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第162話 竜、間に入る

「さて、今日も散歩じゃわい」

「そうですね」

「あーい♪」


 ロクローをロイヤード国へ連れて行った日はぬいぐるみが絶賛され、トワイトとリヒトはご満悦であった。

 それでも新しいものを作るのは材料がないのでその場で実演とはいかなかった。

 ローザは不満気だったが、リクエストである「ドラゴン一家」ぬいぐるみのセットを最初に貰えることになったので最後は笑顔だったりする。

 

 そして家へと帰り、少し静かになった自宅でゆっくり過ごして朝を迎えた。

 リコット達も帰ってしまったがいつも通りである。

 リヒトも一緒にいる家族がディランとトワイト、ペット達だと認識しているので後はお客さんと感じているらしい。

 今日も洗濯を終えて、散歩がてら山頂まで歩き出す。


「こけー」

「ぴよ」

「あーう?」


 そこでジェニファーとひよこ達がてくてくとついてくるのを見てリヒトが声を出す。


「あー」

「どうしたのリヒト?」

「あい」

「うぉふ?」

「リヒトも歩くのかのう」

「あー♪」


 ヤクトを指さしてなにかを訴えていたリヒトにディランが聞くと、そうらしく両手を上げて喜んだ。

 靴は履かせているのでそのままトワイトが降ろしてヤクトに掴まらせた。

 ちなみに何故ヤクトなのか? 少しだけ体格が小さいからである。乗るのはダルかルミナスが安定するが掴まり歩きなら末っ子ウルフで、リヒトはそれを分かっている。

 今回はひよこ達が歩いているので自分も歩くつもりにしたらしい。


「ぴよー♪」

「あーい♪」


 一緒に歩くことができてトコトが嬉しそうに見上げて鳴く。ディランとトワイトは微笑みながらゆっくりとリヒトに合わせて進む。

 今日のリヒトの靴は山道用に作ったディランの鱗を加工したものなので足の裏に尖った石や木の枝が貫通することはない。

 ここ最近、ディランがドラゴンに変化していたのでトワイトがいつの間にか拝借していたのだ。


「あー♪」

「わんわん♪」

「こけー♪」


 左手でヤクトを掴み、右手ででんでん太鼓を鳴らしながらペットに囲まれてゆっくり進む。


「うふふ、よちよちですね」

「まあ、急ぐ用事もないしええじゃろ。ダルはちゃんと警戒をしておるようじゃ」

「わほぉん」


 外に出ると頼りになると言われたダルは、いつも下がっている尻尾を立てて先頭へ出た。だらけるのが好きなだけでやる気がないわけではないのである。


「ぴよっ……ぴよっ……」

「あーう?」


 しばらく登っていると、ひよこ達の足が遅くなってきた。険しい山道にレイタ達はなかなかついていけないのである。

 遅れて来たひよこ達を振り返り、首を傾げていた。


「あい」

「ぴよ?」


 そこでリヒトは自分の胸にあるポケットへ入れようとヤクトから手を離してその場に座り込む。

 リヒトが近づいてきたソオンを掴んで入れようとしたが、そこで問題が起きた。


「あーう!」

「うーん、リコットちゃんぬいぐるみが入っているから無理ねえ」

「ぴよー」


 そう、リヒトのポケットにはリコットのぬいぐるみが入っているため、パンパンなのである。

 なのでソオンを入れようとしたら潰れてしまうのだ。リヒトは頑張ってみたがどうにもならない。


「うー」

「仕方ないのう。トコト達はダル達の頭に乗れば良かろう」

「あう」

「あら、嫌なの?」


 リヒトは座ったままディランがソオンを受け取ろうとしたが、隠すように手を下げる。トワイトもしゃがんで目線を合わせると、またなんとかしてソオンをポケットに入れようとしていた。


「あー……」

「ぴ、ぴょ……」


 上手くいかず、そろそろ泣きそうになってきた。そんな様子にひよこ達が心配そうに集まっていた。

 アッシュウルフ達も囲んでお座りしていると、ディランが手を伸ばす。


「では、これならどうじゃ?」

「あーい?」


 ディランはポケットからぬいぐるみを取り出してリヒトの左手に持たせ、ひよこ達をポケットへ全部入れる。


「あー♪」

「ぴよー♪」

「これならみんなリヒトが持ってるわね。それじゃ私が抱っこするわ」

「あい!」

「ではジェニファーはワシが連れて行くか。ダル達はどうする?」

「「「わふ」」」


 彼等はまだ元気だと前足を上げて返事をする。いつも登っているのでダル達はそれほど苦にならないようだった。リヒトを乗せていればまた違ったかもしれないが。

 そんな調子で山頂まで行き、洗濯物を干してから自宅へと戻った。


「あーい♪」

「少し歩いたが元気じゃわい」

「うふふ、お昼寝が早いかもしれませんね。それじゃみんなにお水を飲ませましょうか」

「うむ」


 トワイトがリヒトとペット達に水を用意する中、ディランは自分達のお茶を用意していた。


「お疲れ様、みんな」


 トワイトの声がリビングから聞こえてくる。ディランが聞き耳を立てながらお湯を沸かし、お茶を用意してリビングへと戻った。


「ぴよー」

「わほ……ぉん」

「ダルが大きなあくびをしているわよリヒト」

「あーい♪」


 ダルは家に帰ると同時にお気に入りのクッションを持ってきて寝そべっていた。

 早速あくびをするダルを見てトワイトとダルは微笑み合う。


「お茶を持って来たぞい」

「あなた、ありがとうございます」

「あーい!」

「ぴよー!」

「遊ぶのはいいけど、気を付けてねリヒト」

「こけー!」


 お茶を受け取るとリヒトはハイハイをしながらひよこ達に突撃していく。


「ふう、落ち着いたのう」

「夕方に取り込みに行きますね。それにしてもハバラやロクローさんも来て賑やかでしたねえ」

「じゃのう。まさか嫁さんをもらっておるとは思わんかった。孫も出来ていたのは本当に驚いたわい」

「うふふ、リコットちゃんも可愛かったわ」


 でんでん太鼓を振るリヒトを見て二人はそんな話をしていた。ドラゴンは出ていくと次に会う機会がなかなか来ない。

 ハバラとは直近五十年くらい会っていなかったがそれなりに驚いた。


「キマイラさんも反省していたし、平和に解決できて良かったわね」

「うむ。しかし、里はどうなることやら。まあ、まだ残っている年寄りに会いに行くのは良かろう」

「うふふ、若い人達も心配なんでしょう?」

「どうかのう」


 里はディランも作った場所なので気がかりは気がかりである。その内、一回くらいは見に行くかと胸中で考える。

 

 未来のことはさておき、ひとまずいつもの日常に戻った一家はいつも通りの仕事をこなしていくのだった。

 畑仕事に裁縫……羊毛が欲しいなと思いながら数日――


「こんにちはー!」

「ん? この声は……」

「ザミールさんですね!」

「あー♪」


 そこでザミールが訪問してくるのだった。

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