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第209話 竜、二日目の過ごし方を考える

「おはよーパパ、ママ、リヒト」

「おはようトーニャ」

「起きたか」

「すぴー……」


 屋敷に泊って行ってくれと言われてディラン達は一晩お世話になった。

 朝、両親の部屋に赴き、あくびをしながら挨拶をするトーニャ。


「わほぉん……」

「ぴよー……」

「うぉふ……」

「ありゃ、リヒトは寝ているのね」

「はしゃぎまわっておったから仕方あるまい」


 ベッドの上でアッシュウルフ達を枕と布団代わりにして寝ているリヒトを見てトーニャが苦笑する。

 昨晩はユリやトーニャ、リーナやガルフと一緒に遊んでもらいご満悦だった。

 いつもはペット達だけなので、長いこと新鮮だったのだろう。

 ちなみにフレイヤとエメリは夕食後、デランザが待っていることを思い出して早々に帰った。


「さすがにハニワは置いているわね」

「寝るときは置くように言っておいたからね♪ 笛とでんでん太鼓もしばらく握っていたし、ハニワもそのうち飽きると思うけど。朝食の用意はしているけど、みんなが揃ってから食べる?」

「早い……さすがママ……」

「あーう……」


 リヒトの髪の毛を撫でながらトワイトに顔を向けて頬をひきつけさせていた。

 いったいいつから起きて仕込んでいたのかと思いつつ、ひとまず食堂へ向かう。

 ディランがリヒトを抱っこし、起きた時に騒がないようハニワも持っていく。


「こけー」

「ひよこ達はダル達が頼むわい」

「わほぉん……」

「わん」


 まだ寝ているひよこ達は一羽ずつ咥えてそれぞれアッシュウルフ達の頭に載せていく。そのままディラン達へついていく。ダルはきちんと扉を鼻で締めるところまでばっちりである。

 しばらくして全員が起きだしてきて朝食となった。


「レイカちゃんはそのうちお米の匂いがダメになると思うから今のうちねえ」

「そうなんですか?」

「大丈夫な人もいるけどね」


「今日は依頼誰が行く? 俺とトーニャ、ユリ、ヒューシでリーナが留守番がいいと思うんだけど」

「いいわよー」

「ごめんねみんな」

「大丈夫だ」

『オッケー! レイカのお世話はわたしがやるわ!』


「お主らは外で食べるのじゃ。もう少し待っておれ」

「うぉふ!」

「わん!」


 いつもの朝の光景にディラン達が加わり、昨日に引き続き賑やかな朝となった。

 ダル達は自宅ではないためここでは外で食べるように言われていた。

 大人しく待っているのを尻目に、ヒューシがディランへと話しかけた。


「そういえば陛下のところへは行かないのですか?」

「モルゲンロート殿か。今は用が無いからのう、忙しいじゃろうし今日は止めておくわい」

「そうですか? 顔を見せるだけでも喜ぶと思いますよ」

「ふむ」


 ディランはご飯を食べながらポツリとつぶやく。さすがに呼ばれても居ないのに行くのは憚られると考えていた。

 

