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プロローグ
数日前。目が覚めるとそこは草原にそびえ立つ木の下で、本能的に私の知らない世界だと感じた。荷物は何もなかった。
ただ、私の側には一羽の真っ白な小鳥の姿が。見た瞬間に、それが白文鳥だと理解した。
ぼんやりと白文鳥を眺めていると、
「なに寝ぼけとんねん。さっさと起きろって。」
鳥が人間の言語を話している。私の知識では、鳥が言葉を発するとは考えられなかったため、更に思考が停止した。
「今、君が喋ったの?」
「そうやけどなんやねん。喋ってたらあかんのか。」
「…。不思議だなあと思って。」
半分諦めつつ、鳥との会話を試みる。
「私はカナエって言うんだけど、君の名前は?」
「俺の名前はブン太って言うんや。よろしくな。あんたは何でこんなとこにおるんや?」
「…。自分の名前以外、私のことは何にも覚えてないの。ここがどこで、何のためにここにいるのか。全く分からないの。私の中の常識が通用しないあたり、私がいた世界観とは違うみたいだって言うことは感覚的にわかるんだ。」
「難儀なことになってるなあ。」