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第139話 竜、思い出す

「伝説の竜神!?」

『おー、やっぱりディランお父さんは凄いドラゴンだったんだ!』

「神様ってこと?」

「神々しい、という言葉もある。ディランさんは金ぴかだし、有り得るかもしれない」

「いや、全然違うぞい。ワシは普通のドラゴンじゃ」で、お主達は何者じゃ?」

「アークドラゴンは普通じゃないよ父さん……」

「あ、ハバラさんおかえり」


 ガルフ達が驚いたり色めきだったりと興奮の渦に巻き込まれる中、ディランは手を振って違うと返す。

 そしていつの間にやら戻って来たハバラが気になることを口にするが、褐色の耳長女性が口を開く。

 

「申し遅れました……!! 私はエメリ。あなた様が過去に救ってくれたウィズエルフの子孫です!」

「ふむ……」

「あ、この顔は覚えていない顔だぜ」

「ガルフ、ちょっと黙ってなさい」


 レイカに窘められまたしょんぼりするが、実際ディランは彼等を見ても唸るばかりで覚えていないようだ。


「な、なんと……」

「すまんのう。いつぐらいに何をしたか教えて貰えんか?」

「……! もちろんです! 私が聞き及んでいるのはおよそ五百年ほど前のことで文献にも残っているお話で竜神様が我々を脅かしていた魔獣『ギードレス』を倒してくださったのです。かの魔獣はとても賢くて強く、ウィズエルフ総出でも勝つことが難しいとされていたそうです。もうダメかと思われたその時! 金色のドラゴン! いや竜神様が降臨! ネクターリンを一つだけ所望し憎きギードレスとの戦いをしてくれたんですねこれが! そして数時間の激闘の末、見事に退治してくれたのです! 私のおばあちゃんがその時の目撃者なのですがそれはもう――」

「待て待て!? 長い長い!」

「え? ここからがいいところなのに?」


 熱弁をするエメリをヒューシが止めた。彼女は拳を握ってキョトンとした顔で、今からが本番だと語る。


「倒し後になにをしたのよ……まあ、ディランさんが凄いのはわかったけど」

「ふん、所詮人間にはわからんか」

『わたしは精霊だけど?』

「なんとぉ!?」

「オーバーだなあ」


 ガルフが頬をかきながら苦笑をしていた。

 すると、とりあえず話を聞いて考えていたディランがポンと手を打って口を開く。


「おー、思い出したぞい。キマイラの亜種で頭のいいやつじゃったな」

「げっキマイラかよ!? 俺達じゃ絶対に勝てない相手だぞ」

「確かにキマイラは強いからのう。ギードレスはさらに面白い個体で、本来ついていない翼を持っておったからまあまあ人間達には荷が重い相手じゃったな。でかかったし」

「それを竜神様が倒してくれたのだ!」


 ディランが当時のことを思い出し、ギードレスというキマイラのことを話していた。特殊個体ということで強力ではあったが、負けない相手だったとのこと。


「そういえばあの時はトーニャが産まれた時に栄養のあるものを探しに出かけた時じゃったか」

「あ、もしかしてトーニャが生まれた時に数日帰ってこなかったのは……」

「うむ。そのための旅をしておったからじゃ。かなり数を減らしておったと思うが元気そうでなによりじゃわい」

「ふふ、ディランさんらしいわね」


 さらにどうしてここに来たのかを思い出してフッと笑う。ハバラは妹の誕生の際に家で二人を守るように言われたなと語った。

 そこでエメリが膝をついたまま話を続ける。


「それで今回はどうなされたのでしょうか? ……ネクターリンの実を採りに来られたのでしたら……残念ですがこの通りでして」

「そのようじゃな。一体なにがあったのじゃ?」

「それが我々にもよく分からず……竜神様が好きだとされている実を守って行こうというのがウィズエルフの教えなのですが、ある日突然このようなことに。うう……責任をもってこの首を……!!」

『きゃあ!?』

「そんなことはせんでいい。しかし、これ程の規模で枯れるとなると原因は掴んでおいた方がいいかもしれんのう」

 

 剣を首に当てようとしたエメリにサッと近づき止めるディラン。実は手に入らなかったが、このままにもしておけないと提案をした。


「なんと、再び竜神様がお手伝いをしてくれると……! このエメリ、どこまでもついていきます……!」

「暑苦しいやつだなあ……」

「なんだと人間!」

「よさんか」


 とりあえずガルフとエメリの頭に手を置いてポンポンとした後、話を元に戻す。


「いつ頃からじゃ?」

「だいたい三十年ほど前からですな。最初は栄養が足りないのかと思い色々と肥料を変えてみたりしたのですが効果が無く、先日最後の一本もすっかり枯れてしまいました」


 そこでエメリとは違うウィズエルフが顔を上げて口を開く。三十年という年月を聞いてヒューシが驚きの声を上げた。


「三十年!? やはりエルフの感覚は長いですね。我々人間だと三年くらいで慌てると思います……」

「まあ人間と我等の寿命は違いますからな。竜神様、精霊様。立ち話もなんですし、人間とご一緒に集落へ来ませんか?」

「ふむ。ありがたいが、まずは原因を探りたい。この辺りを調査して良いかのう」

「もちろんです! 私もお供します! そこの人間達よりきっと役に立ちますよ!」

「分かりやすい」

『ダメだよ、ガルフ達は友達なんだから!』

「ハッ! 失礼いたしました精霊様!」

「ホント、分かりやすいわね」


 ひとまずエメリがついてくることになり、他のウィズエルフは一旦帰ることにした。ディラン達はそれを見送った後、山を歩き出す。


「しかし父さん。どうやって原因を突き止めるんだい? ソレイユも心配だし後でも……」

「ソレイユはトワイトが診ておるから大丈夫じゃ。顔見知り……じゃない、種族見知りをした相手を助けんのもむず痒いわ」

「わかるわ。でもどこをどうするのか見当もつかないわね……」


 ハバラの焦りを理解しつつ、ディランは無視も出来ないと口にする。そしてトワイトが居れば大丈夫とのろけつつ、続ける。


「一本、掘り起こして根を見てみるか。土が腐っている可能性もあるからそこら一帯を掘るのもありじゃな」

「肥料は与えていると思うのですが……」

「与えすぎも良くないがの。まあ、お主らがそんなミスをするとも思えんし、やはり確認じゃて」

「ハッ!」

「ネクターリンの木か……興味あるな」


 そしてディランはドラゴンの姿になり、作業をすることにした。ヒューシやガルフ達も手伝うとやる気になっていた。


 そんな状況の中――


「……グォォォン!」


 ――どこかで魔物が唸り声を上げていた。


 ――さらに


「……ここ……どこ!?」


 ――アースドラゴンのロクローがハバラの痕跡を見失っていた。

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