「謁見も毎日あるじゃろうし、また今度にしようかのう。荷物はトーニャ達にプレゼントするために持ってきたから土産もないしな」

「ははは、なるほど。おコメはもっとあった方がいいと思いますよ。それじゃ僕たちは先に出ます。ゆっくりしていってください」

「またな!」


 食べ終わったヒューシを筆頭にガルフやユリたちも立ち上がり食器を片づける。

 屋敷でゆっくりするよう告げると、トワイトが笑いながら言う。


「ありがとうヒューシ君」

「あー……」

「うふふ、行ってくるわねリヒト~」


 寝ているリヒトが行ってらっしゃいというような感じで声を出し、トーニャが小さい手を握ってから返していた。

 ガルフ達が出て行ったあと、ディランもペット達へ食事をさせるため外へ出る。


「よし、食べるのじゃ」

「わほぉん♪」

「またねー、ダル! それとみんな!」

「わん!」


 庭に出て食事を始めたペット達に挨拶をしながらユリも装備を整えて出て行った。


「今日も天気がいいのう。リヒトが起きたら適当に町を歩いて帰るとするか。金を稼ぐ手段も欲しいわい」


 野菜を売っても他の人間に申し訳ないので市場で野菜を売ることはしないと決めている。トワイトの絨毯や木彫りの置物しか売るものがないなと芝生の上に座って考えていた。


「まあ、なんとかなるか。当面はリヒトのミルク代があれば野菜と米で食っていけるしのう」


 肉も狩りをすれば食える。

 生活だけなら山に居ても十分できる。ただ、リヒトのミルクとおもちゃはお金が必要なのでその分は持っておきたい。


「わほぉん♪」


 今日は町で買った美味しいお肉と持ってきた野菜なのでダル達もご満悦である。

 ジェニファーはトウモロコシ。ひよこ達はリヒトと一緒にまだおねむだ。

 庭でも見てみるかと視線をペット達から外したところで、外から声をかけられた。


「ディラン殿! ちょうどよかった」

「む?」


 声のした方向を見ると、そこには騎士が立っていた。見覚えのある顔にディランは腰を上げて門の方へ向かう。


「バーリオ殿のところの騎士じゃな。ワシに何か用かの? というより、良くここにいるのが分かったのう」

「フレイヤに聞いたのですよ。昨日、ここへ遊びに来た際に会ったと。陛下がお会いしたいとおっしゃっていますが来ることは可能でしょうか?」

「おや」


 先ほどまでそんな話をしていたところで騎士が現れ、ディランはどこかで聞いていたのかと周囲を見渡す。


「どうされましたか?」

「なんでもないぞい。忙しいじゃろうから行くつもりは無かったんじゃが、大丈夫そうならやぶさかではないぞい」

「それは良かった! ドラゴンさん達の今後をどうするかを話したいと言っていて。山へ迎えを出そうと思っていたところです」

「ほう」


 このひと月、ディラン達が山でいつもの生活をしている間、色々と手を尽くしてくれていたらしい。それはお礼を言わねばと承諾することにした。


「少し待っていてくれ。トワイトとリヒトを連れて来る。お主達、大人しくしておるのじゃぞ」

「わほぉん」


 ご飯を食べているから大丈夫だと、ペット達は前足を上げてディラン達を見送った。


「トワイト、騎士が来て城へ招待されたが行けるか?」

「あら、そうなんですか? 私は構いませんけど、お土産が無いわね」

「ウチに持って来たおコメを持っていったらどうですか? 野菜が多いからそれでも十分ありがたいですし」


 食堂でリヒトを抱っこしていたトワイトに声をかけると、お土産は持っていきたいと首を傾げる。

 そこでレイカが、ディラン達の運び入れたお米を持っていくことを提案してくれた。


「では今回はそれでいきましょう! またなにか持ってくるわね」

「あーい……」

「では荷台に載せていくとしよう。すまぬな、ガルフ達によろしく頼むわい」

『大丈夫だと思うよ!』


 提案でいこうと夫婦はありがたく承諾してお米を持っていくことにした。

 二つあったうち、俵一つでとりあえずいいだろうと担いでいく。


『ふわー、凄いなあやっぱり』

「また来るわい」

『うん!』


 ディランはリーナの頭を撫でてから再び外へ。すると荷台に乗ったペット達が一斉に鳴く。


「「「わふ」」」

「エサ箱も載せたのか。ならいくとするか」

「あーう……」

「ちゃんとカバンにハニワも入れていますよ」

「あー……♪」


 まだ寝たままのリヒトがむずむずと声を出す。ハニワはカバンに入れておいたので心配ないと耳元で言うと、嬉しそうに笑った。


「相変わらず躾のいいウルフ達ですな。では行きましょうか!」

「うむ」

「……ディラン殿が引くんですか……!?」

「そうじゃが、いかんか?」

「いえ、ドラゴンなので出来ると思いますが、牛か馬を手に入れてもいいのでは、と……」

「エサ代がかかるからのう」


 ディランは二度目の荷台引きにツッコミを受けた。その回答が世知辛いものだったので、騎士は愛想笑いを浮かべるばかりだった。


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