話してもいいと悟ったディランが口を開く。


「ワシらは元々もっと遠くにある竜の里に住んでいたのじゃ。しかし、昨今、里も手狭になってきたと年寄りを里から追い出す施策が若い者から提案されてのう」

「それで長年生きている私達が里を出ることになったんです」

「なんと、追い出されたというのか」

「うむ」


 モルゲンロートが目を見開いて驚く。ドラゴンの世界もそういうことがあるのだとショックを受けていた。

 そんな中、ザミールが恐る恐る手を上げて聞いて来た。


「あの、年寄りと言っていましたがお二人はおいくつくらいでしょう……? ドラゴンは長生きするとは聞いたことがあります。二百歳くらい、とか?」

「ん? ワシは今年で二千五百六歳になるかのう」

「私は二千二百四歳ですねえ」

「あーう♪」

「「「はあ……!?」」」


 歳を聞いてその場にいた人間達は素っ頓狂な声を上げていた。

 それも無理はなく、二千年前ともなれば王政もなく、町も怪しい。村が形成されたくらいの時代で魔物と剣とも言い難い鈍器で戦っていた時期なのだ。


「い、いにしえのドラゴン……」

「え? ワシはアークドラゴンという種類じゃよ」

「あなた、多分そうではなくて古いドラゴンと言っているんですよ」

「おお、そうか!」

「そうだが、そうじゃない!? では、移住地にこの山を選んだのですな」


 モルゲンロートが咳ばらいをして再度尋ねると、ディランが頷いて言う。


「高い山じゃったからあまり人間も来ないだろうと思ってな。魔物もいるし、野草も採れる。土地も広いからちょうど良かったのじゃ」

「な、なるほど……」


 山はある意味誰のものでもなく、いうなれば国のものである。自由に使う分には確かに問題はないとバーリオは納得する。

 そこで村人が手を上げて夫婦に問う。


「でもどうして人間の姿なんだい? ドラゴンのままじゃダメだったのか?」

「ああ、人間の姿の方が楽だからじゃよ」

「え、そうなのか?」

「ええ」


 意外、という感じでお互いの顔を見合わせながら首を傾げる面々。しかし、ディランは今まで生きて来た話を続ける。

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