5.神の爆誕
「っえ!」
廃ビルが傾いたと同時に、僕は本能で階段の手すりを掴んだ。
上から、ごみ、コンクリートやガラスの破片が落ちてきた。
周りは、大量のホコリが舞い、コンクリートにヒビが入る。
「まったく、これだからミュータントは…」
隣に、手すりを掴んでるライアが、何か言っている。
「ど、どうなってるんですか!」
ガン、ゴォン、と何かが当たる音が爆音のなかで、ビルに反響した。
「祭りの合図だよ」
「どこが!」
「世刄、ザナは使えるな」
「ザナってなんですか⁉」
って、なんで急に「世刄」って呼んだの⁉
「あ〜もぅ、世刄のせいで教えるのを忘れたじゃないか〜。」
「何で僕のせい⁉」
「仕方がない。今から世刄の肉体を、神の肉体に構築する。気持ち悪くなるが、我慢しろ」
「ハァ⁉」
ライアは僕の頭に手を乗せた。
と、同時にライアの動き、漂うホコリ、爆音、匂い、手すりを掴んでる触感。
僕の・・・体内に、ドロドロしたものが混ざった感覚がした。
目には、ライアの動きがスローモーションになった…り、色が真っ黒に…変わったり、匂いは・・いい匂いと納豆くさい。
海から聞こえる、波の音・・・無音……フサフサな毛を触って…る。
どう言えばいいか…分からないが、感じたことがある感覚と、気持ち悪い感覚に…分裂される。
すると、何かに手招きされたかのように、どこかに吸い込まれた。
僕がいたのは真っ白な空間だった。
『∞☬ξΔ₡∴₱・・・』
その真っ白の空間に、立体で謎の文字が、僕を囲んだ。
すると、脳に自分の声が響いた。
『ザナを強化、進化(別のザナになる)させる:《絶創可虚》』
『相手を解析して、適応変化する :《幻核解宮》』
『死んだ、降参した生物のザナをコピーする:《輪魂印祖》』
『宇宙と世界の真理、情報を書きかえる :《獨情煌館》』
なんだ?…これが、ザナなのか…?
「おい世刄、大丈夫か?」
ライアの声で、謎の空間に吐き出された。
その瞬間、僕は神になった。
「おい世刄、大丈夫か?」
目の前の世刄は数十秒間、放心状態だった。
「っえ…あ、はい」
お、意識が戻った。
ん?
世刄の右目が橙色、左目が青緑色に変わっていた。
肉体を構築した時に、目の色が変化したのかな?
「何が起きてるんですか?」
世刄は手すりを掴んだ状態で質問してきた。
さっきより、廃ビルは傾いている。
「ミュータントが来たらしい」
「ミュータント?」
「肉体が変異した生物をミュータントっていうの」
「何でミュータントは、このビルを壊しに来たんですか?」
「壊したんじゃない。私達を食おうとしてるんだ」
「へぇ〜、そうなんですね」
あれ? さっきより、落ち着いてる。
「世刄、妙に落ち着いてない?」
「あ〜、そうですね。どうしたんでしょう?」
どうしたんでしょうって…。
「戦えるか?」
「僕が? ミュータントと?」
「そう。ザナを使って。発動の仕方、分かる?」
「ハイ。…まぁ、良いですよ。戦っても」
・・・え? 絶対に拒否するかと思ったのに。
まさか、多重人格の症状で、人格が入れ替わったのかな?
いや、それはないか?
「あ、ライア」
「へ?」
「ミュータントって…殺しても良いの?」
「あぁ、勿論、殺しても良い…え?」
コロシテモイイノ? マジで人格が変わったの⁉
「お?」
ビルが急に傾いた。
ビキビキと、大きな音が聞こえる。
どうやら崩壊しているらしい。
「世刄、ワープして地上に移動するから、手を掴ま…っえ?」
「《獨情煌館》」
世刄が唱えると、周りの階段、壁、空き缶、ガラスの破片が消えて、綺麗な青色の空が広がっていた。
今日の20時に次話をだします。