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第166話 竜、また注目される

「暴れたり威嚇したりすると色々なところに迷惑がかかるから慎重にな」

【承知しタ】

「あ、王都の外に降りてくださいー」


 ロクニクス王国上空まで帰って来た一行はゆっくりと王都へ降下していく。

 ディランが最後にもう一度デランザに忠告をしていた。

 王都の外に降りるようフレイヤが指示を出し、街門から少し離れたところに降り立った。


「ふう、空の旅は初めてだったけど、ソアラが大人しくしてくれて良かった」


 ザミールがデランザの背から降り、ディランのところから馬車を回収する。

 往復の道中、怖がって暴れるなども無かった馬に声をかけていた。


「うぉふ」

「ん?」


 ザミールの言葉に尻尾を振りながらヤクトが鳴く。呼応するように馬のソアラも鼻を鳴らしていた。


「全然平気だったみたいね。ひよこ達やジェニファーがいたからかしら?」

「自分より小さい生き物が居たからは分かる気がするかも? それじゃ私はバーリオ様を呼んできます」

「私は職人を呼んできますね」

「すまんが頼むわい」

「あ、人間! 私を置いていくのか!?」

「すぐ戻ってきますよー! その後お店に行きましょう!」


 フレイヤとザミールがそれぞれ関連する人間を呼んでくるとその場を離れる。

 エメリが慌ててフレイヤに声をかけるが、笑いながら手を振って町へと走って行った。


【我はどうスるのだ?】

「少し休憩かしらね? エメリちゃんも」

「むう、すいーつ……ハッ!? 奥方様、承知いたしました!」

「それじゃお茶を用意しましょうか♪」

「敷物はワシが出すぞい」

「竜神様のカバン、なんでも出てきますね……」

「あーい♪」


 トワイトが持っていたカバンから敷物を出して簡易的なピクニックのようになる。

 デランザも材木を置いてから寝そべるとあくびをして時を待つことにした。

 

「ぴよー」

「あー♪」

「器用ねえ♪」


 ぴーっと笛をリヒトが吹いて先を伸ばすと、ひよこがその上を走っていきまた戻ってくるという遊びをしていた。

 戻りが遅いと足場が無くなりリヒトの膝にポトリと落ちるが、服がクッションになるので特に怪我などしないようである。


「わほぉん」


 そしてダルはリヒトの背もたれになっていた。仕事をしていると言いたげだが、あくびをするのであまり真剣には見えなかった。

 

「うむ、外で飲む茶はまた美味いわい」

「美味しいです」

「おかわりもありますからね。デランザさんにはおやつを」

【む、赤い実……? オオ、美味い……!】

「ワシが作ったやつじゃ」

「キマイラがトマト……」

「魔物は割となんでも食うからのう」


 最悪、周囲の魔力を吸収すれば生きることはできるのが魔物で、食べれば活力があがるとディランがいう。

 

