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第107話 竜、東の村で歓迎される

「村長、ラーテルキングの討伐が終わったよ」

「ついに倒したのか……! ん? そちらのご夫婦は?」

「ワシはディラン。こっちは妻のトワイトと息子のリヒトという。よろしく頼むぞい」

「こんにちは」

「あーい♪」


 ラールが荷台を引いて村長の家までやってくると玄関を叩いて外へ呼び出していた。

 厄介者のラーテルキングの遺体を見た村長は歓喜の声を上げ、同時に見たことが無いディラン達について尋ねていた。

 自己紹介をすると村長はにっこりと微笑み頭を下げる。


「私は村長のタモと申します。して、ラールと一緒に居たのは?」

「ああ、それは俺から説明するよ。実はラーテルキングを倒したのはそのディランさんなんだ」

「なんと……!? 子連れなのに!?」

「まあ、信じるかは自由じゃ。どちらにせよ報酬はラールに渡してくれ」


 驚くタモ村長にディランは報酬をラールに渡すよう頼む。


「いや、本当に倒したのはディランさんなのか……? それでもラールに報酬を渡してもいいのですかな?」

「ああ。元々頼まれていたのがラールなのじゃからな。ワシはこいつらの親の仇討ちで倒しただけなのじゃ」

「わほぉん」

「わん」

「うぉふ」

「おお!? アッシュウルフの敵討ちとは……?」


 足元でお座りをする三頭がディランに合わせて鳴くと、タモがまたびっくりしていた。それに対してラールが言葉を重ねる。

 

