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第108話 竜、商品と情報を得る

「いやあ、まさかこの村で会うとは」

「本当ですね。モルゲンロートさんからまた東の国の食材探しに出ていたのでは?」

「もう終わったのかのう」


 村の入口でザミールと出会ってから少し後、ディラン達一家は宴に招待され料理を囲んでいた。

 そこには村長のタモとラール、そしてザミールが同席して会話を続けていた。

 他にもザミールと一緒に旅に出ていた商人が居り、彼等も参加する。

 

「ははは! 流石に二回目なので私も慣れたものですよ! その帰り道に少し休ませてもらおうと立ち寄ったところですね」

「そうじゃったか」

「陛下の頼みなら行かないわけにもいきませんからねえ」


 お酒を飲み、頭を掻きながら笑うザミール。ディランが感心していると他の商人が苦笑しながらそう返す。するとそこで村長のタモが口を開く。


「ザミールさんはこの村にもよく来てくださってますからね。町までそう遠くはありませんが、町では手に入らないものを売ってくれたりするので楽しみにしている村人は多いですな」

「それがあるからモルゲンロートさんもザミールさんに頼むんでしょうね」

「あーう♪」

「ありがたいことです。しかし、最近は無茶なことも多くなってきましたけどね!」


 そう言ってザミールが笑う。

 そこへディランが今回の旅について成果を尋ねていた。


「それで食材なんかは手に入ったのかのう」

「ええ、それはなんとか。ただ、コンニャクだけは無理でした。本当に需要が無いみたいで、数度仕入れたことがあるそうですが売れなかったと」

「扱いが難しい食べ物ですものね」

 

 醤油と味噌を追加し、みりん、油揚げを購入して来たという。コンニャクだけは手に入らず、それ以外にも東の国っぽいものを買って来たと商人たちは口にする。


「酒も透明な珍しいのを数本ほど手に入れましたね」

「ほう米酒じゃな」

「やはりご存じですか。ディランさん達の話はザミール様から聞いております。東の国ご出身とか」

「まあ、近い感じじゃな。他にはなにかあるのかのう?」

「そうですね――」


 他にはうどん・そばと呼ばれる粉、魚の乾いた身、凍らせた触手のある生き物などがあると言う。


「あら、色々買ってこられましたね!」

「とはいえ使い方が全く分からないので、かき集めたという感じですね。触手のある生き物は食べられるらしいですが……」

「うふふ、向こうの人達はなんでも食べますからね。でもカツオブシは出汁になるし、イカは煮物にすると美味しいですよ」

「ええー……?」


 トワイトは聞いただけでなにに使うかすぐに分かったようだ。イカは凍らせているため鮮度は落ちていないはずだと商人は言う。

 

「あまり時間が経つと臭いが出てしまうから持っていくなら早くした方がいいかもしれないわね」

「そうなのですか? ……今、食べてしまいましょうか」

「ザミールさん?」


 片道でもかなり時間を使っているはずで、トワイトが腐るのが早いと口にすると、ザミールが顎に手を当てて神妙な感じで言う。商人の一人が尋ねると、ザミールは手をかざして返す。


「このまま陛下の下へ持って行っても腐るだけなら食べてしまう方がいいと思うんだ。そして調理できるトワイトさんが居る。これはチャンスだと思わないか?」

「確かに……いつもザミールさんばかりいいものを食べているなーと思っていたし……」

「そうだな……」

「いいのかしら? ならお醤油と……バターがあると美味しいのができるわ」

「すぐにでも……!」

「バターは村のを使いましょう」


 早速持って帰って来た醤油を使うことになり、商人がイカと醬油を持ってくると立ち上がって荷台へ向かった。

 

「ははは、こういう時は部下がいると助かるねえ」

「彼等は部下なのか」

「そうですね。一応、私が商会のトップなので」

「トップが自ら買い付けに行っているのか……」

 

