姉のせいで婚約破棄されました。外面がいい腹違いの姉に馬鹿にされ続けた人生でした。そばかすだっていいじゃない、くるくる天パーで何が悪いんですか?見かけがすべてのバカ姉に復讐した方法とは?
「あら、スズメの巣が何かいってますわあ」
「……スズメの巣じゃありません!」
「あらじゃあ、ぶつぶつお化けっていったらいいでしょうかねえ」
「……違いますわ!」
「あらああ。不細工が何か吠えてますわ」
私は目の前に姉を睨みつけました。
小さいころからずっとこうでした。人目のないところでいつもからかうのです。
人がいるところではお優しい姉を演じ、私と二人きりになるというやって私のことをいじめます。
「あら、どうしてこんなぶつぶつがお顔にあるのですかね!」
「いた、痛い!」
「あらぶつぶつさんが吠えてますわ」
クスクスと笑う姉、いつもいつも私のほほを引っ張って、汚いものを触ったわとハンケチで手をふくのです。
五歳上の姉は、私が小さい時からこうでした。
「あーあ、どうしてこんな不細工が私の下にできたのかしらあ、あの不細工なお義母様……」
「お母さまの悪口はやめてください!」
「あらまあ、不細工が吠えますわ」
クスクスクス、顔はとてもきれいですが、内面はクズの姉、私と姉母は違い、母は後妻でした。
だけど、顔が不細工といいますが、普通です。そばかすがあるのは私だけ、母は髪がふわふわとした金髪です。
かわいらしいと皆にいわれる顔立ちをしています。
私はそばかすのくるくる天然パー、どうも父に似たようです。
姉は前妻によく似ていて、長い金の髪、青い瞳の美女でした。
前妻は浮気がばれて、離婚され、そして父は見かけだけいいのはこりごりだといって王宮の侍女であった母と再婚したのです。
しかし公爵の父、前妻も侯爵、なのに後妻が男爵とはといつも言われます。
姉も母のことを慕っているようにみせかけてはいますが、いつも悪口を言っています。
でも絶対に両親の前では本性を出しません。
「あーあ、あんたの母親みたいなのがお母さまになるなんて、あんな不細工が!」
「……お母さまの悪口を言わないでください! お父様やお母さまに!」
「あんたみたいな出来損ないのいうこと誰が信じるというの?」
うふふと嬉しそうに姉がその美しい顔をゆがめて笑います。
確かにお母さまは前妻の娘である姉に遠慮をして、何も言えてません。それに慕う演技をするお姉さまのことを優しい人だと思っています。
そんなお母さまに姉の本性がこれだとはとても言えません。
父にも言えません……。
「……うふふ、あはは、しかしあんたみたいなチビが妹だなんて悲劇だわ」
「え?」
「あれの姉だなんて言われるたびにほんといやになりますわ」
絶対前妻さんもこんな性格悪だったとおもいます。お父様は言いませんけど……。
私はきっと姉を睨みつけました。するとますます不細工ねえと扇で私の頭をたたいてきました。
「痛い、痛い!」
「もうほえないでね、そして早くお前と離れたいわ、こんな不細工しかいない館なんて絶対にいたくないですわ」
根性悪の姉は今十七、もうすぐすると結婚適齢期、確かにもうどこかにいってほしいと私も思っていました。
毎日毎日、二人きりになるとこれが待っていました。
なるべくなら二人きりになりたくないと思っても同じ館内にいますし、姉は私より悪知恵にたけていました。
「なんですってえ! どうしてこの子が王太子殿下の婚約者に!」
「落ち着け、リーデル。アデリシアのほうが年のころが王太子殿下と比べたらちょうどいいのだ」
「……信じられませんわ!」
王太子殿下の婚約者に私が選ばれ、姉が激高しました。王太子殿下は十四、私が十二、姉が十七、確かに私のほうが年のころはつりあいます。
だけど国一番の美姫といわれた姉のほうに縁談が来ると誰もが思っておりました。
私の見掛けはこれですし、魔法力も姉と比べたら劣ります。
「……撤回できませんのね」
「ああお前にもふさわしい縁談が来ている。王弟殿下だ、御年25歳、ちょうど……」
「わかりましたわ」
