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第168話 竜、なにかを聞く

「知り合い、ですか奥様?」

「あ、 バツを受けている冒険者達じゃないですか」

「知っているのか」


 カフェのテラスもどきで話をしていると、ウェリス達『ヴァンダールスト』のメンバーだった。

 ウェリスとバルドの二人はトワイトを知っているためバツの悪い顔をしていた。

 しかし、シスはあの場には居合わせていないため声をかけてくる。


「一応、話すのは初めましてですね。私はシス。こいつらと同じパーティの魔法使いです」

「まあ、これはご丁寧に。知っているかもしれませんがトワイトです。こっちは息子のリヒトよ♪」

「あーい♪」

「あはは、可愛い♪ よろしくねー」


 シスがトワイトと握手をした後、手を伸ばして来たリヒトに微笑みながら小さな手を取っていた。


「ドラゴンの子供、か」

「物騒な組み合わせだな」

「貴様……!」


 バルドとウェリスはそれぞれ思ったことを口にする。特にウェリスは嫌味を言うような感じで口にした。

 エメリが顔を顰めて立ち上がるが、トワイトが先に口を開いた。


「ううん、この子は私達の本当の子供とは違うのよ。山に捨てられていたのを私達が拾ったの。お父さんが見つけてね。あのままだと死んでいたかもしれなかったの」

「拾った……?」


 そこでウェリスは真顔になり、リヒトをじっと見ていた。そこでバルドが頭を撫でようと手を伸ばす。


「それは災難だったな。しかし、ドラゴンに育てられるなら強くなれそうだ」

「やー!」

「お」

「あら、珍しい」

「うむ、流石はリヒト様。失礼なヤツは分っている」


 バルドが手を伸ばすと、リヒトは珍しく頬を膨らませて嫌がり、手を払いながらトワイトの首にしっかりとしがみついた。


「あはははは! 赤ちゃんに嫌われてやんの!」

「むう……」

「そりゃお父さんを攻撃した人を好きになる人はいませんよ」


 大笑いするシスにフレイヤが追い打ちをかけた。バルドはその通りだと唸るしかなかった。

 するとそこでウェリスが口をへの字にし、リヒトに顔を近づけていた。


「うー」


 もちろんリヒトは

「……悪かったな、父ちゃんを攻撃して。もうお前の父ちゃんと母ちゃんや兄弟とは戦わねえ」

「あー?」

「行くぞシス、バルド」

「む、そうだな」


 リヒトが首を傾げるもウェリスは踵を返して歩き出す。促されたバルドも頷き後をついて行く。


「まったく……」

「あなたはバツを受けていないと思いますが、まだ一緒に居るんですね?」


 ため息を吐くシスにフレイヤが尋ねた。シスはその言葉に手を広げてから困った顔で語る。


「まあ、禁固刑なら見捨てたけどさ。とりあえず頭は悪いけど、強さは本物だしパーティを組んで戦う分には使えるかなって」

「ほう、いい考えだ」


 シスは馬鹿二人だけど依頼をするには十分な強さがあるから一緒に居ると告げ、さらに続ける。


「でしょ? まあ、ドラゴンに喧嘩を売るバカなんだけどさ。強い相手を倒すことが生きがいって感じ? ウェリスは孤児だったらしいわ。だから腕を上げて強敵を倒すことでしか認めてもらえる手段が思いつかないのかも」

「孤児……それでリヒト君が気になったのかしら」


 シスはウェリスについての話を続けていた。どういった過去かまでは知らないが、人から認めてもらうためにああいったことをしているとのこと。


「ただ、バルドは脳金だけど、ウェリスの方はドラゴンになにかされた過去があるっぽいのよねー」

「おや、それは……?」

「それは私にもわからないんですけどね。野営の時に寝言で魘されていたなって最近思い出したの。とりあえず自分で言ったし、もうお母さん達に攻撃はしないと思うけどねー」

「あーい!」

「ぴよー」

「ふふ、ホントに可愛い子だ♪」


 トワイトがドラゴンになにかされたと聞いて、こちらも珍しく眉を顰めていた。

 しかし、シスには細かいところまでは分からないと首を振る。


「おい、シスなにやってんだ? 行くぞ」

「はいはい、今行くからちょっと待ちなさいよ! それじゃあね♪」

「あい♪」

「また遊んであげてね」

「はーい!」

「きちんと仕事をしてくださいと伝えてください」


 シスは手を振りながらその場を後にすると、フレイヤがウェリス達をしっかり監視するように伝えていた。

 トワイトやリヒトも見送り、話は終わった。そこで店舗から先ほどのウェイトレスが出て来た。


「お待たせしましたー! イチゴのケーキとキンカーンティーになります!」

「あ! 来た来た! ほらエメリスイーツですよ」

「これがすいーつ……! イチゴの香りがいいですね」

「農家さんが丹精込めて作ったイチゴみたい。ちょっと高いし、人気なイチゴらしいよ」

「キンカーンティーはアレね、小さいオレンジみたいな木の実だわ」

「さすがトワイトさん♪」

「えっと、そういえば犬ちゃん達の器が無かったんですよね。赤ちゃんはこのボウルとスプーンでどうぞ」

「ありがとうございます♪ ダル達はこのお皿に入れていただけるかしら?」

「やっぱりなんでも出てくる……」

「あい♪」


 そんな調子でウェリス達のことは一旦忘れてスイーツタイムとなる。

 ひよこ達は炒った小さな豆を貰い、ダル達はリヒトと同じミルクを用意された。


「このフワフワとしたものはなんだ……! 白いのもなんか甘い!」

「スポンジケーキやクリームはエルフにはないんだ」

「これはまさに魔法……! イチゴの酸っぱさが飽きさせない……」

「キンカーンティーも渋みが丁度いいわ。ケーキは私も初めて食べたけど、作れそうね」

「え、ホントですか……!?」


 トワイトが少しずつケーキに口にし、キンカーンティーを飲んで味わっていた。

 再現するためにしっかり味わっている感じがあり、フレイヤが驚いた声をあげる。


「これは……危険……! 人間の町に来るのは私だけにせねば……!」

「欲望が凄いなあ」


 目を輝かせてケーキを食べる連れてきてよかったとフレイヤが目を細めるのだった。


「あー」

「はいはい、ミルクを飲みましょうね」

「あーい♪」

「「「わふ……わふ……」」」


 ひとまず女性陣とペット達は優雅な時間を過ごすのだった。

 そして依頼を受けるために外へ出たウェリス達は――


「うおお! キマイラだと!?」

「これは戦っていいのか?」

【なんダ、人間?】


 ――デランザと遭遇して興奮していた。それをみていたディランが口を開く。


「お主らか。ダメじゃ」

「マジか」

「やっぱただの馬鹿なのかしらねえ」


 当然禁止され、ウェリス達はがっくりと肩を落としていた。言った手前、ディランに食って掛かるようなことはなかったが、シスは呆れているのであった。

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