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さて、お時間になりまして、トルネさんが迎えに来てくれて、酒場に行きました。
非常に難しそうな顔をしていらっしゃいます。
何か起きたのかな?
ちなみに現在、酒場には俺達含めて10人いる。
この村でこんなに人見たの初めてだよ。
俺を除いた全員、だいたい30代後半以降の人達だ。
「あー、シン⋯⋯。今ここに集まってるメンツはな、ちょっとご先祖様が特殊なんだ。先祖って言っても俺の年代から見れば、ひいじいさん、ひいばあさんくらいなんだがな。⋯⋯ちょっと飲みながら話すかぁ」
他の人達もそれぞれ酒とつまみを注文していた。
ちなみに、銀貨3枚で3杯の酒と肴盛合せのセットだ。
木札みたいなのを2枚渡されて、おかわりはそれと交換だ。
食事をしたい人は、追加の銀貨1枚でパンと主菜とスープらしい。
酒も居酒屋のビールジョッキくらいの大きさのコップだ。
3杯を超えて酒を飲みたい時は、また銀貨3枚でセットの注文がいるんだって。
1杯辺りいくらってのはないみたい。
そもそも、この価格設定でやっていけるの!?って疑問は飲み込んだ。まぁ物価が分からないけど。
俺も酒と肴のセットにした。久しぶりの酒だ!
「おい、シン!子どもが酒を飲むのか!?」
「いや、俺、成人してます!!」
日本人、若く見られる説を身を持って体験しました。
「どう見ても、15、6歳だろう?」
ナイナイ!って若く見られ過ぎー!!23歳ですから!!
「あー、もしかしたらな、15、6歳かもしれんだろう。まぁ本人が成人してるって言うんならしょうがないが⋯⋯。飲めなかったらミルヒにしてもらえよ」
ちょっと意味分からないんですけど。後、ミルヒって何?
「まぁいい。ひとまず乾杯するか!」
「「「おぉー、お疲れさーん!乾杯!」」」
ん、飲めるな!冷えてるけど、炭酸の少ないビールって感じ!
でも、久しぶりのアルコールは美味いな!
肴盛合せも、ソーセージとハムと何か野菜!後は鮭とばみたいなやつ!この金額でこの内容とか、豪華だな。
「さて、話すぞ!シン⋯⋯お前、他の世界から来たな?」
ブッ!!!ゲホッ!!!
え!?何で!!!???
「いや、あんな雑な誤魔化しでバレないと思うか、普通。下手すりゃ後ろ暗いヤツだよ。まぁ俺達のご先祖様がいなけりゃ、他の世界とか信じてねぇけどよ」
⋯⋯やっぱり誤魔化せてなかったんだ⋯⋯。
暢君、兄ちゃん、やっちまったよ。
しかも、この流れだと、そのご先祖様達が異世界から来たって事ですか!?
え、待って。子孫がいるって事は⋯⋯帰れない?
どうなる?どうする?
「あぁ、怯えんな。取って食ったりはしねぇよ。もうその反応で分かっちまうし。先に俺達のご先祖様の話をしてやるよ」
「⋯⋯よろしくお願いします」
何でも、トルネさん達のご先祖様はどっかの国が召喚したらしい。そのご先祖様達は、『どぅそう会』っていう集まりの最中だったと。同窓会かな、多分。
ダンジョンからのスタンピードや、各地域の魔物大量発生でヤバかったらしい。それを何とかする為に召喚されたんだって。スタンピードは、ダンジョンから魔物が溢れ出て、甚大な被害をもたらす事なんだって。
召喚された人達は、それぞれチートスキルってのを持ってたそうなんだが、戦い向きじゃないスキルの人達もいて、かなり揉めたそうだ。
んで、その戦い向きじゃないスキルを持った人達が出奔(でいいのか?)して、行ける範囲で旅をした末に、ここに村を興したのがアイン村の始まりらしい。そして、終いぞ帰還方法は見付からなかったと。
魔物が蔓延る中、よくここまで旅を出来たな、とか、帰れないのかなとか思っていたら⋯⋯
アイン村になったのは、じゃんけんで負けた戸野さんって人が村長になって、アイン村になったと⋯⋯。
戸野さん⋯とのさん⋯トノさん⋯⋯トノサマ⋯⋯アイ⋯⋯ン
くっ!!俺の中で、笑ってはいけない何かが開催決定だよっ!!
手で顔を覆って何とか耐えろ、俺!
ドイツ語辺りの数字の1かと思ってたよ!!
俺のナイーブでヘタレなメンタルさん、出張に行ったよ!!
腹筋強化隊が出向して来たよ!!
トルネさんの服も、商人ならコレだろっ!!っていうご先祖様からの教えで着ているらしい。ちなみに、その服の染色技術は引き継がれていない⋯⋯何でだよ!!
あんたら、子孫に何してんだよ!!
アイン村、愉快過ぎるだろ!!著作権さん、仕事して!!
スー、ハー、スー、ハー
笑っちゃ駄目だ、笑っちゃ駄目だ!!
プルプルしている俺を、泣いているかと心配してくれる人達、何だこれ、カオス。
余談だが、トルネさんのご先祖様は、リーマン兼レイヤーで、ノノさんのご先祖様は管理栄養士だった。他のご先祖様方は、服飾関係や薬剤関係、農家の娘や大工とかの村興し最適(?)メンバーだったそうな。それぞれ職業にあったチートスキルを持っていたんだって。
ジュリアンさんのご先祖様はトルネさんと一緒だそうだ。
そうか、その2人、親戚か⋯⋯。