「長生きをしたいなら食べる方がいいのよ? ドラゴン達も食べない個体は食べないしねえ」

「米を食えばええのにのう」

「コメ……?」


 竜神に囲まれて恐縮しながらお茶をすすり、早くフレイヤが帰ってこないかとそわそわしながら待っていると、馬に乗った騎士達がディラン達のところへやってくるのが見えた。


「お待たせしましたー!」

「すまない、人を集めるのに時間がかかった」

【オ、戻っテきたカ】

「ただいま戻りましたよデランザさん!」

【顎を撫でるンじゃなイ……】


 フレイヤに気付いたデランザが声をかけると、馬から降りた彼女が顎を猫のように撫でまわしていた。


「怖くないのか……」

「少しお話した感じ、全然怖くないと思ったもの。リボンも可愛いし」

【我の威厳……】


 慣れた自分でも顎を撫でるまではしないとエメリが冷や汗をかいていた。

 当の本人はリボンがオシャレと可愛がっている。

 デランザは迷惑そうにしているものの、攻撃するような素振りはみせていない。


「フレイヤは感覚で物事を判断するが、ミスは少ないのですよ。初めましてウィズエルフのお嬢さん。私は剣術指南役のバーリオと申します」

「騎士団長が一人、ルーブです。よろしくお願いします」

「おや、知らない方ですね」

「あー?」

「わん」


 そこでバーリオと、ディラン達も見たことがない騎士団長を名乗る男がエメリに挨拶をした。

 ハッとした彼女は服を整え、咳払いをしてから握手に応じていた。


「あ、ああ、ウィズエルフのエメリだ。よろしく頼む」

「あなたがここと集落を行き来するということでよろしいか?」

「え? え、ええ、まあ……」

「こちらからは私の騎士団員が対応することになります。いずれキマイラ殿の休憩できる施設を建てる予定で、フレイヤを筆頭にそこでやり取りを行います」

「あ、は、はい」


 話がすでに決まっているらしく、ルーブが握手をしながら今後についてエメリへ語る。彼女は困惑しながらフレイヤへ目配せをしていた。


「なんか興味本位で行かせてもらったんですけど、お前がやれって言われちゃいました。なので、私がエメリとお仕事をする形ですね!」

「それでいいのかフレイヤ……」

「あ、名前で呼んでくれた! エメリー♪」

「ええい、くっつくな……!」

「本当だ、仲がいいな」

「……良くない!」


 じゃれ合う二人をよそにバーリオがデランザへと向かって歩いていた。


「ほう、これは見事な体格。若いころ、一度だけキマイラに会ったことがある。その個体はもう少し小さかった。バーリオというよろしく」

【デランザだ。我が向こうトこっチを飛ぶことニなっタ】

「デランザなら空の魔物でも余裕だろう、心強い」

【……! ふふン、そうダロウそうダロウ】


 強そうだとバーリオが笑みを浮かべるとデランザは満更でもない様子で鼻を鳴らしていた。蛇とヤギの頭もにゅっと出てきて礼をする。


「とりあえず今日のところは挨拶だけだ。騎士団、デランザに挨拶を!」

「「「ハッ!」」」

【オオ、そちラも勇ましイな】


 気を良くしたデランザはザっとそろって返事をする騎士達を見て感嘆の声をあげていた。そのまま歓談の場となり、ワイワイと和やかな雰囲気になる。

 キマイラは恐ろしい魔物だが、ドラゴンを先に見ていてその強さも目の当たりにしているため委縮する者は居なかった。

 むしろ戦った時にどう倒すべきか? そんなことを考えているくらいである。


「仲良くやれそうですね♪」

「あー♪」

「こけ」

「じゃな。なによりじゃて。それにしてもザミールはまだかのう」

「そういえば帰ってきませんね」

「うぉふ」


 町の方を見るもまだ馬車や馬が出てくる様子はない。急ぎでもないし待つかと思ったところでフレイヤが口を開く。


「では私はエメリをスイーツのお店へ連れて行きます!」

「いや、まだあの商人が戻ってきていないのに悪いだろう?」

「まあ、実際の金額とかはザミールさんが来てからになるし構わないぞ」

「いいのか……」

「では行きましょう!」

「あ、ちょ!? まだ行くと決めたわけでは……力強っ!? ああああ! 攫われるぅぅう!」


 人間ばかりのところへ行くのはさすがに躊躇したエメリだが、フレイヤに手を掴まれあっという間に引きずられていく。


「ふむ、トワイトよ。なにやら食いに行くらしい。リヒトと一緒についていったらどうじゃ?」

「そうですね。エメリさんも不安でしょうし」

「あい」

「ぴよっ!」

「ワシはここにおるからみんなで行ってこい。ダル達は大人しくするのじゃぞ」

「「「わふ」」」

「あー」

「お父さんはお留守番ね。なにか買ってきましょうか」

「あう」


 ディランがついてこないのでトワイトの顔と見比べていた。リヒトはお父さんが来ないのだと理解すると、少し不安そうな顔で手を振っていた。


「あ、トワイトさんとリヒト君も行きます?」

「ええ!」

「よ、良かった! 奥方様ぁぁぁ!」


 エメリが歓喜の声をあげ、四人とペット達は町へと入っていくのだった。

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