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ひとまず、そのままボーッと座っていても何も変わらないから、弟との会話を思い出す。
『兄ちゃん、異世界は街に入る時に金がかかるんだぜ。入場料みたいなもんだと思えばいいよ。
んで、異世界行った時って金なかったりしたら大変じゃん?戦えるんだったら魔物とか狩って素材を取ればいいんだけど、やっぱ難易度高いから薬草になるやつとか鉱石拾いがいいんじゃないかなぁってオレは思うんだ!』
てな事言ってたなぁ。
弟よ、兄ちゃん草には詳しくないぞ。
ただの草抜きと石ころ集めで終わる予感しかしない。
少し森の中に入ってみるか。
とは言っても、草とか石とか全く分からないんだよね。
んー⋯⋯どうするか。
地味に重くなった森田カバンを下げながら歩く事数分、何となくキレイっぽい草と石をそこそこ拾っていた。
道から外れすぎると迷ってしまうから、道の方向が分からなくならないように。
森田カバンに入れていったけれど⋯⋯重いな。
役に立つ物何も入ってないカバンだったけど。
マジックバッグにならないじゃん!
あ、やべ、辞典に草の汁付いてた。
あー、もー、分かんねぇ。いっその事、この辞典で押し花ならぬ押し草でもするか。
って事で、各種類の草を1枚ずつ辞典に挟んでおいた。
思いの外、種類があった。
石は流石に挟めないから、そのまま森田カバンにイン。
よし、とりあえず道に出て人とか村か街を探そう!
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
歩く事、数十分。
あー、何か集落みたいなの見えてきた。
近くまで辿り着くと、周りを木の柵で囲ってある所だった。
うん、村だな。たぶん。
緊張するな。結局ここまで、異世界人に会わなかったし。
お、入り口?に人がいる!!!人だ!!
この異世界に来て!やっと!
あ、言葉通じるのか?
ヤバイ、緊張しすぎて口から心臓出てきそう。
『いい?何処から来たのかとか、何て所なのか聞かれても、山奥の田舎から来たとか、村は村です、名前とかあるんですか?とか言って誤魔化すんだよ!』
ありがとう、弟よ。
しかし、言葉については分からんままだ。
えぇい、男は度胸!
スー、ハー、スー、ハー
深呼吸して、いざ!!
「こ、こんにちは!」
心臓がバックンバックン。
「やぁ、こんにちは」
言葉通じたァァァ!!!
めっちゃ胡散臭そうに見られてるけど。
よし、後は何とか頑張ろう。
「あの、田舎から出て旅をしなければならなくなったんですが、色々教えてもらう事って出来ますか?」
「あ?そんなおキレイな格好で?」
まぁ、スーツに革靴だからな。
言いたい事は分かる!分かるけど!
頑張れ、俺。
「この服は村の旅立ちの衣装です!!」
だぁぁぁ、何だよ旅立ちの衣装って。苦しすぎる。
誤魔化せたか??
入り口に立っていたのは、簡素な服に革っぽい胸当て、槍のような武器を持った男だった。
攻撃されたらどうしようか。逃げれるかな。
「へー、そんな村があるんだな。話を聞きたいなら村の中央広場の近くに店があるからそこで聞くといい」
誤魔化せたぁ。
「ありがとう。ここは入るのにお金がいるんですか?」
「こんな小さな村じゃそんなもんいらねぇよ、安心しな。
だが、一応入る前に、この石に触れてくれ」
木の柵に埋め込まれた石を指差しながら言われた。
「これは?」
「あぁ、犯罪者だったり、逃げ出した奴隷だったりしたら後々面倒な事になるんでな。特に後ろ暗い所がなかったら、ビビる必要もねぇよ」
「なるほど、分かりました」
てか、奴隷とかいる世界なのか。
『入場する時に犯罪歴がないかとか調べたりするのも異世界あるあるだよね。後は奴隷落ちしないように気をつけないとね。あ、後、異世界では貴族以外は名字がないのが当たり前のパターンがあるから、名乗る時は注意しないとね』
脳内弟よ、出てくるのが遅い。
俺には犯罪歴も奴隷だった経験もないけど、怪しい存在なのは確かだから、ドキドキしながら石に触れた。
うん、何も反応なし。
「問題ないな。
ようこそ、アイン村へ。
俺は門番のトムだ」
名字無いパターンぽいな。
俺は下の名前だけ名乗る事にする。
「ありがとう。俺はシンです。
よろしくお願いします」