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第150話 人間、やっぱりキャパオーバーだった

「材木とはまた珍しいですな。山の木ですか?」

「いや、ここから遠い北西の方にあるウィズエルフ達が住む山の木じゃ。ネクターリンの木というものでな」

「「「ネクターリンの木!?」」」

「お、知っておるのか?」


 ディランが木材の正体を説明すると、その場に居た者達が目を見開いて驚く。

 知っているなら話が早いとそのまま話を続ける。


「息子の嫁を治すためにネクターリンの実を取りに行ったのじゃ。それでドラゴン姿の許可を貰った」

「え、ええ」

「そしたら木が枯れていて、その残った材木だけが残っているんです」

「勿体ないからウィズエルフ達に物々交換でどうかと思ってのう」


 ディランに補足してヒューシが説明をし、最後にウィズエルフ達のためにと話す。

 するとモルゲンロートが腕組みをして非常に難しい顔で考え込んでいた。


「確かにいきなり木材を買い取ってくれと言われても困るじゃろうな」


 そこでロクローが口をへの字にして納得していると、バーリオが真面目な顔でそれに対して回答をする。


「いえ、ロクロー殿。買い取れと言っているわけではないため悩むことは無いのですよ。ただ、ネクターリンの木となると話が違う」

「そうなのですか?」

「ああ。先の話だと枯れていたそうだが、そもそもそこらに生えている木じゃない。人間の世界だと若干、宝物扱いなのだ。お前達だって聞いたことは無かっただろ?」

「確かに初耳だったな」


 バーリオがネクターリンの木は所在不明で話だけが広まっているのだとに告げる。

 もちろんガルフ達は知らなかったが、それは自分達が知らないだけかと思っていたらしい。


『高い山とか特殊な環境に生えるってディランお父さんの家に移した木は言っていたわね』

「移し替え!? ディ、ディラン殿の家にネクターリンの木があるんですか!?」

「ん? ああ、完全に枯れ切って今は芽が出ているだけじゃがな。アレは無理をして実をつけてもらった」

「相変わらず突拍子もないことになりますね……」


 今しがた宝物扱いしていた木が庭にあると言われてバーリオが眉間に指を置いて唸っていた。そこでリヒトを抱っこしたトワイトがソレイユの肩に手を置いて前に出す。


「だからソレイユさんが回復したんですよ♪」

「初めまして。お義父様の変身を許可してくれたおかげでこうして歩けております」

「きゃーい!」

「あうー!」

「これはどうもご丁寧にありがとうございます……というかエルフじゃないですか……」

「そうですね。エルフは珍しいですか?」

「この国ではそうですなあ……」


 色々と諦めた感じで苦笑するバーリオが肩を竦めると、その瞬間にモルゲンロートがカッと目を見開いてから口を開いた。


「これは私一人で決めるのは難しい! 一度、会議にかけて皆の意見を聞いてみるとする。すまないがディラン殿、即決はできない」

「人間の世界で重要な木材なら仕方あるまい。申し訳ないが、ロクローのこととネクターリンの木材のことよろしく頼むわい」

「承知した」

「ひとまずロクローはウチにいていいかのう?」


 即断即決は出来かねるとモルゲンロートが判断した。ネクターリンの木といえば知っている者からすると喉から手が出るほど欲しいと言うはずだと。

 それと思っていることができたため、ロクローの件と合わせて意見を募るとのこと。

 ひとまずロクローの件を問うてみると、モルゲンロートは頷いていた。


「ロクロー殿、ハバラ殿一家はキリマール山で待機してもらって構わない。数日の内に返答をしよう」

「承知したぞい。度々すまないが、ザミールにも声をかけてもらえるかのう」

「ザミールを?」

「交渉する人間が欲しいのじゃよ。ガルフ達はたまたま立ち会っているが冒険者じゃからそういうのはしないらしい」

