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第148話 竜、移住を決める

「ひとまず解決ってことでいいかしら?」

「そうじゃな。みなご苦労じゃったわい」

「いいってことよ! 新しいドラゴンも見れたし、キマイラを見て無事に帰れるなんて普通無いからな」


 ディランとロクローが即興でテーブルと椅子を作成し、庭の広いところに設置。

 みんなでテーブルを囲んで晩御飯となった。

 すっかり陽も暮れてしまったが、ヒューシの灯り魔法のライトとランタン、松明で明るさに不便はない。

 米と味噌汁、そしてバーベキューで肉と魚、野菜でパーティと相成った。


「大丈夫かしらね?」

「暴れないって言ってたし、大丈夫じゃない? あいつらより全然いいと思うよ」

「そうだな。あいつら、キマイラなら倒せるんだろうか……?」

『はい、お肉焼けたよー』


 レイカはまだキマイラのデランザがきちんとしているかは不安なようだ。ユリは顎を撫でたからか、楽観的に返してリーナの持ってきたお肉をほおばっていた。

 ウェリス達は実際どれくらい強かったのか? ヒューシはそれが気になっていた。

 とはいえ、今は王都で大人しく暮らしているため知る由もない。


「久しぶりに里の酒を飲んだな。美味い」

「お城では飲んでましたけど、リヒトが居るから自宅だと飲まないんですよね」

「竜の里……気になる」

「わほぉん」


 そしてディランとロクローは持ってきた酒を酌み交わしていた。竜の里で造られたお酒は持ってこなかったので久しぶりだと息を吐く。


「わしが仕込んだやつよ。ただ、お前んとこの米が無いと美味いのが作れんから、今は作ってないがな」

「おお、アースドラゴンなのにお酒をつくるんだ?」

「おうさ。水はアクアドラゴンからもらうんじゃ。それとこの酒は米から作っておるが、その米を育てる土も重要でな。そこでわしの出番という訳じゃ!」

「へえ、面白いな。正直、ディランのおっちゃん達を見るまでドラゴンって大雑把な生き物だと思っていたけど、手先とか器用だよな。カーッ、喉が焼けそうだぜ、こいつは……!」

「いっぺんに飲んではいかんぞ。少しずつ飲むのが良い」


 ガルフが素直に感嘆して竜の里仕込みの酒を飲み、その辛さに顔をしかめる。それでも次のひと口が止められない様子だ。


「あー……」

「うー……」

「こっちはおねむみたいね」

「そうですねお義母さん。リヒト君も可愛いです」


 お母さん達は赤ちゃんの抱っこをしていたが、リヒトもリコットも昼間興奮しすぎたせいかもう目を閉じていた。

 

「さて、と。ハバラの事情は把握しておるが、ロクロー。お主の状況を聞かせてもらうぞ? 竜の里から出てきてどうしたのじゃ」

「ぷはあ……おお、そうだな! まあ、聞いてくれや」


 ロクローはコップのお酒を飲みほした後、ディランが出て行った後の様子を話し始める。

 基本は数日おきに年寄りと思われる年齢まで生きたドラゴンの家に行き、里から出るよう勧告していた。

 しかし、ディランのように素直に出て行く者は少なく、数十人が出て行っただけとのこと。


「そしたらあやつら、実力行使とか言いおってな。力づくで追い出しにかかってきたのじゃ」

「酷いね!」

「そこまでする必要があるのでしょうか?」


 ロクローは酒瓶を手に大声で叫ぶ。おおむねディランが追い出された時と同じだが実力行使に出たということでユリとヒューシが憤慨していた。


「里は広くはないが、正直狭くもない。年々亡くなるお年寄りも居るから数はそれほど変わらないはずなの」

「若者だけの里、か」

「上手くいくとは思うがな。子供だけというわけではないしのう。ワシらは子供二人がもう里を出ておったし、まあええかなと」

「軽い……」

「おかげでこうして楽しんでいられますから♪ リヒトも死なずにすみましたしね」


 立ち行かなくなるということは無いはずだとディランが告げる。年寄りを敬わないということに関してはそれぞれだと思うと話していた。

 トワイトはリヒトを抱きしめながら、外に出て良かったと笑う。


「そういやずっと気になっていたんだけど、どうしてドラゴンは里に集まって暮らしていたんだ? 別に今みたいな生活ができたんだろ? 現にハバラさんはエルフの居た森に住んでいたみたいだし」

「それは……まあ、色々じゃ。好きに生きるのは自由じゃが、ワシは人の姿になるなら集落を作ってもいいと考えたからかのう。それはそれとして山に住んでいるドラゴンは数多い。孤島なんぞにいるのもおるしのう」

「ふーん」


 ディランはガルフの質問に、少し考えてからそう答えた。ガルフはなんとなく相槌をうち、レイカやヒューシ、ユリもそうなんだといった感じで納得する。


「ま、ワシらのことより今はハバラか。お主達はどうするのじゃ?」

「ああ、元の家があるからそっちへ戻るよ。この場所は分かったからいつでも来れるし」

「そうか。一度、お主の家にも行っておくかのう」

「お義父様、ぜひお越しください」

「リコットは孫じゃから顔を見にな」


 ハバラは自宅があるから帰ると言う。ディランは止めることなく、リコットの顔を見て微笑んでいた。


「ロクローは?」

「わしは様子見に来ただけじゃが……こういう生活もいいのう。若い連中はうるさいし、国王とやらに頼んでくれんか?」

「まさか移住する気か?」

「おう」

「……うーむ、モルゲンロート殿は首を横に振らんとは思うが……明日、聞きに行ってみるか。どうせネクターリンの木の件も話さねばならんし」

「それじゃ明日は兄ちゃん達を見送って、みんなで王都ね。あーあ、あたしもおばさんかあ」


 トーニャがリコットの頬を撫でながら口を尖らせると、レイカが笑って肩を叩いた。


「ま、それは仕方ないわよ。トーニャも恋人を見つけないとね?」

「ドラゴンは寿命が長いからなあ」

「……」

「わん!」

「うぉふ!」

「はいはい、あんた達もいつか、つがいを見つけるのね?」


 寄り添ってきたルミナスとヤクトに、頼もしいとトーニャが撫でまわしていた。

 そんな調子でドラゴン二人のことが決まった。

 ロクローに関しては聞くだけ聞いてくれという話なので、特に断られてもダメージが無さそうだった。

 基本的に断りを入れる必要はないので、適当な山に住んでもいいのだがそこはディランの顔を立てた形だ。


 そしてガルフやロクロー達は宿に泊まり、翌日となったのだが――


「あーう!」

「うーい?」

「リコット、お家へ帰るからリヒト君にバイバイしましょうね」


 ソレイユはすっかり元気になり、家へ帰ることになった。

 お世話になりましたと丁寧にあいさつをした後、トワイトが抱っこしているリヒトに、ソレイユがリコットの手を取ってバイバイと手を振らせていた。

 リヒトは慣れたもので、自分からバイバイと手を振る。リコットはよく分からないためリヒトを見ながらされるがままだった。


「それじゃまた来るよ」

「あまり姿を見られんようにな」

「ああ」


 そういってハバラがドラゴンに変化してソレイユを背に乗せる。そして徐々に浮き始める。


「うー!? ああああああああああ! うああああああああああああん!」

「きゃあ!?」

「うわ!?」


 ――そこで遠ざかるリヒトを見て、リコットが大号泣をするのだった。

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