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第129話 竜、リヒトに靴を作る

「やはり山の空気はいいのう」

「うぉふ!」

「わん!」


 自宅に帰って一晩が過ぎた。

 人間達に囲まれて疲れていたディランはお風呂に入った後、遊戯室でリヒトの面倒を見ていたがいつの間にか寝てしまっていた。

 気づけばリヒトやペット達も集まってくっついて寝ており、妙に暖かい状況で目を覚ます。

 トワイトはリヒトが寝るまで起きていたようで、危ないことにはならなかった。

 そんな彼はヤクトとルミナスをお供に家の外に出ていた。

 深呼吸をして二頭が並んでディランに同意する。可愛がられたが、やはり知らない人間に構われるのは疲れるようである。


「わほぉん……!?」

「あーう!」

「ん? なんじゃ?」


 そんな気持ちのいい朝に家の中に引きこもっていたダルの焦った声が聞こえて来た。

 次いでリヒトの声も聞こえてきたのでディランが振り返ると、アッシュウルフ達が使っている専用の扉からリヒトが顔を覗かせているのが見えた。

 どうやらハイハイでそこから抜け出そうとしたようで、ダルが前足を使って外に出ないよう抑えていた。


「リヒトはよく動くのう。トーニャもそうじゃったかな? ハバラは大人しい子じゃったが」

「あー♪」

「わほぉん……」


 出口から頭を出しているリヒトを引っ張り出して抱っこをする。

 リヒトは動かないダルに抱き着いていたのでそのままにしていたのだが、どうもディランが出た際に追いかけてきたらしい。

 アッシュウルフ達が出入りするパタパタ扉は簡単に通り抜けられてしまう。


「わほぉん……」

「わん」

「うぉふ」


 結局、外に出ることになったダルの両脇に二頭が来て、顔に肉球を押し付けていた。そこでリヒトの姿を見失ったジェニファーやひよこ達も庭に出て来た。


「こけー」

「ぴよぴー」

「あーう♪」


 出て来たひよこ達を見て喜ぶリヒト。手を伸ばすが、落ちそうになるためディランは後ろを向かせる形に抱き直した。


「うー」

「ほれ、振り返ればええじゃろ。とりあえず飯にするか」

「わほぉん♪」


 ひとまず家の中へ戻り、リヒトにミルクを飲ませてからペット達にもごはんを出す。


「あー」

「「「がふがふ……」」」

「こけこけ」

「「「ぴよぴよ……」」」


 食べ終わるのを待った後、リヒトを連れてディランとトワイトも食事にする。


「まあ、リヒトが自分から外に?」

「うむ。よく動くわい。ハイハイはかなり出来るからのう。で、つかまり立ちも良くしておるしそろそろ靴を作ってやりたいわい」

「あ、そうですね。都に行っていて作る暇がありませんでしたものね」

「あーう?」

「リヒト、お主も外を歩けるようにするのじゃ。と言ってもわからんじゃろうが」

「あい」


 ディランが手を止めてリヒトを見てそういうがもちろんわかってはいないのでなんとなく相槌を打つだけであった。


「あーい」

「うぉふ」

「え?」


 そこでリヒトが座っていることに飽きたのか手を叩いて大きな声を出した。するとヤクトがやって来てリヒトの座る椅子の近くへやってくる。


「あーう」

「あらあら」

「うぉふ!」

「きゃー♪」


 そしてリヒトはヤクトの背に乗ると背中を軽く叩き、そのままリビングへと行ってしまった。


「……乗りこなしておるのう」

「うふふ、あの子、テイマーとかいうのになるのかしら? まだ一歳にもなっていないのに」

「意外と大物になるのかもしれん」


 一応、リビングを見に行くとひよこやルミナスたちと遊んでいるのが見えたのでとりあえず食事に戻る。


「楽しみですね♪」

「あまり早く大きくなるのも寂しいけどのう」


 そんな話をしながら食事を終え、夫婦はリヒトの靴を作るため彼の下へと向かった。


「すー……」

「わほぉん……」


 しかしそこにはあくびをするダルと寝転んでルミナスとヤクトの毛を掴んで寝ているリヒトの姿があった。ダルは枕にされており、動けないようだ。


「寝ちゃったのね。最近、みんなに囲まれていたからダル達と一緒でまだ疲れているのかもしれないわ」

「まあ、寝ていても採寸はできるじゃろ。ワシが抱っこするからサッと作ってやってくれ」


 ディランがそう言って手を伸ばすと、ルミナスがその手を両前足で掴んだ。起こすなと言いたいらしい。


「そっと抱っこするから大丈夫じゃて」

「わふ」

「それじゃ手を開かせるわね」


 ディランの手を掴んでいるルミナスに微笑みながら、トワイトがリヒトの手を開いていく。

 起きる気配は無く、ディランがそのまま抱っこしてソファに座る。


「すぴー……」

「ぴよ?」

「おや、ポケットに入っておったのか」

「ぴよー♪」


 身体が揺れたので、ひよこ達が何事かとポケットから顔を覗かせた。ディランと目が合うと、嬉しそうに這い出て彼の肩によじ登った。


「うむ。寝なくて良いのか」

「ぴよ」

「うふふ、あなたに遊んで欲しいのかしら」


 トワイトは笑いながらリヒトの足を測る。彼女の手のひらにも満たない小さな足がぴこぴこ動いていた。

 

「うー……」

「ごめんね。あなた、もういいですよ」

「よしよし」


 足がむずむずしたのかリヒトがむずかったので手早く終わらせた。そのままダルの背中を枕にして寝かせると残り二頭も頭を床につけてのんびりし始める。


「さて、それじゃワシは畑の様子を見に行くかのう」

「私はリヒトの様子を見ながら靴を編んでおきますね。靴底は厚い皮を使いますけど、いいですか?」

「もちろんじゃ。倉庫に適当な素材があったじゃろ? リーフドラゴンのフラウの皮でええんじゃないか?」

「ああ、そうですね。昔、なんとなく脱皮した皮をくれましたねえ」


 人間の姿が多いものの、一定周期で脱皮をするらしいドラゴン。

 その中でたまに話題になるフラウが自慢げに見せて来たのをもらったようである。


「捨てても良かったんじゃがな」

「まあまあ、役に立つから良かったじゃありませんか」


 そうして二人はそれぞれの仕事に行き――


「戻ったぞい」

「おかえりなさい。ちょうどできたところですよ」

「おお、ええじゃないか」

「大きくなるから少しぶかぶかですけどね。でもケガはしないと思います♪」

「ドラゴンの皮は相当な力任せか、特殊な魔法剣とかでようやくじゃからな」

「あーい♪」


 いつの間にか起きていた、薄緑の小さな靴を履いてご満悦なリヒトがダルを掴んで立っていた。


「少し歩いてみるか」

「お天気もいいですしね」

「あーう!」

「わほぉん……」


 そのままダルに掴まったまま、一家は畑まで歩いて行く。途中でこけそうになったが、リヒトは終始笑顔だった。

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