 笑いながら恐ろしいことを言うザミールにラールが目を見開いていた。そこでザミールがきょろきょろと視線を周囲に巡らす。


「どうしたのじゃ?」

「いえ、ペット達は……ああ、あそこに」

「わほぉん?」

「わん?」

「うぉふ?」

「好物を食べておるからそっとしておいてやってくれ」


 見れば寝そべって前足を使い野菜をかじっているアッシュウルフ達と目が合う。ディランは気にするなと言い、ダル達はまた食べ始めた。


「持ってきました……!!」

「それじゃ、私は作ってくるからリヒトをお願いしますね」

「うむ」

「あー♪」

「ぴよー!」


 そこで商人が戻ってきて材料を渡すと、トワイトが調理に入るといいリヒトをディランへ預けた。

 トワイトの背を見送っていると、ザミールがリヒトを見て口を開く。


「そういえば小耳にはさんだんですが、ドラゴンを探している男がいるらしいですね」

「ドラゴンを? ガルフやギリアム殿ではなくてか?」

「あーう?」


 ディランが知るドラゴンを探していると明確に聞いたのはその二人だけだ。モルゲンロートは探す前に会いに来たので違うかと思う。

 ディランの問いにザミールが頷いた後、周囲に気を配りながら話を続ける。


「ピンクのドラゴンを知らないか、と言っていたそうです。どうも一度戦ったことがあるみたいで、それを追っているとか」

「ほう……」

「ドラゴンか……俺は見たことが無いな」


 二人は知っているが、他の人間は知らないためそれらしい話になっていた。ラールもお酒を飲みながらドラゴンは知らないと口にする。


「ふうむ、我々も誰かが見れば大騒ぎになりますからな。それが無いので誰も見ていないかと」

「そうじゃろうのう」


 自分達が降りてきた時は山の頂上の真上から直接降下したので見ている者はあまり居なかったくらいである。

 正直、あの時点でディラン達も少し慎重になっていたから視認されていないのはそうなのだが、モルゲンロートやガルフだけというのは、ディラン本人も少ないと感じていたりする。

 それはそれとして今回はトーニャと『戦った相手』というのが気になるところだと考えていた。


「その男は今どこにおるか分かるか?」

「いえ、そこまでは。ただ、あちこちを移動しているみたいなので王都にも現れるかもと」


 ザミールは帰ったらモルゲンロートにも伝えるつもりだったと口にする。拘束するといったことはしないだろうが様子見をするための情報としては十分だった。


「まあ、そう簡単に見つかるような存在ではありませんから大丈夫だと思います。ただ、注意はしておいた方がいいかもしれませんね」

「? 注意? ドラゴンに見つかる可能性があるってことかい?」

「そんなところじゃな。ラールはこれからどうするのじゃ?」

「え?」


 急に話を振られたラールが口をあんぐりと開けて返事をした後、お酒を口に含んだ後に答えた。


「一度、町に戻ってからメンバーと合流した後にドルコント王国へ向かう予定だ。メンバーの一人の故郷なんだが、一度家へ戻りたいらしい」

「ドルコント王国……ロイヤード国で会った男の国か」

「あの男?」

「こっちの話じゃ。お、酒の肴が来たようじゃぞ」


 ロイヤード国でリヒトが大泣きをした時のことを思い出してポツリと呟く。それは話さずこちらに返ってくるトワイトへ視線を向けた。


「お待たせしました♪ イカのバター醬油焼きですよー」

「あーう♪」

「リヒトには早いのう」

「うー」

「これはいい香りだ!」

「いやあ、まさかあの生き物がこんな料理になるなんて……」

 

 一緒に行っていた商人がイカのグロテスク具合を口にし、それが美味しそうな酒のつまみに変わったことを驚いていた。


「さて、頂くとするかのう。お主らもいいものを食べておるしな」

「わほぉん♪」

「こけー♪」


 ディランはイカのバター焼きを口にしながらお酒を飲む。

 そこでトワイトとザミールを近くへ呼んだ。


「どうしました?」

「ディランさん、なにか?」

「さっきの話、少し気になるわい。トーニャが狙われているようじゃが、そうそう見つかるとは思えん。が、その男の情報が分かったら教えてくれるかのう」

「……わかりました」

「これだけ広い国だし、大丈夫と思うけど心配ねえ」


 トワイトに先ほどの話をし、事情を知るザミールへ自分にも知らせるようにと口にするディランだった。

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