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第206話 竜、女子会をする

「気を使わせてしまいましたね」

「たまにはこういうのもいいものですよ♪ はい、お茶」

「ありがとうございます!」


 ディランが買い出しをしているそのこと、トワイトはお茶を入れてレイカ達にふるまっていた。


「まさか竜神様のお茶が飲める日がくるとは……」

「大げさじゃない?」

「罰当たりですよユリ! ドラゴンといえば我々ウィズエルフはおろか他の種族でも崇高な存在なのです」

「まあ強いのは間違いないけど、畑仕事とかしているし鶏を飼ってたりするからわたし達とあんまり変わらない感じがするのよねー」

「もっと崇めるべきです!」

「まあまあ。エメリさんもそんなに畏まらなくていいわよ。お茶のおかわりは?」

「いただきますっ!!」


 エメリは相変わらずドラゴン夫妻を崇めていた。ユリやレイカは人型で接している時間が長いため、あまり脅威には感じていないらしい。


「あんまり権威……いえ、強さかしら。それを誇示しても、誰もついてこないものよ。だからユリちゃんやレイカちゃん達が遊びに来てくれるのは嬉しいの。ねえ、ルミナス、ジェニファー、トコト♪」

「わん♪」

「こけー♪」

「ぴよー♪」

「あはは、みんな可愛いなあ」


 トワイトが声をかけるとペット達は一斉に返事をした。ルミナスのブラッシングをしながらお茶とお菓子を食べているフレイヤはにっこりとほほ笑んでいた。


「だからエメリさんもその服みたいに慣れてもらえると嬉しいわ♪ よく似合っているわよ」

「勿体ないお言葉……! っと、この服は理由がありまして……元の服だと町を歩くときに人間がこちらに注目するので合わせた服にしようとフレイヤが……」

「私のせいみたいじゃない。ウィズエルフさん達に『これが時代の最先端ですよ!』とか言ってたのに」

「うわあ!?」

「わん!?」


 トワイトがエメリの着ている服を褒めると、顔を赤くして注目されるのが嫌だったと語る。

 しかし次の瞬間、フレイヤにどや顔を決めて仲間に見せびらかしていたことを暴露された。

 顔を青くしたエメリはフレイヤに襲い掛かり、ブラッシングをしてもらっていたルミナスが慌てて飛びのいた。

 それと同時にフレイヤとエメリは派手に転んで床に倒れた。


「あらあら」

「いたた……もー、エメリ危ないよ?」

「す、すみません……」

「ルミナス、こっちにおいでー」

「わふ」


 もみくちゃになった二人を見かねてユリがルミナスを呼ぶと、ブラシを咥えてからユリの下へ避難した。


「賑やかでいいわね。お菓子もありがとうございます」

「いえいえ、デランザさんの移動で怖がらずに護衛をしてくれるのはこの屋敷の方々だけですからね。そのお礼ですよ!」

「ぴよー」


 トコトはレイカのお腹の上に乗りクッキーのかけらを貰っていた。


「じゃあ結構お金は稼げているのかしら?」

「そうですね。フレイヤさんの移動護衛は決まった額が支払われるのでそれは貯金に回しています。ヒューシとユリ、それとリーナが主に行く感じですよ」

「竜神様と一緒に居たというもあり、初めて集落に入った人間の方が安心するというわけです」

「なに言ってるのよ。村長さんはあんまり気にしていなかったと思うけど」

「伝統がー!」

「はいはい、エメリさん、お茶のおかわりよ」

「いただきます……!」


 こんな調子で女子会は進んでいた。

 基本的にフレイヤとエメリが良くしゃべると言った感じだが、このひと月半でエメリが王都に馴染めたのはひとえにレイカ達と仲が良くなったためである。

 それでも人間側のフレイヤやユリは『人間は恐ろしい』という先入観は頭に置いておけと注意していた。いい人間ばかりではないという話である。


「デランザも大人しく仕事をしているみたいで良かったわ」

「そうですね。デランザさんは報酬代わりに団長たちから美味しいものをもらっているんですけど、それが楽しみらしいです。たまになにもないんですけど」


 デランザも上手くやっている……というより仕事だからと割り切っているそうだ。 

 どうせ山で寝るしかないからと当初の予定通り付き合ってくれているらしい。


 「食っちゃ寝ばかりで戦いの勘が衰えなければいいですがね」

「平和だったらそれでもいいと思うけどねー? ヴェノムキマイラだっけ? 結構強いし」

「……わん?」

「ありゃ、来客だ」

「ご、ごめんねユリ」

「全然大丈夫よ! ルミナス、ジェニファー、一緒に行こうか♪」


 そこで再び来客を告げる音が鳴り、ルミナスとジェニファーを連れて部屋を出ていくユリ。


「大きいお屋敷にして良かったわね」

「ホントに……お二人にはなんてお礼を言っていいか。こうしてゆっくりできるのもディランさんとトワイトさんのおかげですからね」

「トーニャも住んでいるからお互い様よ」

「いやあ、トーニャも依頼でかなり世話になっています……」

「ドラゴンだけあって強いもんね」


 トーニャと屋敷が手に入った時点でかなり生活が安定して楽になったとレイカは言う。屋敷は広いので子供が出来ても安心して育てられると頷いていた。


「トーニャちゃん経由で頼ってくれていいからね?」

「こけー」

「はい! 生まれる時に一緒に居て欲しいですね。そういえばジェニファーもひよこちゃんと生んだのかしら……?」

「卵は毎日生むわね」


 トワイトがジェニファーを撫でながらそういうとレイカは笑顔で出産のときに居て欲しいと返していた。できれば両親を連れてきたいとのこと。


「あー、いいなあ。私も彼氏が欲しいー」

「フレイヤはがさつですし無理……あ、痛い!?」

「ザミールさん狙いのくせに……!」

「そ、そんなわけありませんよ!? このわたしが人間ごときに……!」

「どうして悪の種族みたいな言い方をするのよ」


 またフレイヤとエメリがじゃれあい、レイカがため息をついていた。

 そこで来客を連れたユリたちが戻ってくる。


「まさかの来客だったわ」

「やほー」

「あら、シスさん」

「こけー!」


 それはディランに促されてやってきたシスだった。口にキャンディーを咥えたまま片手を上げて挨拶をする。


「ドラゴンのおじさんと途中で会ってさ、女子会をしているっていうから来たのよ……って、なに? 戦闘訓練でもしてるの……?」

「うふふ、お茶を持ってきましょうね♪」

「あ、すみません」


 トワイトがまた人が増えたことを喜び、お茶を取りに立ち上がった。お構いなくと言いつつシスはソファに腰かけた


「結構集まったわね……ダルとか居たら庭で遊ぶんだけど、なんか話してた?」

「エメリさんがザミールさんを好きだって」

「違いますってぇぇぇ!」

「あ、ウィズエルフ! 初めましてよね」

「おう!? 気づけば新しい人間が……!? コンニチハ……」

「ちょっと気になる話じゃない。聞かせてよ! シスもなんであの二人と居るのかとか」

「まあいいけど面白くないわよ?」


 そして女子会らしく恋バナに移行するのだった。

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