4.廃ビルと爆発音
「えっと、ここは…どこですか?」
「廃ビルの119階。誰かに見られたら、面倒だからね」
僕が転送された場所の周りは、ポテトチップスの袋、ポッキーの箱が散乱していた。
床と柱はコンクリートむき出しで、正面の鉄の扉が錆びてある、25畳くらいの部屋だった。
あれ?
ここって別世界なのに、前世にあったお菓子の袋も、文字も同じだ。
「マルチバースのようなものだ。
ここの世界は、君がいた世界と同じ文字、地形、動物、文明も、ほぼ変わらない」
「マルチバースって、世界がいくつもある説のことですか?
「そう。よく知ってるね」
「趣味で、物理とか天体のことを読んでいたんです」
「ニートのくせに、趣味がガリ勉とは…」
「ニートで悪かったですね。…ゲームはまだ、始まっていませんよね?」
「当たり前だ。彼女をここに連れて来るには、時間がかかる。最低、3〜4年」
「そんなに⁉」
「そういうもんなんだ」
ライアは鉄の扉を開けて、長い通路に進んでいった。
ライアについてくる。
通路は薄暗く、窓から白い光が差し込んでいるのが、よく見えた。
「どこに行くんんですか?」
「人間として、仕事をしている場所だ」
「何でそこに行かないといけないんですか?」
「・・・それがゲームの鍵になる」
ん〜、そう言われたら行くしかないか。
で、なんで人間として仕事をしてるの? 正体を隠して。
「(さっきから、質問にしか答えてない)
・・・上から許可をもらわないと、正体は明かせないんだ。私は、この星の5人の観察者の内の一人」
上? 神様に上下関係ってあるんだ?
「観察者ってなんですか?」
僕は、薄暗いコンクリートの階段を降りながら質問をした。
僕たちの足音が、階段に反射して響く。
「・・・この世界の状況を調べる、神様の仕事の一つだ。
簡単に言ったら、神様が人間界に送り込んだスパイ、かな。
君もその一人。
つまり、君は私の後輩だよ」
「…ガチですか?」
「ガチです」
「…嘘だ」
「嘘じゃない」
「そんな〜」
「なんだよ、その反応」
「殺そうとした人が、僕の先輩になるなんて…」
「まだ、恨みをもっているのか。意外と根に持つね」
「そりゃあ、そうですよ」
「まぁまぁ、神様の仕事はあとで・・・」
…ん?
途中で会話が切れて、ライアは階段で立ち止まり沈黙していた。
どうしたんですか?
「…面倒なことが起きたな」
「へ?どういう…」
「ドォオオン!」
と質問すると同時に、爆発音と共に廃ビルが傾いた。
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