ぎりぎりと歯を食いしばる姉、とても怖いです。お父様に見えないようにしていますが、こちらを強い目で睨んでいました。
「……わかりましたわ」
とても嫌な予感はしたんです。でもさすがに家にかかわることですから、あのような手段にでるとはとても思ってはいませんでした……。
「アデリシア・リファエル。お前との婚約を破棄する!」
「え?」
「姉のリーデル、そしてその母のことを中傷し、姉であるリーデルをいじめた罪により、婚約を破棄し、お前を追放する!」
王太子殿下が婚約から一年後、私に高らかにこう言い渡したのです。
姉がにこやかに笑いながら、王太子殿下の横におりました。
「私はお姉さまのことをいじめてなんかおりませんわ!」
「姉のリーデルをあばずれ、その母のことも中傷したと聞いている!」
「そんなことは言っていません!」
やられたと思いました、王弟殿下との婚約を受けた姉が王宮に出入りするのは知っていましたが、まさか年下に言い寄るとは……。
にっこりと姉が笑い、証拠はあるの、あなたは追放、妹だからそれですますのよと言います。
私は衛兵に両手を取られて引きずられます。
言い訳と思われているようですが、本当にそんなことは言ってません!
だけど私の言葉は殿下には届かず、私は辺境に追放されることとなったのです。
「……まだ子供だというのに悪知恵が回ることだ」
「好きでこんなになったのではありません」
私は王宮でお茶を飲みながら、目の前の青年に笑いかけました。
「あいつに報復をというお前の願いを聞いてやったが、しかし……」
私はお茶を飲み干し、そしてどうしたってあの人は自分の顔が世界で一番美しいと思っているのですと答えます。
ならそれを失えばどうなるか?
「自死しないように一応見張ってはいるが」
「あと半年もたてば元に戻りますし、さすがに死なれたら寝覚めも悪いですし、お父様も悲しまれますので」
「そうだな」
クスクスと愉快げに笑う青年、しかしあの間抜けな王太子殿下のおじさまが性格がここまで悪いとは思いませんでしたわ。
王弟殿下を見て私はどうやって姉のあの本性を見抜いたのかきになってましたが、この人ならすぐわかったでしょうねなんて思ってしまいました。
「しかし、美顔薬なんてよく顔につけるもんだな、何がはいっているか分かったものではないかとおもうが」
「お姉さまは美しいお顔を保つためならなんでもしますの、巷で有名な美顔薬が手に入ったなどといわれたら、絶対つけたくなるのはわかってましたから」
私は王弟殿下が姉との婚約を破棄したのを聞いて、こっそりと辺境から彼に手紙を出しました。すると姉の本性がわかっていたという彼は私のことを聞いて、報復に手を貸すといってくれたのです。
「半年もすればなおるのか?」
「ええ今はお顔が真っ赤になってますけど、普通にしていれば治ります。余計なことをさせないようにしてください」
「優しいなお前は」
「優しくなんてないです。さすがにお父様が悲しまれることは避けたいだけです」
「そうか」
クスクスと笑う王弟殿下、姉の色仕掛けで陛下も王太子殿下も陥落されたことは知っていたようで、どうも姉みたいなのを妻にできない、さすがにお灸をすえないとと思ったそうです。
しかし美顔薬なんて怪しいもの顔につけて、よく一晩寝られるものです。
こっそり私が配合した薬を顔につけて寝るお姉さまを想像しては笑えたものです。
起きたお姉さまはびっくり、顔が真っ赤になり、吹き出物でかゆいかゆいとなったそうです。
でも普通にしていれば治りますし、その顔を見た陛下と王太子殿下も愛想をつかしたようです。
お顔一枚でいつもえらそうにしていたお姉さまにはいい気味ですわ。
「……私はお前を婚約者にしたいのだが、その知恵は捨てがたい」
「年上は趣味ではありませんの」
「そうか」
私は辺境から呼び戻され王弟殿下とお茶を飲んでいます。そばかすを直そうと薬の研究をしていたことが役に立つなんてね。
私はお姉さまのお顔が早く治りますようにとお祈りしてさしあげました。お父様のために……ね。
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