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第161話 人間、ぬいぐるみに夢中になる

「あー♪」

「ぴよー!」

「わんわん♪」

「おお、戻って来たか!」

「ただいま戻りました、陛下」


 ロイヤード国から戻って来たディラン達は再びクリニヒト王国の城へと降り立った。

 モルゲンロートやバーリオ達がまた出迎えてくれると、ヒューシが先に降りて深々と礼をした。


「ご苦労だった、ヒューシにユリ。それにディラン殿とトワイトさんも」

「あーい!」

「ははは、リヒト君もだな」

「「「わふ」」」

「「「ぴよ」」」

「こけー」

「おお……お前達もか……よくやったぞ」


 モルゲンロートが労いの言葉をそれぞれにかけていると、リヒトも太鼓を鳴らしながら声を上げていた。

 笑いながら労ってあげると、自分達もとモルゲンロートの前にペット達がずらりと並んだ。

 モルゲンロートが苦笑しながら声をかけると、満足したのかリヒトを抱っこしているトワイトの足元へ戻って行った。


「ロクロー殿は無事ロイヤード国で暮らすことになったかな?」

「うむ。助かったわい、モルゲンロート殿のおかげじゃ」

「こちらもメリットが無いわけではないので構わない。後はロクロー殿がひと月以上暮らした上で近隣諸国へ状況を教える感じになると思う」

「それで他のドラゴンが住めるようになったら嬉しいわね」


 ロクローというテストケースを皮切りに、他のドラゴンが移住できると助かるとトワイトがリヒトの髪を撫でながら口を開く。

 そこでユリが唇に指を当ててディラン達へ尋ねた。


「結局何人くらいいるんですか? 里って大きい?」

「お年寄りだけなら二百人くらいかしら? 里全体だと若いドラゴン合わせて五、六百とか?」

「もうちょいおるかも。まあ、なんにせよそれなりにでかいわい。正直、里以外にもドラゴンは居るしのう」

「ドラゴンが六百もいたら人間なんてひとたまりもありませんな……」

「いやあ、聞かなきゃよかった」


 数を聞いてバーリオが冷や汗を流し、ユリが頭を掻きながら困り笑いをしていた。


「ドラゴン同士も人間と同じで争いを好む者もおる。正直、ワシやロクロー、それとワシらの知り合いのドラゴンを見かけたら声をかけてもらいたいくらいじゃ」

「……肝に銘じておきます。ディラン殿達を見ていたらそういう者は居なさそうに感じるが……」

「これが居るんですよ。でも私達と同じで滅多に姿を現さないで洞窟の奥とかに住んでいますし、早々出くわさないと思います♪」

「あい」

「わん」

「ですな。私もこれまで生きてきて、ドラゴンはディラン殿を初めて見たくらいなので。里に居るから出てこないからでしょうか」


 モルゲンロートは腕組みをしながら頷く。

 里に集まっているおかげだろうかと彼が口にすると、ディランはそれに返す。


「その部分もあるのう。ワシらが里を作った時は穏やかなドラゴン同士で暮らすかと決め、それから人間に追われたり、別種族や別ドラゴンに襲われた者を助けるために招き入れて大きくなったんじゃ」