「こいつらはこのラーテルキングに両親が殺されたんだ。偶然、俺が逃がした奴等だったみたいでさ。その敵討ちってわけだな」

「なるほど……結果的に私達の目的と合致したというわけか。それでラールに報酬を」

「そういうことですね♪ 依頼として受けているのはラールさんなので報酬は彼で良いと思いますよ」

「いいんですか?」

「ええ!」


 というわけでラーテルキングの報酬はラールに渡すことに決まり、討伐したと村長からサインを貰っていた。


「報酬は町のギルドに行かないといけないから、とりあえずここまでかな」

「そういえば、依頼の報酬はそうじゃったのう」

「はは、まあ脅威が無くなったから報酬は二の次でもいいよ。こいつの素材も売れるしな」


 ラールがサインをつけてくれた依頼票を懐にしまいながら、町へ帰るのは明日にしようと口にする。

 ディランがガルフ達のことを思い出し、そういえば依頼が終わった後ギルドに届けていたなと言う。

 報酬を貰うのは急ぎではなく、ひとまず安心できる状況になったことが大事だとラールが笑っていた。


「いや、本当にありがとうございました。ラールさんも長いこと村に常駐していただきましたな」

「仕事ですからお気になさらず。あ、それとディランさんについては少し捕捉があります」

「ん? なにかな?」

「名前に覚えはないかな? 彼等は国王陛下からキリマール山の管理を任された方ですよ」

「……ディラン、トワイト……おお、確かに!」


 ラールの言葉に首を傾げた後、お触れで来た管理者のことを思い出してポンと手を打つ。

 周りで見守っていた村人もポツポツと話をする。


「そういえば山に管理者を置くって通達が来てたな」

「あの人達がそうなのか。でも小さい子がいるのに」

「アッシュウルフ達をテイムしているなら戦えるんじゃ?」

「いやいや、今、ラーテルキングを倒したのはディランさんだって言ってたじゃないか」

「まあ、こいつを倒せるんだから余裕だろうな」


 村人の言葉にラールが返していた。

 管理者になるということはそれなりに理由がある、ということだと。


「色々あってモルゲンロート殿にやってくれと言われたのじゃが、おかげで生活できておる」

「陛下とお知り合いなのですか?」

「ええ、お城でお料理を頼まれたりしていますよ」

「「「え?!」」」


 ディランがモルゲンロートのことを口にすると、タモが国王と知り合いなのかと目を丸くしていた。トワイトが肯定し、先日あった料理会のことを話す。

 村人たちが驚愕の声を上げた後、ラールが冷や汗をかきながら言う。


「……ディランさん達は貴族、なのかい?」

「いや、全然? どうしてじゃ?」

「陛下に直接任命されて、城にも呼ばれるって普通はあり得ないからな……」

「ああ、ワシとモルゲンロート殿は友人じゃからかのう」

「ぶっ!? ごほっごほっ!? ほ、ホントですか!?」

「こけっ!」

「あーい♪」


 タモの言葉にジェニファーとリヒトが返事をする。すぐにディランも頷いてから口を開く。


「たまにウチにも来るからのう。まあ、そこはどっちでもええか」

「どっちでも良くないって!? 粗相をしたらなんて言われるかってなるだろ?」

「そうか? ワシらはワシら。モルゲンロート殿はモルゲンロート殿じゃ。気にすることもあるまい」

「そ、そうかい? そういうなら、普通にするけど」

「うむ」

「ディランさん、存在感がありますねえ……」


 ラールがそれならと普通に接することに決め、タモは存在感が凄いと苦笑していた。


「では少し村を見てから帰るとするかのう」

「そうですね」

「え、もう帰るのか? こいつらも怪我をしているしもう少しゆっくりしていけばいいじゃないか」

「ふむ」

「そうですぞ。ラーテルキングが倒されたので今日は宴をするつもりです。功労者として是非参加していただきたいですな」

「あら、いいですね。リヒトのミルクを売っていただければ助かります。お昼の分しか持ってきていないので」

「ぴよー!」

「あーう!」

「ははは、元気のいいお子さん達ですな。もちろん構いませんよ」


 村の宴に参加することになった一家は少し滞在することになった。料理などを申し出たが城で作るような方に手伝ってもらうのは恐縮だと断られたりする。


「では町を散策して待つとしようかのう」

「あーう♪」


 新しい村に興味があるとリヒトが目を輝かせてきょろきょろとしていた。

 アッシュウルフ達も怪我はしているが行動に支障はないのでついてくる。


「あら、ヤギさんよ、リヒト」

「うー? あいー♪」

「ワシの髭と一緒にしてはいかんぞ」

「うふふ、引っ張りそうね」


 ヤギの髭とディランの髭を見比べてリヒトが喜んでいた。恐らく、ディランの髭の方が立派だと言いたいのかもしれない。


「平和でいいのう。西の村もこんな感じじゃった」

「ラーテルキングが居なくなったからそうなったかな。ふうん、王都には行ったことがあるけど、麓の村には行ったことがないな」

「いつもミルクなんかを売ってもらっているんですよ。あ、山芋」

「わほぉん♪」


 案内でついてきているラールがディランの平和発言に相槌を打っていると、村人が山芋を洗っているところに出くわす。

 トワイトがダルに声をかけると、甘えた声を出して涎を出す。


「なんだ? 山芋が好物なのか? 変わった魔物だなあ。宴で出してやるから待ってな! そっちの二頭は好物があるのか?」

「うむ。ヤクトはキャベツで、こっちのルミナスは甘芋じゃ」

「肉は」

「食べるぞい。ただ、ウチに来てからは特にバランスよく食べさせておる。肉だけでは強くなれんからな」

「本格的だ……」

「「「わふ」」」


 畑のおじさんが肩を竦めて仲良く鳴くアッシュウルフ達を見て言う。


「実際、三頭といえどこの体格でラーテルキングと戦えたのはそういうのもあるんだろうな。おい、ホントに良かったな」

「うぉふ!」


 そんな調子で村を散策し、リヒトやペット達が可愛がられたりする中、村の入口が騒がしいことに気づく。


「なにかあったかな?」

「行ってみようぞ」


 ラールとディランは顔を見合わせて頷くと、その足で村の入り口へ急ぐ。宴の準備をしているのかと思いきや、そこには――


「ふう、ありがとうございます。一息つきました」

「おや、商人?」

「なんとザミールではないか」

「え? ああ! ディランさんにトワイトさん!? なぜここに?」


 ――東の国の食材を手に入れるため旅立っていたザミールが居た。

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