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第199話 竜、リヒトの将来を考えながらのんびりする

「あーう!」

「ぴよー!」

「こけー!」

「うぉふ!」

「朝から元気じゃのう」

「わほぉん……」


 ドルコント国の一件から中一日が経過し、ディラン達は数日開けていた自宅の換気をしていた。

 玄関まで開け放っているのだが、すぐそこの庭でヤクトに乗ったリヒトにトコトとジェニファーが空に向かって元気よく鳴いている。

 布団を干しているディランと、いつも通り気だるげになったダルがあくびをしながらそれを見ていた。


「うふふ、リヒトも旅行に行って気合いが入っているのかもしれないわね」

「ユリウスという友達も得たからのう」

「あい!」

「うぉふ!」

「わほぉん!?」

「あ、ダメよリヒト。ヤクト、止まって止まって」


 片手を上げて声を出していたリヒトが、ヤクトの背中をぽふぽふと叩いた。それに合わせてヤクトが飛び出していく。 それを慌ててトワイトが追いかけた。


「うぉふ?」

「あーう?」

「こけー?」


 一同はぴたりと足を止めて『どうしたの?』といった感じでトワイトへ振り返る。

 彼女は腰をかがめてからリヒトたちと目線を合わせて笑う。


「町と違って山は危ないから勝手に出歩いたらダメなのよ」

「あーう」


 少し前にダルと一緒にユリウスを探しに町へ出たことで『大丈夫』だと思ったらしい。ヤクトの背中をぽふぽふと叩いてトワイトを見上げていた。


「うーん、ヤクトやダル達が一緒でもだーめ。お父さんかお母さんと一緒の時にお出かけしましょうね」

「あい♪」


 頭を撫でてぎゅっとリヒトを抱きしめると喜んでいた。ここではだめだとなんとなくわかったようである。


「ぴよー」

「あなたたちも外に出たら魔物に食べられちゃうかもしれないし、気をつけなさいね」

「こけ」

「ぴ、ぴよ」

「うぉふ……」


 散歩にいけるかと思っていたひよこ達が残念そうに鳴いたので、トワイトはそれも含めて注意していた。

 町ではすぐ後を追っていたので良かったが、今の調子で目を離した隙にどこかへ行ってしまう危険があった。


「帰って来たばかりじゃが元気が余っているようじゃな。布団も干したし、戸締りをして散歩でもいくか」

「そうですね。少し運動をしてからご飯を食べると美味しいですし」

「わん♪」


 散歩と聞いてダル以外のペット達は大喜びで飛び跳ねる。そのまま一旦お家へ帰り、リヒトに靴を履かせるなど準備をしてから玄関に鍵をかけて出発した。


「今日はどこへ行くかのう」

「久しぶりに木彫りのある村にしましょうか♪ ドルコント国に居たからここ何日か行ってないですし」

「お、そうするか。あのならず者達に少し金をやったからまた稼がないといかんのう」


 ちなみに協力してくれたならず者たちは完全にお咎めなしというわけにはいかず、少しの間だが牢に入ることになった。

 それ自体は納得しており、一年程度でいいのかと驚いていたくらいである。ディランが渡したお金はそれぞれの家族に渡っているので無駄にはならなかった。


「そういえばあの黒装束の人たちはどうなったのかしら?」

「あやつらはオルドライデが引き取ったようじゃ。牢へ入れられたみたいじゃぞ。ブライネルを父としていた……というか孤児を洗脳していた感じじゃからのう。恨みが消えるまで時間がかかるかもしれんわい」


 ブライネルを敬愛していた黒装束達は年若い者が多かった。

 上手く口を使い、そうなるよう仕向けたのだろう。だがブライネルにとって平民の子は使い捨てであろうということもあり不憫だとオルドライデが語っていた。


「あい」

「うぉふ」

「あら、歩くの?」

「あーい!」


 夫婦がそんな話をしていると、ヤクトにまたがっていたリヒトがおもむろに降りて掴まり立ちをしだした。

 トワイトが尋ねると空いた手を大きく掲げてそのまま歩き出す。

 道はディランが歩きやすくした地点なので、リヒトでも移動可能である。こけることはあるかもしれないが、ダルとルミナスというバックアップがあるのでとりあえず痛いことにはならなさそうだ。


「ぴよぴー」

「あー♪」

「こけー♪」


 そんなリヒトの周りにジェニファーとひよこ達が合流し、並んで歩く。それに気をよくしたリヒトはカバンから太鼓を取り出し、ポコポコと鳴らしながらゆっくり歩く。


「ふふ、仲良しさんね♪ こっちよ、おいで」

「自分で歩くと体力もつくし良く寝れるから偉いぞリヒト」

「あい♪」


 少し先に行って腰をかがめ、手を叩きながらリヒトが歩いて来るのを待つトワイト。ディランはリヒトの横を歩き、褒めてあげた。

 リヒトはそれがわかったのか太鼓を高く掲げてディランににっこりと笑いかける。


「はい、頑張ったわね♪」

「あー♪」

「あら」


 そのままリヒトはよちよちと歩いていき、一瞬だけヤクトから手を離してトワイトの腕にすっぽり収まった。

 少しだけでも自分で歩いたことに二人は驚いていた。


「うーむ、ドルコント国でダルに乗って町へ繰り出したのが良かったのかのう。家でもよく動いておるが、外でも動きたいのかもしれないわい」

「好奇心旺盛ですもんねリヒト。人の気配に敏感で、オルドライデさんに吸わせていた薬にも気づいていたみたいですし将来どう成長するか楽しみですね」

「あーう?」


 子供の成長は早いと思いつつ、同時になんらかの能力を持っていそうだと話す。

 官職の男はオルドライデに少しずつ毒の草花で作った香水を吸わせていたのだが、それに気づいていた節があると夫婦は感じていた。

 忌み子というよりどちらかといえば能力が高いのではと思い始めていた。

 そういう力があり、よくわからないから『忌み子』ならつじつまは合うな、と。


「わほぉん」

「うー?」


 そこでトワイトと手を繋いでいるリヒトの袖をダルが引っ張る。今度は自分の背に乗れとしゃがみ込んだ。


「うふふ、リヒトが成長してもダル達はまだお兄ちゃんでいたいみたいね」

「あーい♪」

「ぴよー♪」

「わん!」


 リヒトは意図を理解しすぐにまたがると、ダルはディランを見た後さっと前を走り出す。今は一緒に居るからいいよね? という感じだろう。

 そのダルにレイタが尻尾に飛び乗り、ルミナスにソオンとトコトが乗って後を追いかけていく。


「はっはっは、まだまだ赤ん坊じゃ。将来のことはまだええかの」

「そうですねえ、あなた」


 楽しそうにリヒトを追うペット達を見て二人は笑う。

 山に太鼓の音が響き渡り、一日の始まりを告げるのだった――

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