「へえ……興味深いですね。一度行ってみたい気がします」


 ディランの言葉にヒューシが顎に手を当てて言う。するとディランは手を振っていた。


「今は若いもんが調子に乗っておるからダメじゃな。まあ、どこか大きな山か島があれば、そこにもう一度、年寄りを集めて里を作るのも悪くないが」

「島か……なるほど」

「まあ、里のことはええわい。ひとまず先のことを話しておくか。ザミールが帰ってきたらワシのところへ来るように伝えてくれるか?」

「む、例の木材の件ですかな?」

「そうじゃ。数本、キマイラのデランザと一緒に戻ってくるわい」

「キマイラ……わかりました。ヒューシとユリもザミールのことは気にかけておいてくれ」

「「わかりました!」」


 ひとまず解散かと思われたその時、モルゲンロート達へ声をかけて来る者が居た。


「あなた! トワイトさん達が来ているのにわたくしを呼ばないのはどういうことですか!」

「お、おお、ローザか。いや、仕事のことなのでな」

「まったく。ヴァールはそういうところが似ましたわね。水面下でなにかをするのは悪い癖ですわよ?」

「いや、まあ、うん……」


 返す言葉がなく、歯切れの悪い返事をしているモルゲンロートを見て、トワイトがローザへ声をかけた。


「お久しぶりですローザ様♪」

「あーい!」

「ごきげんようトワイトさんにリヒト君♪ 今日も元気ね」

「あーい♪」


 リヒトがポコポコと太鼓を鳴らしながら挨拶をするとローザの顔が綻んでいた。

 さらにヒューシとユリに視線を合わせる。


「あなた達もお疲れさまでしたね……あら、ユリさん? その手に持っているものはなんですの?」

「あ、王妃様! これ、可愛いですよね! ダルです!」

「……!」

「わ、わほぉん……」

「あら、照れているのかしら?」

「あー♪」

「リヒト、ダルを撫でる?」


 ユリの持っているぬいぐるみに気づいたローザ。そこでじゃーんとダルのぬいぐるみを高く掲げた。

 するとローザがハッとなり、ダルが変な声を出しながらディランの後ろに隠れる。

 リヒトがそれを見てトワイトへダルの背へ乗せるように手足を動かしていた。


「あーい♪」

「わほぉん……」

「わん」

「うぉふ」


 リヒトが背中に乗ると、頭を優しく撫でて笑う。ルミナスとヤクトも集まってきて頭を擦り付けていた。

 そんな中、停止していたローザがユリに駆け寄っていく。


「お、王妃様……?」

「可愛いですわ~♪ ダルちゃんのぬいぐるみですわね! 特徴を捉えていますわ。どうしたのですかこれ?」

「私が作ったんです」

「まあ、相変わらず手先が器用な……」

「うふふ、実は――」


 ローザはまだ見ていないリコットのことを話し、リヒトぬいぐるみを作ったことを告げた。ついでにペット達も作ったところ好評であることをユリが口にした。


「それはそうよ、こんなに可愛いもの! 他にはないのかしら?」

「ひよこ達はカーラさんのおみやげに……」

「ヤクトはギルファが持って行ったのう」

「ルミナスはリーナのおみやげに……」

「ああ……」

「ご、ごめんなさい……」


 ワクワクしていたローザはすでに誰かの手にいきわたっているのを聞いてがっくりと肩を落とす。その落胆ぶりはユリが咄嗟に謝るほどであった。


「羊毛と色のついた布があればまた作れますから、持ってきますよ」

「……! そうなのね! バーリオ、トワイトさんに羊毛と布を! お金はわたくしが出します!」

「はっ!」

「早まるなローザよ……売る予定などはあるのかな? これはよくできていると私も思うよ」


 トワイトがまた作ると話したところ、すぐにローザが復活して材料の手配をしていた。モルゲンロートが苦笑しながら販売予定はあるのかと聞いてきた。

 思いのほかダルぬいぐるみが良かったらしい。


「確かに可愛いねー」


 訓練場なので騎士達もおり、女性騎士がにこやかにこちらを見ていた。


「販売した方がいいとユリちゃんが言うから少しだけ出してみようと思います」

「リヒト君とリコットちゃんもいいですけど、ディランさんとかのは作らないの?」

「ワシのはいらんじゃろ」

「そうですか? ドラゴンの姿ならいいんじゃないかと?」

「あ、いいわねヒューシ君♪ 他にはなにかあるかしら?」

「「わふ!」」

「え?」


 ドラゴンのぬいぐるみも悪くないとトワイトがヒューシに同意する。他にもいけそうなぬいぐるみが無いか考えていると、ルミナスとヤクトがなにかを思いついたように鳴き、リヒトをダルから降ろす。


「あうー?」

「わん」

「抱っこするぞい」


 リヒトが良く分からないと首を傾げていると、ルミナスとヤクトがまたダルの上に乗っかった。


「あ、可愛いやつだ!」

「おお、これはアリかもしれんな。ダルベロスじゃな」

「ダルベロス! いいですわ!」

「わほぉん……」


 そんな調子でローザが加わったことにより話が大幅に逸れてしまう。

 しかし、ぬいぐるみを制作したら売れるという保証を貰ったような気がしていた。

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