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第5-1話 ダメージ床整備領主とサラマンダー

 

 1週間の休暇、フィールドワークを兼ねたキャンプ旅行に出発した私たち。

 探検隊ごっこをしていたら炎の化身……サラマンダーが封じられた遺跡を掘り当ててしまい……目を覚ましたサラマンダーと対決することになる。


 起死回生の秘策として、試作中の”ダメージ床伍式”を使い、アイナの世界レベルの一撃で奴を倒したと安心したのもつかの間……。


 光の中から現れたのはひとりの女の子だった。



 ふん! と腕を組みながら圧倒的ドヤ顔で仁王立ちしている少女。


 年の頃は10歳前後だろうか……炎のように真っ赤な長髪に、チロチロと実際に炎を吹き出しているように見える尻尾……。


 薄緑でノースリーブのシャツを着ている涼しげな上半身とは対照的に、少し丈が長いスカートにタイツとしっかり着込んだ下半身。


 ちんまりとした体躯に似つかわしくない自信満々の光を放つ真っ赤な瞳と、犬歯が発達した口元が妙な迫力を醸し出していた。


挿絵(By みてみん)



「わふぅ……なにこの子?」


「かわいいけど……獣人族にこんな種族はいなかったような……尻尾とか燃えてるし」


「兄さん、まさか……」


「ああ、たぶんそうだろうな……」


 思いあたる点があったのか、フリードが話しかけてくる。


 私も同じことを考えていた……伝説の聖獣の中には、人間形態をとれる個体がいるとも聞く……サラマンダーもその一体とすれば……。


「もしかして、サラマンダーの人間形態?」



「にはは、良く分かったな人間!」


「わらわは魔軍界のそうへきとうたわれた伝説のせいじゅう、しゃらまんだーよ!」


「長きねむりのはてに、力がふそくしておったのでな、ていねんぴな人間形態をとることにした!」



 私の言葉を聞きつけたのか、ビシッとこちらに指を突き付けると聞いても無いことを自信満々に説明するサラマンダー。


 喋っている内容は勇ましいが、愛くるしい声と舌ったらずな口調との違和感が凄い。

 しかも自分の名前で噛んだぞ。


「おお、そうだそこの犬耳娘! 先ほどのパンチは効いたぞ……きにいった!」

「”ししょー”って呼んでいいか?」


「ふええええ!? こ、これはカールさんの”ダメージ床”のお陰だしっ」

「ア、アイナはカールさんのメイドなのでっ!」


「なるほど、そちらの男が犬耳娘のしゅじんなのだな!」


 いきなり妙なことを言うサラマンダーに慌てたのか、私に振ってくるアイナ。

 む、アイナの奴、対処を押し付けたな?


 私がこの群れ?のボスと判断したのか、私に向き直るサラマンダー。


「きにいったぞにんげん! おまえがわらわの”ししょー”だな! ちょーど退屈してたところ……」

「ついていくからよろしくな!」


「えぇ……」


 こうして一風変わった伝説の聖獣の化身が、無理やり私たちの仲間に加わったのだった。



 ***  ***


「わああ! 似合ってるよサーラちゃん! あ、でも、尻尾を出す穴を空けとかないと、お洋服が燃えちゃうね」


「うむ! たのむぞメイド長! ……おお、動きやすい! 良いなこのメイド服というものは!」


 どうしてこうなった……ここはカイナー村の私の屋敷。


 私を主人?として認めたのか、ついてきたサラマンダー……サーラは紆余曲折の末、私の屋敷のメイドの一人として働くことになった。


 アイナの後輩になるので、彼女はアイナの事を”メイド長”と呼んでいる。


 妹のような後輩ができてうれしいのか、アイナもまんざらではなさそうだ。



「ししょー! きさまの”ダメージ床”とやら、なかなか面白いな!」


「わらわは”大戦”で魔軍の双璧と呼ばれていたが……なるほどこれはくせんするわけだ。 にははははは!」


「わらわは、とちゅうで戦争やる気がなくなってここで寝ていたがな……あんしんしていいぞ、もう魔軍にきょうりょくする気はない!」


「せっかくなんで、ししょーのもとでゆっくりさせてもらうぞ!」



 ……なにが伝説の聖獣だ……ほんの100年前、帝国を襲った魔軍の重鎮じゃないか……。


 確かに我がバウマン家の文献にも、猛威を振るった赤いドラゴンの事と、奴が途中で忽然と姿を消したことが書かれていた。


 まさかそいつが私のメイドとなるとは……人生とはわからないモノである。


 もしかして、人類の未来のためにも飼いならしておいた方がいいのか?


 彼女がこちらに好意的なのが幸いだが……のんびり領主生活の中、一つの頭痛の種が生まれたことに対して、私はそっとため息をつくのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 鉄の巨人を素手で倒しそうな白髪でチャイナ服の男「アイナよ、溢れる力に流されるのではなく、気持ちを鎮め明鏡止水の境地にいたるのだ。」 の拳が・・・の師匠といえば、王ハートのあの人かなと思って
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