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神のバケノカワ  作者: とさか
1.別世界に招待
8/8

7.星空

「なぁ、こんな山奥にビルを建てるか? 普通に考えておかしいだろ」

キャップがついた黒い帽子を被ってる気良は、車の窓の外を見ながら言った。

気良は、白と黒の制服を着ている。


私達は、この車の小さいロビーにいる。

「元々はホテルだったけど、バブル崩壊で会社が倒産したらしいよ」

と、三ツ矢サイダーの缶ジュースを飲んでいる凪が、答えた。

白と赤い制服を着ている凪の赤い目は、窓に反射していた。


この車は、軽トラックより二周り大きい。

私達は、この車の小さいロビーにいる。

操縦室へ繋がっている、右側の黄色いスライド式の自動ドアが開いた。

ドアから入ってきたのは60代くらいの老人。

整った髪は白く、髭が生えている。

黒いスーツ姿と金色の腕時計を身につけていて、執事のような雰囲気をまとっていたサポートの、ジャネが言った。

「皆さん、先程ライア指揮官が廃ビルを襲撃した4体の「クイーン ミュータント」を討伐されたと報告がありました」

「え〜、それじゃあ私達の仕事がなくなったじゃん」

と、凪のパートナーの香美が言う。

香美の髪型はミディアムで、白と緑の制服を着ている。


「なんで、指揮官がそこにいるんだ?」

「ジャネ、それは本当か?」

気良と、彼のパートナーの夏尾はジャネに質問をする。

夏尾は白、黄色の制服。

夏尾の髪は、天井のライトで金髪に光っている。

「もぅ、ライア指揮官のことになったら…」

と、香美があきれた。

「気良、夏尾、話している途中です。前にも注意しましたよね?」

ジャネは二人を黙らせる。

ジャネはサポート役でもありながら、この二人の師匠でもある。

二人を黙らせられるのは、ジャネとライア指揮官しかいない。


「二人とも学習しろよ」

凪が呟いた。

「あぁ? なんだ凪?」

「やるのか⁉」

「黙りなさい」

ジャネがもう一度、黙らせる。

確かに学習能力がない。


「ライア指揮官は『自分ではなく、違う人がクイーン ミュータントを倒した』と。

そして、クイーン ミュータントを倒した人をライア指揮官は、我々のチームへ所属する手続きをすましているらしいのですが、『あなた達の意見を確認したい』と」


「その人は、『ミュータント討伐 アタッカー』に所属している人なの?」

「いえ、一般人だとライア指揮官は言ってました」

「「「「・・・え?」」」」


数秒間だけ固まった。

ミュータントは、チェスの駒の価値で階級を表す。

弱い順にポーン、ナイト、ビショップ、ルーク、クイーン、キングで表せられる。

「クイーン」がザナを使うと、戦車300台くらいの威力がある。

私達が知っている人であれば、ジャネとライア指揮官ならクイーン ミュータントを討伐が出来るかもしれないが・・・。


「…その人は、ライア指揮官の知り合いなんですか? 手続きを済ましてる、と言ってたましたが」

凪が質問する。

「そこまでは聞いてないですが、多分…」

「俺もライア指揮官と知り合いだったらな〜。・・・俺はその人をこのチームに入れても構いはしないよ」

夏尾は天井のライトを見上げながら言った。

「明那はどう思う? 入れるか、入れないか」

気良は、私に話しかけた。

「その人はクイーン ミュータントを倒した人なんでしょう。

仕事が楽になると思うから、入れても良いと思う」

私は、ガムで風船をつくりながら言った。

私の制服は白、青色だ。

「じゃあ、僕も入れて良いと思う」

「明那先輩と気良先輩が言うなら」

「俺も」

気良、香美、凪が言った。

全員一致だ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ふぅ〜、終わった、終わった。

ミュータントの死骸は、炎に焼かれて灰が残った。空は、青く輝いていたのが薄い橙色に染まっていた。

「世刄」

地上から、声が聞こえた。

声がした方向を見るとライアが木にもたれて座っていた。


「どうしましたか?」

僕は、地上に降りた。

「仕事の同僚に連絡した。車で迎えに来るらしいから、道路付近で待っとこう」

ライアはゆっくりと立ち上がった。

仕事の同僚?神様ですか?

