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第六章 少女の王国 30
チャプター30 予定外の客(後ろで見ているよ)
「決めた。今日夏希の家遊びに行くわ」
「え」
「いいねそれ。行こう」
五時間目の体育。体育館から渡り廊下を辿る道すがら頭上を見上げ呟いた。乗っかる向日葵に「ね。一度見てみたいわ」と言い、肯定とも否定とも取れない表情でぽかんと見上げている夏希の頭をよしよしと撫でた。
「はあ。いいけど。大変じゃないの? 二人とも家逆」
「いいのよ。気まぐれ。あなたの言うそのブサイクな猫をひと目見たいだけだから」
「かわいいよ?」
「どっちなのよ」
「人から言われるのはなんかやだー」
顔を夏希から上げると向日葵と目が合った。向日葵も「お」というような顔をしている。言われっぱなし、自分たちにされるがままだった夏希が、少し、ほんの少しだけでも言い返してきたことに驚いているのだ。
「じゃあ実際行って確かめないとね」
そう言ってもう一度夏希の頭を撫でた。夏希は「わあわあ」言いながら擽ったそうにしている。




