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第7-4話 精霊の謎パワーとミスリル銀でランクアップ(前編)

 

 翌朝……。


「シェフ、本日の朝肥料を頂けないでしょうか……」


 ぐうぅ……


「ふああぁい~」


 スドオンンッ!


 伝説の精霊、アルラウネとの出会いから一夜明け、みんなの朝食を作る私の横で、”ダメージ床伍式・アイナカスタム”を装備したアイナが、爆炎と轟音を響かせている。


 アルラウネから「シェフ」と崇められ、懐かれてしまったアイナは、その黄金の右でアルラウネの朝食……朝肥料を作っているところだ。


「わふぅぅ~”犬耳元気腹ペコ最強ダメージ床拳士メイド”だけでも属性が多いのに、”爆炎肥料生産メイド”とか、オンリーワン過ぎてあり得ないですぅ……出来ればカールさんに美味しい食事を作りたいのに……」


 よよよ、と嘆きながらも、彼女の莫大な魔力とダメージ床伍式から生成される青白い爆炎は、数匹の魚とイノシシを立派な?炭に変え……。


「くはあっ!? こ、この焼き上がり加減と、ほのかに感じる硝酸とマグネシウムの香り……シェフ、素晴らしいです……うっとり」


 出来上がった炭をパクリとひとくちで頬張るなり、頬を染め、すりすりとアイナに頬ずりしながら、とろんとした表情を浮かべるアルラウネ。


「はうぅ、でもアルラウネちゃんかわいいですぅ」


 まんざらでもなさそうなアイナ。


 嬉しそうに頭を振るアルラウネのツインテールがざわざわと揺れ、足元の地面からぶわりと沢山の草が生え、七色の花を咲かせる。


 ”森と大地の精霊”というのは、本当のようだ。


「にはは……アルラウネは女神の使い。 だいちとしょくぶつをつかさどっているぞ」

「みすりる鉱山をつくるには、これ以上ない味方だな!」


「それにしても、アルラウネまで手懐づけるなんて、ししょー、アイナ! ほんとにちーとだな!!」


 朝食の匂いにつられて起きてきたサーラが、ドヤ顔で告げる。


 やはり、精霊が人間の仲間になるとかありえない事だったのか……ここに来てから、驚く事ばかりだ。

 だが、カイナー地方の事を考えると悪くないどころか、役に立つことも多いだろう。


 私は、昨日聞いたアルラウネの能力を思い出し、彼女に協力してもらって何をするか、プランを組み始めていた。



 ***  ***


「よし。 アイナ、サーラ、坑道の掘削は昨日話した手順で行こう。 準備を頼む」


「了解ですっ! カールさん!」


「にはは、わらわはいつでもいいぞ」


 朝食を堪能した後、私たちはミスリル銀の鉱脈が眠っていると教えられた岩盤がある場所に移動してきていた。


「……兄さん! 参式も準備完了です」


 目の前の岩盤に、半径5~6メートルほどの円形にダメージ床参式のチェーンを設置し終えたフリード。


 いくら土木工事用の参式とはいえ、ミスリル銀の鉱脈がある硬い岩盤を砕くのは時間がかかる。

 そこで、私が考えた案は……。


「サーラ、とびきり熱い奴を頼む!」


「うむ、任せるがよい!」


 ブオオオオオッッ!


 私の合図に、サーラはそのギザギザ歯が並んだ口を大きく開けると、灼熱のファイヤーブレスを吐き出す!


「わわっ! 熱っ! 相変わらずすごい威力だよね」


 岩盤からの距離を十分に取っていなかったフリードがあわてて飛びのく。


 ゴオオオオオオオッ


 周囲に飛び散らないよう、慎重に調整されたファイヤーブレスは、一直線に岩盤に伸びると、その表面を赤熱させていく。


「……そろそろいいか、次! アイナ!」


「はい、カールさん! とりゃああああああっ!!」


 ズドォオンン!


 私の合図に合わせ、サーラがファイヤーブレスを止めると同時に、”ダメージ床伍式・アイナカスタム”を装備したアイナが、岩盤から少し離れた位置を流れる川の水面をぶっ叩く!


 ドドドドッ!


 発生した大量の水しぶきは、狙いたがわず赤熱した岩盤に降り注ぎ、大量の水蒸気を発生させた。


「……今だ! 発動! ”ダメージ床参式”!!」


 もうもうと立ち込める水蒸気の中、タイミングを計った私はダメージ床の発動術式を起動する。

 その瞬間……。


 バッキイイイイイインッ!


 甲高い轟音とともに、円形に岩盤が割れ、深さ10メートルほどの穴が開く。


「うおおおおおおっ!? カールさん、凄いですっ! あんなに硬い岩盤が一瞬でっ!?」


 劇的な効果に、アイナが驚いている。


「ふむ、成功だな……サーラのファイヤーブレスで岩盤を熱し、冷水で一気に冷やすことで岩盤を脆くする。 そこを参式で砕くというわけだ」


「普通に参式で掘っていくより、10倍以上の効率が出るだろう」


「さすがカールさんですっ! 技術力の勝利ですねっ!」


 ふふ……ぐっ! とガッツポーズをとるアイナを見て、思わず私もドヤ顔ポーズを取ってしまう。


 と、その時アイナの周りをふよふよと飛んでいたアルラウネが、何やら思案顔をしてたった今掘った穴の目の前にやってくる。


「う~ん、少し非効率……わたし、大地と森の精霊なので」


 ぱああああっ


 ドゴオンッ!


「……はぁ!?」


 アルラウネが穴に向けて手をかざし、なにかの魔力を込めたと思った瞬間、派手な音とともに穴の奥の岩盤に大きなひびが入る。


「うん、これでよし。 さっきのダメージ床?で掘って貰えば、より速く掘れるよ!」


「ええええっ!? アイナの拳は不要じゃないですかっ!?」


「……わらわのブレス……」


 いきなりチートスキルを使う大地の精霊に、ふたりの抗議の声が響き渡ったのだった。


 ……だが、アルラウネは燃費が悪いのか、スキルを使うとすぐお腹がすいてしまうので……私たちは両者を併用しつつ、夕方までには坑道を掘り終えることが出来た。


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