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第188話 竜、あぶり出しを見る

「そーっと運ぶのだぞ」

「わかっている……! ユリウス、起きてくれるなよ……!」

「よく寝ているから大丈夫ですよ。お腹がすいて起きるとは思いますけど」

「あらあら」


 オルドライデの子の名前はユリウスと言い、ウォルモーダとオルドライデが寝室へと連れて行く。

 真相を告げた後は通常通り会食を行い、ヴァールをメインの来賓として談話を終えた。

 ちなみにそんな中、こういった話もあった。


「そなた達には迷惑をかけた。すまない」

「まあ、ワシは構わんがドラゴン相手によく強気に出たものじゃ」

「それほどブライネル侯爵は油断ならない相手ということだ。偽りでも『赤ん坊が居る』という情報があいつに伝わればと考えていた。故に金髪の子供は欲しかったのだよ。言い方が悪かったのは間違いないが」

「昔はこういう話し方ではなかったのですけどね……」

「これはこれで舐められずに済むがな」


 若いころはオルドライデによく似た武人気質の男だったらしい。

 しかし、両親が亡くなった後、ブライネル侯爵憎しと、政策を変えたあたりから不遜な物言いをすることになったとカーネリア王妃が言う。


「さすがに命をくれてやるわけにはいかんから、追うことはなかったろうな」

「壁に大穴を開けられましたから」

「お互い様、ということか」


 ディランに謝罪を申し入れたウォルモーダにお互い様だと返していた。

 ちなみにシエラの家を提供し、生活するよう提案したのも保護とユリウスをどうにかすることがあるかもしれないという打算だと語った。

 今できる最善を、という意味では金髪の赤ん坊は手札として欲しかったことを素直に吐露した。


 そして――


「……集まってくれたか」

「あの場で話せないことでも?」


 ――ほとんどの人間が寝静まった夜。ウォルモーダは自分が決めた者を応接室に集めていた。

 ヴァール、バーリオ、コレル、ディラン、オルドライデの五人は適当に座り、まずヴァールが口を開く。


「そうだ、ヴァール殿。ここからは主要となりそうな者と、万が一のための証人が必要だと判断した」

「それでヴァール様や私を」

「うむ。ディラン殿は滞在してもらえる間オルドライデ達と一緒に居てほしい。リヒト坊とユリウスのこともある。そしてヴァール殿にはこの書状をもってクリニヒト王国へ戻ってもらいたい」

「これは?」

「私自らが書いたこの国の正式な後継ぎはオルドライデであるという証明書だな。一部は私が、もう一部は誰かに預ける予定だったがちょうどいい」


 くっくと笑うウォルモーダへオルドライデが少し眉をひそめてから尋ねる。


「遺言書じゃないだろうな……?」

「まあ、近いかもしれん。私の圧政がフェイクだと知られればあいつは動く。いや、分かっているからこそシエラとユリウスを狙ったのだろう」

「なんとかならないものなのですか? 相手は侯爵。王族のウォルモーダ様であれば排除も難しくないのでは……」


 そこでコレルが手を挙げて発言を得るとそんなことを言う。

 しかしウォルモーダはコレルの目を見ながら返答を述べた。


「侯爵とはいえ父の兄という肩書があるのが厄介でな。それに若いころに稼いでいて私財も私兵も多い。それも暗殺や誘拐で使い捨てになるような者も飼っている」

「王族なのに……」

「権力は正しく使わねば意味を成さない。習わなかったか? 大昔に平民の反乱でつぶれた国があるのを」

「マット帝国……ですか」


 コレルは過去に滅びた国を思い出して喉を鳴らす。恐らくブライネル侯爵が王政をしたならそうなるであろうとウォルモーダは。

 だが、陰からこそこそと動き自分の都合のいいように国を動かす方が『危なくない』と知っているのだ。

 

「お主たちの護衛はいいのか?」

「オルドライデと孫のユリウスが最優先だ。シエラは少し踊ってもらおうと考えている」

「踊る?」

「いわゆる囮というやつだ」

「父上……!!」

「ふん、そう憤るな。こうなった以上、シエラを殺させるような真似はせん。シエラにはドラゴンの妻と共にあの家へ戻ってもらう」


 ウォルモーダの提案はシエラを軽く見ているような感じだった。だが、手を挙げてオルドライデを座らせ、話を続ける。


「そうだ。それは構わないか?」

「ということはリヒトも囮に使うつもりじゃな」

「な……!?」


 ウォルモーダの意図を理解し、あっさりと言い放つディランにバーリオが驚愕する。

 しかし、ウォルモーダはニコリともせず流石だなと言い放つ。


「……本来はあの男が死ぬまで待つつもりだったが、こうなってはこちらから仕掛けても良いと考えた。ディランと言ったか? お主の妻は強いのであろう?」

「もちろんじゃ。リヒトをシエラに抱っこさせて誤認させる……そこを狙ってきた者たちを倒して捕縛、そんなところかのう」

「まあ、そうだな。しかし、捕らえたところで尻尾は出さないだろう。なので、わざと逃がす」

「なるほど……つながりを確認するつもりですね。そう上手くいくか……」

「その段階までくればこちらも手札がある。後手に回っていたが、打って出るとしよう。お主の子、使わせてもらう」


 ウォルモーダはディランにそういうと、ディランは小さく頷いた。

 

「はっはっは、言いよるのう。ウチのトワイトが賊に後れを取ることはあるまいて。ええじゃろう。アッシュウルフ達もそっちへ行かせるぞい」

「うむ」

「まったく……迷惑をかけすぎだろう父上……ユリウスはどうするんだ? いや、城の中に居るから問題はないのか?」

「そこも考えてある。……いや、そうするとディラン殿をシエラの方に回すか?」

「さ、さっぱりわからない……」


 ウォルモーダは迷惑をかけたならとことんという感じの言い分に、ディランは笑い、コレルが困惑する。

 そこからここからどういう動きになるかを話し合った結果――


「ではワシとアッシュウルフ、リヒトとシエラが家へ」

「トワイトさんがオルドライデ殿と隠したユリウス君の護衛ですね。そして私たちはクリニヒト王国へ帰還」

「それでいくか。リヒトとユリウスが入れ替わっているのがばれる可能性は?」

「……ある。が、シエラを城から出す前に対処はしよう。誰かはさっきの会食で判明したからな」

「では明日から行動開始ということで――」


 ヴァールが締めてこの場は解散となった。

 そして翌日――

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