「なるほど」

「ザミールさんはこっちでも探しておきますね。お店にいるかもしれないし」


 ディランはザミールにも声をかけておいてくれとモルゲンロートに頼む。

 彼は首を傾げたが、理由を聞いて納得していた。レイカ達もザミールを探しておくと口にするとユリが微笑みながら話す。


「キマイラのデランザとはまた会いたいかなあ。連れて行ってもらおうよ」

「は? キマイラ?」

「あ、ああ、その話はまた……ザミールさんに話しておきます」

「……」


 ユリの発言にバーリオが眉を顰めると、ヒューシが慌てて遮った。モルゲンロートは嫌な予感を感じて冷や汗をかいていた。


「それじゃ俺達は屋敷に戻るよ」

「あ、そうね。陛下、ここから戻ってもよろしいでしょうか?」

「もちろん構わない……が、少し話がしたい。残ってくれるだろうか」

「あ、はい……」

『まだ帰れないかな? ハリヤーが待っているよ?』

「……すまないリーナ。もう少し頼むよ。おやつは用意する」

『はい!』


 おやつにつられたリーナを苦笑しながらガルフ達は残ることにした。

 そこでトーニャもガルフ達の方へ並んでからディラン達へ声をかける。


「あたしもこっちね。まあ、話はしておくからパパ達はゆっくり休んでよ。ロクローおじさんもまたね」

「またじゃな。ちょっとディラン達のところで世話になるわい」

「あーう!」

「はいはい、リヒトもまたね♪」

「「「わふ」」」

「ぴよー!」


 トーニャが残るのでリヒトやペット達が挨拶をしていた。トーニャとユリがひとしきり構ったところでディランがドラゴンへと変化する。


「ではワシらは山へ帰るぞい。モルゲンロート殿、決まったら教えてくれ」

「ああ。また会おう」


 それだけ言ってからディランは音もなく上昇した。眼下では騎士達が手を振っており、トワイトやリヒト、真似をするリコットが手を振っていた。


「いい方たちですね」

「そうなんです。私達の我儘を聞いてくれるから助かっているの」

「まあそれでもロクローさんが住むならドラゴンが四人は多いから俺達はさすがに遠慮しておかないとなあ」

「そうですね」

「うー?」

「問題はこっちかあ」

「あーい?」


 リヒトの袖から手を離さないリコットを見てハバラは後ろ頭を搔いていた。


「まあ、その辺りも考えましょう」


 ソレイユがそう言い、そのままキリマール山へ戻ると自宅の遊戯室へと移動した。

 見事な遊び部屋に、ダル達やひよこ達、ジェニファーがぞろぞろと散っていく。

 袖を掴んだままなので、トワイトとリヒト、ソレイユとリコットは近くに座る。


「わほぉん……」

「ふふ、あの子はずっと眠そうね? ねえリコット」

「きゃーう!」


 ダルを見て嬉しそうに笑うリコット。相変わらずあくびをするダルはそのまま座布団の上で寝転んだ。


「あーう♪」

「ぴーよ♪」

「うぉふ」

「ほう、歩けるのじゃな」

「掴まり歩きが出来るんですよ」


 そこでリヒトがダルに構うため、リコットの手を振り切ってヤクトに掴まってひよこと一緒にとてとてと歩き出した。

 ロクローが称賛を口にして笑い、トワイトも誇らしげに返した。


「ふぐ……ああああああん……!」

「あらあら」

「あーう?」


 しかし、まだまだ立つことも寝返りをうつこともできないリコットがリヒトに置いて行かれてまた泣き出してしまった。姿が見えているため声量は小さかった。

 

「どうしようかのう」

「おうちに帰るにしてもリヒトを連れていくわけにはいかないですしね。あ、そうだ」

「なにか案があるのかい母さん?」

「ちょっと時間がかかるけど、もしかしたら上手くいくかもしれないわ♪」


 トワイトはそういってウインクをしていた。

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