努々忘れることなかれ
このまま続きを始める前に語らねばならない事件がある。
うむそうだ。例の如く忘れていた。すっぽ抜けていた。すっかり忘れていた。
印象にはしっかり残っていたんだが。如何せん、俺の小学校時代は波乱ばかりだったからなあ。中学校時代はまあまあ平和。高校時代なんて無風も無風。小学校時代は……雨風なんてまだまだマシな方、地震雷大雪嵐、台風津波。これが定期的にやって来る。
そんな小学校時代。
はあ。
戻りたくなかった……改めて。いやマジで。
さて。
切り替えていこう切り替えていこう。なんたって現象だからな。諦めよう受け入れよう。
というわけでまず始めの事件。
大事の前の小事。
侮っちゃいけない見くびっちゃいけない軽んじてはいけないもちろん忘れてはいけない。
頭では分かっちゃいるんだが……。みんな小学校時代の記憶なんて薄っすらとしか覚えていないだろ? ひとつひとつ印象に残る出来事は覚えていても、それがどうして起こったか、時系列的にはどっちが前でどっちが後で――なんていちいち覚えてる奴いるのかね?
まあ、いいさ。語ろう。そして、思い出そう。
一つ目。バレンタインに纏わるお話だ。
時系列的には俺が四年生に上がる前。まだ松司が一緒にいた三年生低学年の二月だな。
あのすぐ後で。
前哨戦とでも言おうか。
伏線、切っ掛け、或いはカウントダウン。
これがなけりゃ全ては起きなかった。
そう、全てだ。
今回の一連の出来事全部だ。
転校生争奪戦争……、あんな馬鹿げたお遊びの延長だったらどれだけマシだったか……。
――そう、それはこんな一言から始まった。
時計を戻そう。そして、もう一度後悔しようよ。2
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