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老竜は死なず、ただ去る……こともなく人間の子を育てる  作者: 八神 凪


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第18話 竜、朝から忙しく働く

「ふあ……」

「あーうー♪」

「おお、もう起きていたか。早いのう」


 まだ陽も登っていない早朝に、ディランが起きると、隣に置いているリヒトのベッドから声が聞こえて来た。

 覗き込むとリヒトがすでに目を覚ましていて手を伸ばしていた。

 ディランが抱っこをすると、髭に手を伸ばして感触を確かめる。


「なんかフワフワしたものが好きじゃのう。男の子じゃし、大きくなったら鍛えてやらんといかんか」

「あー♪」


 そんなディランの気持ちをよそに、顎髭を嬉しそうに触るリヒト。そのまま抱っこしてリビングへ向かうとすでに起きて食事の用意をしていたトワイトと鉢合わせた。


「おはようさん」

「おはようございます、あなた。リヒトも」

「うー♪」


 すっかり母親として認識しているため、トワイトが頬を撫でるとリヒトは満面の笑みで応える。


「こけっこー」

「あー♪」


 丁度その時、ジェニファーが隣接している小屋で朝の挨拶を告げた。リヒトはその声を聞いて大喜び。


「あやつも目覚めたか。卵を採ってくるかの」

「お願いしますね。リヒトは預かりましょうか?」

「このまま連れていくわい」

「うふふ」


 リヒトに構うディランを見てトワイトは微笑んでいた。手を振って見送り、彼女はキッチンへ。

 外に出たディランはリヒトに毛布をかけてから小屋の入り口を開けた。


「ジェニファー、起きておるか」

「こけ? こけー」


 来たんですねと言わんばかりに鳴いて、藁を組んで作った寝床からぴょんと飛び降りると卵を差し出した。


「三個も生んだとは元気じゃのう。どれ、すまんがいただくぞ」

「こけ」

「あーう」

「こけ♪」


 少し低い位置にあるためディランが腰を下げて卵を手に取る。屈んだところで目線がジェニファーと同じになりリヒトが手を伸ばした。彼女は背中を差し出すと、父と母がやるように背中を優しく撫でる。


「ひよこ達はまだ寝ておるな。起きたら食事にするから来るのじゃぞ」

「こけっ!」

「あーう」

「また後でな」


 ディランが立ち上がりリヒトの手からジェニファーが離れてしまい、リヒトは不満気に声を上げた。

 しかし、朝食の卵を届けるためディランは背中を撫でてやりながら小屋を後にする。

 ちなみに魔物にとってニワトリやひよこは美味しい餌だが、ディランとトワイトの気配があるため、この家屋周辺約一キロは何者も近寄ってこなかったりする。


「今日は三つじゃった」

「あら、元気ですねえ。一つは保存しておきましょうか」

「そうじゃな。ではリヒトを頼む。ミルクを取ってくる」

「ゆっくりしていていいのに」

「妻が働いておるのに座っておるのは居心地が悪いからのう」


 トワイトへ二つ卵を渡し、リヒトも受け渡すとディランはそのまま裏の洞穴へ。

 ひんやりとした箱の中に卵を入れ、小分けにしたミルクを取り出したらすぐに部屋へと戻る。


「今日は天気が悪いわい」

「そうですね。ミルクを温めてきますよ」

「頼む」


 ディランはトワイトにミルクを渡すと、暖炉に火をつけた。あっという間にリビングが暖かくなると、小さい影が集まってくる。


「ぴー」

「ぴよ」

「ぴよぴ」

「おお、起きてきたか」


 やはり暖炉に柵は必要かと思いながらひよこ達の暖を見守っていた。

 しばらくするとミルクを持ってトワイトとリヒトが戻ってくる。


「先にリヒトにミルクをあげますよ。またおねむみたい」

「うむ。ほらジェニファー達、飯にするぞ」

「あーい♪」

「こーけ」


 ディランはその間にペット達の食事であるトウモロコシを用意することにした。

 リヒトはというとぬるめのミルクをスプーンで口に運んでやり、むきゅもきゅとどんどん飲んでいく。

 そしてリヒトがコップに入っていたミルクを全部飲んだところで、トワイトが背中を軽く叩く。


「げふー」

「はい、げっぷもでましたね♪」

「あー……」


 お腹いっぱいになるとまたウトウトし始めたので、ベッドへ寝かすとそのまま目を閉じた。


「こけ!」

「ぴよ!」

「ぴよぴよ!」

「ぴよー!」

「焦らんでも無くなりゃせんぞ……」

「私達も食事にしましょう」


 戦争のような食事風景に呆れつつ、ディランはテーブルについた。ご飯と目玉焼きにオニオンスープ、それとタスクボアを燻製にした肉を少し。

 

「そういえば今日は商人さんが村へ来るかもと言っていましたね」

「そうじゃったっけ? なら行ってみるかのう。野菜もいい感じに育ったから土産に持っていこう。リーフドラゴンの爪垢は凄いもんじゃ」

「今度、フラウさんにあったらお礼をいっておかないといけませんねえ。今日はお野菜にして、お布団はまた今度持っていきましょうか」


 リーフドラゴンのフラウに感謝しながら二人は食事を続ける。とはいえそれほど大食いでもない二人の食事は早く、村へ行くための準備を進め始めた。


「こけー?」

「村に行くが、お主達も行くか?」

「ぴよ?」

「もちろんリヒトも行くぞい」

「ぴっ!」


 なら自分たちも行くとリビングに置いてあるバッグをひよこ三羽が引きずって来た。

 行きは一緒に歩くが、帰りは登りなのでこのバッグに入れて連れて帰るようにしようとトワイトが作ったのである。

 そして畑に行き野菜を収穫するため籠を持って外へ出ていくディラン。


「うむ、いい感じじゃ。トマトとナス、キャベツあたりを十個ずつ持っていけばよかろうか?」

「こけ」

「トウモロコシもか? お前達が食うんじゃないかと思ったが……」

「ぴよぴよ」


 お土産は多めにとでも言いたげにペット達はこくこくと頷いていた。

 そんな調子で準備も終わり、少し天気の悪い中、一家は村を目指して歩き出す。

 

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