26
テントをカバンに入れて、教えてもらった家に向かった。
「おお!来たな!早速だが、こっちだ!」
元気いいっすね!ダムスさんは酒場で車を知っているって言ってた、いかついオジサマだ。この人のご先祖が厨ニ病だった人か⋯⋯。
そしてここでも地下室。ロマン溢れる村だな、ほんと。
「ちょっと聞きてぇんだけどよ、チューニ病ってどんな病だったんだ?病が治らなかったって事はよ、大変だったんだろ?」
「うぇっ!?」
おっふぅ、どう説明しようか。
「えーっと、世界を救わなければならない使命を持っている(と思い込んでいる)病気とか、見えてはいけない物が見えちゃってる(と思い込んでいる)感じの病気ですかね⋯⋯多分。症例は様々だったと思います⋯⋯」
こんな感じだったよな!確か!
「そうかぁ、ご先祖様、苦労してたんだろうなぁ」
何だろ、この罪悪感。そんな真面目に心配するようなものじゃないんですけどね!!言えない!!
ダムスさんの家の地下室の一室は書庫のようになっていた。書庫のようって思ったのは本棚はあるんだけど、本自体は20冊程度しかなかった。何でこんなに少ないのかは教えてもらえなかった。
この本の中でも、アイン村の人達が読めるのは【黒の書】と【白の書】だけだそうだ。それ以外の本は読めない字で書いてあると。「読めるんなら読んでいいよ」って言われたから遠慮なくそれも見させてもらう事にした。日本語の可能性あるんじゃね?って思ったからな!
後は、本はこの部屋から持ち出せないようになっているって事と、帰る前に声をかけてくれって事でひとりになった。
よし、とりあえず異世界辞典を出しといて、まずは【黒の書】から。確か【黒の書】は召喚されてからの事が書いてあるんだったな。この世界の文字、すんなり読めるといいな。まぁ辞典あるから最終手段もあるけど。
昼までに読めるところまで読むかな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
結構衝撃的な内容だったな⋯⋯。
まず、召喚された時だけど、同窓会というかクラス会だったようだ。その時の参加者は35名。欠席者6名。当時の年齢は23歳。先生は70歳だったと。
(俺と同じ年か)
召喚した国はオトニ国。
(そもそもここは何て国だろうか)
召喚の際に、神様(?)からそれぞれチートスキルを授けられた。ちなみにこの時に、結婚してた人とか結婚間近だった人や、既に子供がいる人は阿鼻叫喚だったそうな。
(え?俺、神様とやらに会ってないけど⋯⋯)
召喚された後は、戦闘系スキルを持った者は戦闘訓練を。それ以外のスキルの者は持て余されていたと。生活便利系スキルだから、あまり評価されなかったようだ。
戦いに出る訳でもない人達は、穀潰しのような扱いになり、次第に周囲の者たちからの目が厳しくなっていった。
それに耐え兼ねた13人の人達が出奔、というか国から出る事を決意した。でも戦えない人達の集まりだったため、策を練ったらしい。その策とは、冒険者を雇うってのと、逆ハニートラップだそうな。
(めっちゃツッコみたい⋯⋯誰だよ、考えたやつ!!)
これがまた上手くいったらしく、城の魔導具技士とか薬師や魔術士、たまたま城に来ていた元貴族で当時金色タグの冒険者パーティが引っかかったと。
(⋯⋯その国、チョロすぎん?あ、これこそがご都合ってやつ!?後、金色タグって何!?)
んで、総勢20名で国から脱出した。
(いやいやいや、元貴族の冒険者パーティ何やってんの!?国捨ててるんですけど!?)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
おっと、そろそろいい時間になってきたな。あ、全部辞典に触れさせとこ。持ち出し禁止だけど出来るかな。
とりあえず20冊程度だったし、一応全部触れさせておいた。
そういえば読めない字は日本語だと思ってたんだけど⋯⋯。
⋯⋯いや、俺コレ見た事あるぞ。モンスターをボールに詰めるゲームの古代文字モンスターじゃね?
他のも某ハンター達の漫画っぽいやつとか、多分ゲームのオリジナル文字だと思わしき文字だった。見た事はあるけど特定出来るほどやり込んでたゲームって少ないからなぁ。
えぇぇぇ、俺、読めるかなぁ。って変なところで執筆スキル発動してんじゃねーよぉぉ!!スキルかどうかは知らんけど!
ダムスさんに挨拶してから家に帰った。
昼食べよ。あ、加熱使ってみよ!!えーっと、温度を決めつつだっけ?確か汁物は65度から75度が美味しいって何かで見た気がする!間をとって、「70度に《加熱》」⋯⋯おぉ、少し湯気が出てる!
うん、温かいスープっていいよな。
ササッと食べ終えて、書が見れるか確認しよ。
電池節約の為に辞典を出してっと。
おぉ!見れた!しかも日本語になってる!!って事はさっきの著作権ガン無視の本も読めるな!
ひとまず続きを⋯⋯どこまで読んだかな。
脱出した後、隣の国に辿り着く前に高齢だった先生が亡くなった。
(マジかよ、先生。てか高齢の先生、頑張ったんですね)
泣いてばかりではいられない為、先に進んだ。
道中、魔物を倒したり、魔導具開発して売ったり。
その時にマジックバックを手作りしちゃって、その作成方法をどうするかの会議?が行われたり。
マジックバックは当時はダンジョンからの入手のみで、超希少品だったらしい。ちなみに作成方法は秘匿する事にしたそうだ。
そんなこんなで、隣の国であるラーノ国を通り過ぎて、今のアイン村があるマベラ国に入ったと。
(ここ、マベラ国って国なんだ)
あ、やべ、トルネさんのところに行くんだった!