「いや、人間だ。ついてこい」


どうやら、ライアが道案内してくれるらしい。


「僕の戦いはどうでしたか?」

「ん? あぁ、良かった」

え〜、それだけですか?

「戦いに何を求めているんだよ? そういえば、性格が戻っているな」

「多重人格障害です」

知っている、とライアは言った。

「あ、そういえば『ザナ』は、神様しか使えないんですか?」

僕は、空を見上げた。橙色の空の反対側は、薄黒い空の中に、光る粒があった。

「いや、神の肉体を持つ者は、ザナと魔法が必ず使える」

「人間とか、神の肉体を持たない生物は?」


「人間とミュータ以外の生物は、ザナが使えない。人間だと、二人に一人がザナを扱える。

魔法は、極稀に扱えない人も生まれてくる」


「ミュータとは?」

「ミュータントの省略。いちいち、ミュータントと言うのは疲れるだろう?」

ふ〜ん。

「・・・気が変わった」

「ん? どうしたんですか、いきなり?」

ライアは歩きながらこう言った。


「世刄、私の仕事の、右腕になってくれ」

「・・・右腕?」

「私の仕事。神様の」

「いやいや、僕は子供ですよ」

「神様の世界では、子供でも働ける」

「いやいや、何でアナタの右腕にならないといけないんですか?」

「・・・実は、私達はある緊急事態に直面している」

「…ハァ〜。それはどんな?」


「2年前、神の肉体を持つミュータの出現が確認された。

捕獲したミュータは、神の存在を知っていた。

そして、ココが重要。

1万体のミュータが、一ヶ月後、私達に戦いを仕掛けよとしている。もはや、私達の負けが確定している」


僕は草を踏みながら、最後の言葉を理解するのに数秒間かかった。

ま、負けが確定⁉

「神が一万体もいるんだ。私達は今、1000人しかいない」

「神様は不老不死じゃないんですか?」

「不死ではない」


・・・嘘ですよね?

「嘘じゃないんだ。

それで、観察者は神の存在を知っている人間か、ミュータを探しているんだ」


観察者は、そういう仕事なのね。

でも、神様たちの中に裏切り者がいるかもしれませんよ。


「逆にいないと、いけない。

生命体を神の肉体に構築するには、神の承認を得ないと肉体が構築されない。君は、私の承認を得て、神の肉体に構築されただろう」

なるほど。


「そして、3ヶ月前に『タルタロス』(神の牢獄)を扱える、種族「ミカザ」が消えた。」

ライアは落ち着きながら言った。


僕は、タルタロスの名前を聞いて、僕は「負け戦」と思った。


「タルタロスって…ギリシャ神話で神を無力化する、地獄の牢獄ですか?」

「そうだ。だが、その神はタルタロスを使う代償として、知能を低くしてある。こんな大規模な計画は、アイツらには到底出来ないはず。だから・・・人間も協力しているはずだ」

「それは、勝手に決めつけてるだけじゃないですか?」

「あくまで、その可能性があるという話だ。

『ミカザ』達は、ここの世界の出入り口を通ったのが確認された。ミュータ、あるいは人間と、計画を練っているんだろう」


…マジですか?


「マジだ。もし・・・私達が負けたら全宇宙、全世界が乗っ取られる」

「それで?」

「…君の戦闘を見て何故か思ったんだ。世刄、君には戦に参戦してほしい」

「・・・ハァー⁉」

ちょっと、僕は桜綺を生きかえらせるために…。

「言いたいことは、私にも分かる。

今の発言は、身勝手だ。ただ・・・君が参戦すると多分、上手く事が進むと感じている」

「何故?」

「それは・・・」

「ん? どうしたんですか?」

「あ、いや・・・何でもない」

「?」

「とりあえず・・・戦いに参戦するか、考えてくれるだけでも嬉しい」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ただ・・・君が参戦すると多分、上手く事が進むと感じている」

「何故?」

「それは」


ここで、私は息が詰まる。

「ん? どうしたんですか?」

「あ、いや・・・何でもない」

「?」

「とりあえず・・・戦いに参戦するか、考えてくれるだけでも嬉しい」


そして、黒く染まった星空を見上げて思った


…嘘をついて申し訳ないな、世刄。

君には・・・死んでほしい。

だけど、これは優しさだ。

なぜなら、君がゲームをクリアしたとしても・・・彼女(桜綺)に会えないから。


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