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訓練着に着替えて、ウィリアムさんを待ちながらトルネさんに媒体の事について聞いた。
「お前の耳飾りが魔力使用媒体になってるぞ。でも魔法は使ってなかったって言ってなかったか?」
え?何をおっしゃる?
耳飾りってピアスの事?確かに俺の耳には左に2個と右に1個ピアスホールがある。シークレットピアスが媒体って事?
「この透明なやつですか?」
「何言ってるんだ?お前の左耳に青い石の飾りがついているだろ。それが媒体になっているぞ」
いやいや、仕事中はシークレットピアスでしたけど!休みの日は、遊びに行く時は普通のピアスしてたけど⋯⋯青い石かぁ。持ってたかな?あ、あの森田カバンに付いてて無くなったストラップ!!青い色だった!
いや、まさかねぇ。ってマジで!?
「鏡!鏡ないですか!!」
そういえば鏡をこの世界に来てから見ていなかった。鏡って存在しないとか!?
動揺しまくりの俺に、「ほれ」ってあっさり鏡を渡してくれたトルネさん。鏡あるんかい!
うぇぇぇ!何か青い石のピアスついてるー!!いつの間に!?
これがあの無くなったストラップかは分からないけど、色は似てるな⋯⋯。
いや、待って。ねぇ、待って。
何か俺、若くない?いやいやいや。えぇぇぇ。
「おい、シン!どうした?」
確か、酒場で酒飲む時に、15、6歳って言われたよな⋯⋯。
「モック君、俺、何歳に見える?」
「え?成人前のお兄さんだと思ってたんですけど⋯⋯」
えぇ、異世界に来たら若返るの!?まーじーで!?
「おい、落ち着け。本当にどうしたんだ?」
「いや、俺23歳なんですけど。何か若返ってるんです!」
「ちょ、おま、待て!ちょっとこっち来い!」
部屋の端っこに連れて行かれて、コソコソ話。
「モックにはまだ他の世界の存在とか教えてねぇんだ。だからそれ関係の事はまだ秘密にしとけ!んー、どうするか⋯⋯、あ、お前、辺鄙な村から来たって事にしてたよな!年齢の数え方が違ってたって事にしとけ!んで、実際に今何歳かはギルドカードに記載されるからそれを確認しろ!いいな!ついでにこの世界での年齢が分かるまでは酒は飲むなよ!」
めっちゃ早口ぃ。お酒禁止は地味に寂しい⋯⋯。
「ハイ、ワカリマシタ」
モック君が知らないって、【黒の書】とやらはR指定でもあるのかい?
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「待たせたな!!」
おぉう、元気なおっさん登場だよ!
満を持してのウィリアムさん登場。おぅ、軍人さんみたいな体格⋯⋯。でも緑色のシャツと黄色い帽子はどうかと思います。
一応挨拶をして、んで、モック君と一緒に、
「「今日からよろしくお願いします!」」
トルネさんがカバンを預かっていてくれるという事で、手ぶらで村の外へ。
あ、トムさんだ。今日もお疲れ様です!
村の外の開けたところで、まずは柔軟みたいなやつ。
魔物が来ないのかと思ったら、「この辺りは村の魔物避けが効いているから大丈夫だ!」だと。
腹筋、背筋、腕立て、反復横跳びなどなど。いや、柔軟じゃないよな!それ!
「お前たちなら出来る!」「ぐっじょぶ!」
いちいち掛け声が⋯⋯教えて貰っている身だけど、やかましいわっ!!グッジョブって言葉、異世界にもあるんだな。
この時点でクタばってるのに、柔軟(?)体操が終わったら後は、もう走り込み。まずは村を10周。終わったらインターバルを挟んで、ジャンプして立ち上がってのトレーニングなど。その後はまた村の周りを走る、最後は5周。
いや、村の周りを周回って言っても、学校のグラウンドの2周分くらいは優にあるからね!!
くっ、運動不足⋯⋯終わる頃には息も絶え絶え。
って若返っているはずの俺でもこれなのに、モック君も相当辛いはず⋯⋯って元気ぃーー!!
「よーし、最後だ!両手を上げて俺に続け!!びくとりー!!」
「びくとりー!!」
「⋯⋯ビクトリー!」
「よーしよし、よく頑張ったな!明日から俺の事は軍曹と呼べ!いいな!」
色々混ざりすぎー!!!おい!ご先祖様!やり過ぎ!
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「クックック、シン、フラフラじゃねぇか。おつかれさん」
何とか店に辿り着いたけど、めっちゃ笑われてるし!!
そりゃもう、若返っているっぽいけど、高校卒業してから運動なんて殆どしてなかったんだし、しょうがないじゃん(言い訳)。
これ、明日からも続くんだよなぁ。
「ほれ、預かっていたカバンだ。練習用の武器は明日渡すから、訓練後に取りに来い。後、これは風呂の道具だ。モックのはジュリアンが届けに来たぞ!シンに使い方を教えてやってくれ。それから2人とも、このスクロールの魔法陣に手を当てて魔力を少しだけ流してみろ」
出た、少しだけ!少しだけってどうやるんですか!?
え、指先から糸を出すように??スパイダーマンですか??
俺はスパイダー、俺はスパイダー、俺はスパイ⋯⋯
だぁぁ!何だこれ!フワッとゾワッと!
手をグーパーしてると、モック君も何かブルっとしてる!!
やっぱゾワッとくるよなー!俺だけじゃなくてよかった。
「よし、上手く行ったな!これで、生活魔法の洗浄が使えるようになったはずだ!使い方は、魔力を意識しながら『清き水よ、汚れを洗い流せ《洗浄》!』って言うんだ」
呪文いるの!?その呪文いる!?
ちょっと、いやかなり恥ずいんですけど!!
「きよき水よ、けがれを洗い流せ《洗浄》!」
「上手に出来たな!モック!次はシン!やってみろ」
くっ、やるか!
「清き水よ、汚れを洗い流せ《洗浄》!!」
サーッと下から上に風が吹いたみたいに感じた。
何か汗のベトつきとかない気がする!あ、服も汗を吸い込んでた筈なのに、サラッとしてる!
魔法すごい!!
暢君、兄ちゃんやったよ!魔法使えたよ!
『異世界の魔法はイメージが大事なパターン多いよ!皆呪文を唱えているけど、実はイメージさえしっかりしてたら呪文いらなかったりとかね。まぁ逆に呪文が魔法の発動条件の世界もあるけどね!俺だったら、呪文なしの世界がいいなw』
ちょっと最近の脳内暢君、遅刻気味じゃない!?
脳内のクセに草生やしてんじゃないよ!
試してみる価値はあるけど!えーっと、イメージって何だ。
駄目だ、疲れすぎてて洗車機に人が洗われているイメージが出てきてしまった。
どんだけ車に未練があるんだよ。
後で試そ⋯⋯。
「シンさん!そろそろお風呂に行きませんか!」
君は元気だね。6歳でよくそんなに体力あったね。
うんうん、お風呂行こうね。早く入りたーい!!