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そんなこんなで、アイン村の事がだいたい分かった気がする。
ノノさんの曽祖母さんは、何と管理栄養士だった。チートスキルは、特殊な鑑定で、食用素材に特化した鑑定だったらしい。
この酒場の店主さんの曽祖母さんは、スーパーの肉売り場のパートで、チートスキルは、どこに包丁を入れればいいか分かる解体スキル。
ちなみに、トルネさんとジュリアンさんの曽祖父は、サラリーマンで、趣味でレイヤーさんだったそうな⋯⋯。色々混ざって(何がどう混ざったんだ!?)、今の商店と宿屋が出来たそうな。
他には、薬学部在学中だった人は薬師スキル、大工さんだった人は設計スキル、服飾関連の仕事だった人は裁縫スキル、厨ニ病が治らなかった人は執筆スキルといった感じだそうだ。他、詳しくは【黒の書】を読めと。何だよ、【黒の書】って。
そうか⋯⋯。いやいやいや、待て待て待て、何かおかしいの混ざってる!!
何だよ、厨ニ病が治らなかった人って!!執筆ってどんなスキルだよ!
【黒の書】には、召喚されてからの内容と様々な注意事項、【白の書】には、この世界の事を書き記してある。どちらも門外不出の書として、この村に保管してあるらしい。おぉう、厨ニっすね⋯⋯。
くっ、ヤバイよ、アイィィン村!!最初に辿り着いたのがこの村で良かったよ!!
笑ってはいけない何か第2回開催だよ!
ビークール!ビークール!グッボーイ!落ち着け、俺!
俺、冷静。大丈夫。
ってか、王都とやらに残った人はどうなったんだろう?⋯⋯って言ったらさぁ、一斉に静かになっちゃったよ!
えぇ、変な事聞いたのかなぁ。
「それがなぁ、何と平穏を取り戻したら、戦いに参加した異世界人達は、元の世界の記憶がほとんど消えちまったらしいぞ。伝手から情報が届いたらしい。あ、これは【黒の書】に書いてあった内容だ。子孫である俺達は1回は読まなければならない義務ってのがあるんだ。んで、何でご先祖様達だけ記憶が残っていたのか、っていうのは謎のままだ」
いや、ホラーかよ。むしろ、ミステリー?
『異世界モノの主人公に、都合よく話が進んだり便利な物が出てくるのを、ご都合主義っていうんだ!後は知識チートしまくって現代兵器とか造るのもあるけど、逆に摂理に反するから再現不可ってのもあるよ!』
うーん、この辺が理由かもしれないな。
でもさぁ、同窓会の人達が一斉に行方不明になったら、絶対にニュースとかになってるはずだろ?トルネさんの服とか厨ニ病とか、確実にここ数十年のはず。未解決事件のネット記事とかにもそんなの見かけた事ないしなぁ。ミステリー⋯⋯。
「まぁ、悲惨だったのは、元の世界で既に結婚してたり、その予定があった人達だったそうだぞ。独身を貫いた人もいたな」
あー、そうだよな。同窓会って事はそれなりに大人だろうからなぁ。薬学部の学生がいたんだったら、20代前半から半ばってところかな。んー、やっぱりそんなニュースは無かったなぁ。
他の世界っていっても、同じところじゃないかもしれないな。
あ、そういえば、
「この村、モック君以外の子どもっていないんですか?」
「あぁ、若い者達は村を出るんだ。跡を継ぐヤツ以外は自由意志だ!ハハハ。跡を継ぐヤツは40歳にはこの村に帰って来る掟だ。理由は知らん!モックはな⋯⋯」
「あら~お・ま・た・せ♡」
グフッ!キャラ濃い人来た!
「おぉ、お疲れさん。遅かったな」
「そうなのよぉ、探し物が見付からなくてねぇ。シンちゃんもこんばんは♡」
ハートが飛び交ってるよ。イケオジなのに。現代日本では珍しい事もないけど、この村だと違和感すごいな!
「どこまで話したのぉ?」
「この村についてを簡単に、だな。後お前、今はその喋り方やめろ!」
「えぇぇ、だってぇ、シンちゃんの戸惑ってる顔が可愛いんだものぉ」
⋯⋯え?
「いや⋯⋯まぁ⋯⋯うん。まぁいいや」
トルネさん!!諦めないで!!
「うふふ。モックの事は話したかしらん?」
「まだだ」
「じゃあ、次はワタシが話すわねぇ。あ、その前にぃ、親父ぃ、俺にも酒とつまみよろしく」
普通に喋れるじゃねぇか!声低くなったし!何なの、その雑なキャラ設定!
周りのおっさん達も笑ってるし!
「ちなみにこいつの本名はジュリアスだ」
ジュリアンさん改めジュリアスさんが、話しを引き継いだ。
「単刀直入に言うぞ。シンちゃんの旅にモックを同行させてくれ」
「えぇぇぇ!!いや、俺足手まといですよ!モック君の身の安全とか守れないですよ!ついでに男口調になったのに、ちゃん付けですか!」
無理無理無理無理!!何で出会って3日程度の男に息子を預けようとしてんだよ!何考えてんの!?