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俺は食事を買って、宿で魔力を意識する練習をする事にした。
モック君と練習する前に、あのゾワゾワに慣れないとな。
イスに座って、身体の中の魔力を感じて⋯⋯。
おわぁぁ、来たよ、ゾワゾワ、あぁぁぁぁ。
何だろ、全身羽で擽られてるような。
拷問かよ!!
一旦止めて、スー、ハー、スー、ハー
深呼吸。
よし、もう一回。
ゾワワワワワワ。
『魔力が身体のどこから発生してるかを考えるんだ。大体が、心臓の辺りってのが多いよ!後はお腹のへその下辺りって話もあったね。そこから流れを感じつつ身体中に巡らせるんだ!』
なるほど。脳内の弟よ、今日も絶好調だな。
もう、ちゃんと名前で呼ぶか。
ありがとう、暢君。
さて、暢君のアドバイスに沿ってやってみるか。
スー、ハー、スー、ハー
まずは、心臓の辺りを意識して⋯⋯身体中に巡らす感じで⋯⋯。
お、ゾワゾワが少ないかも。
何かポカポカして来た。
心臓から左足、左足から戻って左手、左手から戻って左肩、首、頭、右肩、右手、右足、また心臓に戻って⋯⋯。
すげぇ!何か、意識して感じる、ゾワゾワ少なめ、出来た!
これで、魔法が使えるようになったのか⋯⋯?
『地球から持ち込んだ物が魔導具化する事もあるらしいよ。そんな時は魔力を通してみたらいいと思うんだ!意外にチート性能発揮するかもしれないじゃん!』
⋯⋯やってみるか。
っていっても、あるのは白紙の異世界辞典と森田カバン。
んー、とりあえず、役に立つものが入っているかもしれない森田カバンにするか。
カバンの中に入ってた辞典とパンとスープを出したところで、カバンの内側にガラス?ビーズ?のような玉のストラップが付いている事に気付いた。
あれ?こんなの付いてたかな?
何となく、そう、何となくだ。このストラップに魔力を流してみようって思っちゃったんだ。
えーっと、ストラップを握って、身体の一部と見做して、心臓から流して⋯⋯
ゾワワワワワワ
「ぐっ⋯⋯」
何か身体から抜けてく!鳥肌もヤバイ!気持ち悪い!
「はっはっはっ⋯⋯」
過呼吸みたいになっちゃってるよ。
いつまで続くんだ、これ!
体感では10分くらいだろうか、スーッと気持ちの悪さが落ち着いて来た。
ちょ、座ってられないよ。
ベッドがあって良かった!
カバンを机に投げて、俺はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
ふぅー。一体何だったんだ。
あー目が開けてられねー。
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気が付くと、もう昼は過ぎていた。
さっきの気持ち悪さも無くなったし、パンでも食べるか。
お、今日のスープはミネストローネみたいなやつだ!
これも美味しい!相変わらずパンは硬いから、スープに浸しながら。
よく考えたら、夕食も、明日の朝食も同じメニューじゃん。
んー、夜は酒場に行ってみるか、どうするかな。
食べ終わったし、さっきの森田カバンどうなったか確認してみよう。
見た目は何も変わってないなぁ。
中を見ても⋯⋯何もないな!
あれ?ストラップが無くなってる!
ヤバ、投げちゃったし、どっかいったかな?
机の周りやベッドの周りを見ても見当たらない。
えー謎現象かよ。
探す事を諦めて、辞典を手に取った。
そういえば、草挟んだままだったなぁ。
雑草って言われたし、捨てようかな。
草を挟んだページを開くと、
「え?は?え?」
【雑草】
特に名前はない。どこにでも生えている。
【セイチョウ草】
整腸作用のある薬湯の素材。比較的入手しやすい。
挟んだ草の写真?いや、イラストだな。そのイラストと説明が書いてあった。
何が起きてるんだ?え?
異世界こわっ。
これ、挟んだものが記録されるのか?
何か挟めるもの⋯⋯あ、スーツに入れてたポケットティッシュを挟んでみよう。
結果、挟まなくても触れるだけで記録されていた。
パン、保温の魔導具、スーツ、靴下などなど、持っているものを触れさせてみた。
ちなみにポケットティッシュは、
【地球のポケットティッシュ】
110円ショップの6パック入りのティッシュ。
水に流せる優れもの。
この世界では入手不可。
これって辞典なの?図鑑じゃなくて?
辞典と図鑑の違いも分からなくなったよ。
凄く便利だけど!!
ちょっと!森田さーん!!
(※森田は書店企画部です)