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5 街に到着

森から出て数十分ほどだろうか、夜の帳が下りたころ、丘を超えた先に街明かりが見えた。


月明かりを頼りに歩いてきたからか、少しは馴染みのある暖色の光にどこか安心感を感じる。


やっと人が多くいる場所にたどり着いた。


リゼットとリルの二人も一心地ついたのだろう。


安堵の吐息を漏らすと、微笑みをこちらへと向けてくる。


「さあ、カオルさん、あそこが私達の住んでいる街ミミングです。」


城壁などは有りはしないが、木製の囲いが人と獣…魔物たちを退けんという意志を感じさせた。


入口たる木製の門は簡易的にも思えるが造りはしっかりしているのだろうシンプルイズベストという言葉を送りたい。


そこには門番らしき人物がこちらに向けて立っていて、照らされた明かりからどこか険しい表情が伺えたが、リゼットやリルを見ると安心したのか人の良さそうな笑みを見せた。


「遅かったじゃないか、リゼット。なにかあったのか心配したぞ。」


「あはは、ご心配お掛けしました、ボミングさん。少し魔物に襲われてしまって…。」


「ま、魔物っ!?大丈夫だったかっ!?怪我はっ?」


迫ってきたボミングに少しびっくりしたのか、リルがカオルの後ろに隠れると、はっとした様子でこちらを見てきた。


こちらは外套をすっぽりと覆われ、フードまでしっかりと被ったカオルさんである。


怪しい。


送られている視線などは当然歓迎されているそれではない。


ボミングが口を開こうとしたその時、リルがどこか怒った様子で声を上げた。


「おじさん!カオルお姉ちゃんはリルたちを助けてくれたの!!だから失礼はダメでしょ!」


「そ、そうなのかっ!?悪かったな。」


反射的にだろう。


実際、ボミングが悪い訳ではないのだが、謝らせてしまった。


カオルとしては、できることならば人にこの姿を見せることは本意でなかったので、街に入る前に身を覆ってしまったのだが、やはりわかってはいたが姿を曝すしかないらしい。


リルにありがとうと頭を撫でると、往生際悪くフードのみを外し、中で擦れてうっとおしかったのか髪を取り出す。


美しい黒髪が月明かりに反射し、顔立ちもあいあまりどこか幻想的な雰囲気も伺えた。


ぽ〜っとした様子のボミングの前で軽く手を振ると、気を取り直し喉を整えるとシャキッとした顔立ちとなり、リゼットやリルが聞いたことのないような声がその無精髭を備えた口から放たれた。


「失礼しました。お嬢さん、ようこそミミングへ。」


「「「…。」」」



「それにしてもびっくりしましたね…。」


「あはは…そうだね。」


ボミングから逃れると、カオルはリゼットたちの家へと案内された。


表がお店で裏が住居となっているらしく、お店のほうから入ったのだが、中はリゼットがよく店を管理しているのか、しっかりと戸棚にそれぞれの薬品が並べられ、埃っぽさも感じなかった。


薬草の匂いなのか、少し苦そうな匂いがしないわけでもないが、カオルとしては特に問題ない。


リルに手を引かれ、リゼットに促されるままに家に上がると、テーブルに置かれた店が閉まる前ギリギリで買うことができた食材たちを手に台所へと向かっていった。


カオルがなにか手伝おうかと声を掛けると、リゼットはどこか嬉しそうにしながらも、今回()自分に任せてほしいという。


「あっ、それならカオルさんはリルの相手していてください。」


よく見ると、いつの間にかリルが居なくなっていたことに気がつく。


「あれ?」


声を上げるカオル。


すると、リルがドカドカと上から降りてくるのが聞こえた。


手にはなにやら玩具や本なんかが手一杯にあった。


さて自慢したいのか、それとも遊んでほしいのか?


答えはわかりきっている両方だ。


羽美も昔はよくこうして……あれ?今でも…かも…?


新しい服や化粧品を買ってきては見せびらかし、テストで良い点を取ると遊びに行こうと連れ出され、最近はゲームで繋がっているからか、良いアイテムが手に入ると…とおっと今はリルと遊ぶんだった。


「えへへ♪」


褒められる、凄いねと言ってもらえると思い、期待からか嬉しそうなリル。


その様子を見て、込み上げてくるはずだったものが期待通りでないことに少しばかり愕然としつつ、リルを褒めに褒めまくり、楽しく夕食前の時間を過ごすのだった。


リルがテーブルにそれらを置くと、その中の一つを手に取り尋ねる。


「これはどういうものなんだい?」


「うん♪それはね…。」



台所に聞こえてくる楽しそうな声。


それをBGMにして料理をしていると、いつの間にか鼻歌を口ずさんでいた。


「〜♪〜〜♪〜♪」


夕飯はいつの間にか出来上がってしまうのだが、リルの楽しそうなひと時を…。


なんて繰り返すうちに気がつくと食べきれないほどにそれらが出来上がってしまった。


まったくカオルのアイテムボックスがなかったら、せっかくの手料理が無駄になるところだった。


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