3.ゲーム説明
「え?」
ゲーム?
「そう。君の夢、願いを実現させるゲームだ。
言っただろう。
『君の夢を実現してください』と彼女に頼まれた、と」
「じゃあ、ゲームとか別に言わなくても…‼」
「甘ったれんな」
僕は、静かな声に、重い言葉に黙ってしまった。
「…隠れんぼに近いゲームだ。
ゲームの内容は、時間内に那谷絵 桜綺を見つける。
君は、ある世界の星に転送する。その星のどこかに、彼女がいる。
制限時間は一年間。
もし見つけることができたら、彼女と幸せに暮らせる。
見つけられなかったら、君の魂を…破壊する。
生まれ変わることもできず、彼女にも一生、会えなくなる。
…そのゲームに参加するか?」
…高校生の時、夏休みに桜綺と一緒に、僕の家で勉強しているときの会話を思い出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『世刄、幸せになるにはどうすれば良いの?』
隣に座る桜綺が、急に話しかけてきた。
『ん? なに、急に』
『この物理の宿題を優しい誰かがやってくれたら、私はめっちゃ幸せ。」
『…で?』
『だからさ〜、お願いがあるんだけど〜』
『君の宿題はやらない』
『え−そんな−』
『棒読み』
『いいもん! 世刄、嫌い!』
『え! ちょっと! わ、わかったから、ごめんって』
『もぅ、冗談だよ』
『んだよ…ビックリした。本当に、嫌いになったと思ったよ』
『世刄って、空気も読めないし、冗談が通じないね。喋る日本語も変だし』
『・・・子供の時、人と喋る機会が少なかったからね。コミュニケーション能力が低いんだ』
『でも…冗談が通じないところも、私は好きだよ。世刄の焦る様子が、何度も見れるし』
『…それ、褒めてるの、慰めてるの?』
『どっちでもな〜い』
そう言って笑う、彼女の笑みは僕の太陽だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そうだった。
普通の日常は、命と同じくらい価値があると、桜綺が教えてくれたんだ。
桜綺のおかげで、救われたんだ。
「…そのゲームに参加する。クリアしてみせる!」
「覚悟が…決まったか」
少女は、笑みを浮かべた。
「あの、いくつか質問を、してもいいですか?」
「ん?なんだい?」
「アナタの名前は?」
「私の名前…か。ライアと呼べ」
「はい。あと、僕は別世界で過ごさないといけないんですか?」
「そうだよ。わたしと一緒に」
「・・・分かりました」
「どうしたんだ?ため息をついて?」
「ライアさんが、怖いから…」
「何で?」
「僕を殺そうとしたでしょう」
「まぁ、確かに…」
「それと僕、虐待のトラウマで、多重人格障害にかかっているんです」
「・・・え?」
どうしたんだ、こいつ?
まったく関係のない、話しをしているんだが・・・?
コミニュケーション能力が低いから、こんなズレた話をするのだろうか?
「…そうだ、ゲームを早くクリアする方法を知りたいか?」
「勿論、知りたいです」
「私の近くにいる」
「・・・」
「嫌そうな顔をするな。まったく。それでは、行こうか」
「え、急に⁉」
世刄の声と同時に、周りの景色が変わった。
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