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3 現実逃避と現状把握に向けて

「…。」


無言で軽く目元を揉む。


疲れているのだろう。


そんな逃避はすぐさま覆される。


目を見開いて確認した景色。


青臭いにおい。


それらが教えてくれる現実が受け入れろと圧力をかけてくる。


それはまあいい。


正直()()()()のことならば、受け入れることにそれほどの抵抗感はなかったことだろう。


どこかに連れてこられた程度のことなのだから。


しかし…


「…これは…どういうことなのかな…。」


湖の湖面、水鏡に映った現実を受け入れることにはやはり時間が掛かる。


そこにあったのは愛らしい女の子の姿。


それもどこか見覚えのある。


頬を軽く引っ張れば、程よく伸びぷにぷにと触り心地がいい。


自分が笑みを浮かべれば、水面の可愛らしい女の子の顔がそのように映る。


そのまま立ち上がると、やはりその様子が映っていた。


ご丁寧に魔法少女衣装までしっかりと身に纏っている。


「…ま…マジか…。」


何度この言葉を口にしたことだろう。


「…でもいい加減受け入れないとなんだよね…。」


よし!と手を打つと、周りを確認してみることにする。


湖、草、木…紫色の謎キノコ…。


「うん…特になし…。」


誰もいないから、話ができる訳でもない。


もしかしたらと思い、ウインドウを開いて見ようと思うもやはりそんなものは開きはしない。


「…せめてアイテムボックスがあれば…。」


すると、小さな次元の裂け目のようなものが開いた。


「わっ…。」


確か画面からの景色からでも同じように見えていた。


恐る恐る手を入れ込む。


「ポーション。」


すると、何かが手に収まった。


ゆっくりとそれを取り出すと、手には瓶に入った青色の液体が取り出された。


そして、次元の裂け目は閉じられる。


「…ふむ…なるほど…。」


なにがなるほどなのかはわからないが、何度かそれを繰り返すとアイテムボックスが使えることに確信が持てた。


真っ先に外套を取り出すとそれを羽織る。


これで街に行っても安心。


「きっとあっちかな?」


流れのままにそちらへと歩き出そうとしたその時…。


「誰か助けてっ!!」


反対側から叫び声が聞こえてきた。



リゼットは近くの街ミミングに住む薬師の少女である。


数年前に父親を失い、残された幼い妹のリルと二人慎ましく暮らしていた。


今回は近くのユミルの森へとポーションなどの素材となる薬草を集めに来ていた。


普段魔物が現れることがない森のすぐ入ったところで、それを集めていたのだが、あまりにも収穫が少なかったことに困っていた。


どうやらその様子が伝わってしまったのだろう。


すると、リルがいいことを思いついたと奥へと走り出してしまった。


「お姉ちゃん、ないならもっと奥に行こう!」


「リルっ!」


咎める声も聞こえてはいるはずなのだが、止まることなく奥へと進んでいくリル。


リゼットは焦って追い掛ける。


すると、姉がついてきたのを確認し、さらにスピードをあげるリル。


リルは姉であるリゼットをさらに引き離す。


リルは姉であるリゼットよりかなり運動神経がいいのだ。


森の深くへと進んでいく。


奥へ進めば進むほどに明かりが失われ、恐怖の象徴たる闇が深くなっていけば、その脚も竦むなりしたのだろう。


しかし、森の明るさはまるで変わらなかった。


リゼットもそんな本能からの恐れがなかったためだろう。


いつしかリルのおふざけに仕方がないといつものような気持ちに変わっていた。


程なくしてリルが足を止めた。


怒った様子なく、リルをぎゅっと抱きしめる。


「捕まえた!」


「きゃ〜あははっ。」


「もう!ダメでしょ、リル!」


「ごめんなさ〜い。」


そんなやりとりが可笑しくて笑い合ってしまう二人。


「でも見てよ、ほら!」


リルの声にようやくたどり着いた場所に気がついたリゼット。


「わぁ…すごい。」


そこは薬草の群生地。


普通の草のようにそれらは誰の手にも触れられずに残っていた。


ふふ〜ん!と胸を張るリル。


リゼットは優しく微笑むとリルの頭にそっと手を乗せた。


「お手柄ね、リル。」


「どんなもんだ!」


「ふふっ、なにそれ。」


「知らない。でもどこかで聞いた。」


「ふふっ。」「あははっ。」


楽しげな雰囲気で薬草の採取は行われた。


しばらく薬草の採取を行っていると、あっという間に日が暮れ始めた。


籠一杯にそれらが集まったので、そろそろと思いリルに声をかけようとしたその時…。


小柄な人影が棍棒をリル目掛けて振り下ろされるのを確認した。


「リルっ!!」


振り向いたことで当たりが逸れたのだろう。


その攻撃の犠牲となったのは数本の髪。


粗い木の肌にでも引っかかったのだろう。


「痛っ!」


毛が抜けたためか少し痛みが走った。


でもそれが良かった。


何事かあったのだとわかり、姉の方に駆け出した。


「お姉ちゃんっ!!」


リゼットもリルに駆け寄るとリルを自分の方へと引き寄せ、相手がゴブリンだとわかり、リル目掛けた棍棒を薬草の入った籠で殴りつけた。


「きゃ!」


「グギャ!」


棍棒が手から離れ、飛ばされた。


すると、棍棒の飛ばされた方向からも同じような声が聞こえた。


「グギャ!?」


痛い。


なんとなくそんな意味に取れた。


リゼットはまさかと思い、恐怖した。


すると、ニタニタと笑ったそれと、怒りに震えたそれが他の方向からも現れた。


リゼットとリルがいたのは、薬草の群生地の中心。


囲まれてしまった。


恐怖に震えるリルを抱きしめる。


リゼットは一縷の望みを込めて叫んだ。


「誰か助けてっ!!」


まず来たのは怒りに震えたゴブリン。


リゼットは叫ぶ。


「助けて〜っ!!」


声が枯れるのではないかと思うほど力任せに。


「誰か、誰か〜〜っ!!」


棍棒が振り下ろされる。


どうにかリルだけでも己の身を盾にしたその時。


「グギャ!」


振り下ろされたはずの衝撃…痛みは襲って来なかった。


なぜ?


恐る恐る顔を上げると、自分たちの周りを覆うように透明な壁が展開されていた。


「…一体…なにが…。」


「お姉ちゃん。」


リルと顔を合わせると、この壁を作り出した存在が慌てたように声を上げた。


「大丈夫か!」


鈴の鳴るような可愛らしい声。


現れたのは…似つかわしくない大きな外套纏まった自分より少し幼そうな女の子だった。




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