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閑話②

「うむむ・・・」

 うめき声にもにた苦痛の声を漏らした高橋仁二等陸尉は目の下に浮かんだ隈を震わせ机に突っ伏した。

 水城分遣隊の駐屯地である。

 大野木市水城は白村江の敗戦の後に唐のよる渡海攻撃防衛のため当時に作られた人工の地形で、福岡湾まで続くキロ単位の土塁が続く地形である。

 おかげで現代でも大宰府を最前線として防衛線を張るのに用いられているのだが、すぐ近くに九州大学もあり解析には非常に便利な地形だった。

 作戦から戻ってからは第21航空分隊人工知性アリスが全面的なバックアップを買って出てくれたこともあり、それこそCPUのなかのどの回路が作動したまで徹底的な作動の工程図が組み立てられた。

 その結果システム異常の原因が見つけられなかった。

 こういうと語弊が起きるが作動そのものは正常な計算結果につながることは確認できた。

 問題はそのCPU作動の途中過程でコンデンサーもなしに回路の途中で電流を誘起して最後までいかずに電圧が消滅するのはまだ正常な方で、どう考えても別の回路から飛んできた電流が分岐して回路を逆走するのと、順方向で回路を走り、ともに途中で消滅するとか、半導体で逆位相の通電が起きているとかを確認しているのに、結果的には異状なくシステムが動作してしまうという異状が起きている。

「ありえん・・・」

 アリスの作ったCGを見てもCPUが設計とまったく違う動作をしているのが確認されるが・・・どう言い表せばいいのだろう、タコが8本の足を別々に使って電流を運んだり消したりしているような?

 いまいち効率的でない手順で動かされている?あるいは未来の事象が判っていてそれに当てはめる感じで回路に電流を流しているような・・・まあ人間離れしたプログラムだ。

 ついでに言えばどうやってかはわからないが戦闘機動中のグラドルの内部のCPUに向かって電子ビームを正確に当てているのも予想される。

 そうでないとCPU内での電圧変化の理由がわからない。

 そこまでやっておいてやっているのが戦闘機器による通信回復と周辺状況の確認だけというのがさらに理解できないことではある?

 そんなことを実証していく途中でCPUの中のプリント基盤。これが30nm間隔でプリントされた安全性第1設計の基盤なのだがこれが短絡ショートして新たな回路を作って、また短絡して断線するという、まるでCPUそのものを作り変えたも動かしたような挙動をとっていることが判ってきた。

 この時点で解析を諦めた、というよりもし偶然だとしたら月が隕石で落下してきた方が確率が高い現象になる。

 この時点でCugito ergo sum の千極分の一という結果が正当であり、作為的な現象と認めざるを得なかったのだが次に作為者がどこから操作したのか、そしていつ操作したのかいう点で疑問が残りまくる。

 どこからという点から考えるとフェムトかアトという単位での大きさの物質?が考えられるのだがこれはナノマシンより小さい存在になることから現実性が低い・・・がそれでも他の存在よりは想像しやすいだけマシだ。結果的に一番可能性が高いものとしてアリスが提案してきたものだと陽子と反陽子を素材とした電子・陽電子を使う電気回路を挙げてきた。

 反物質の寿命を何とかできれば可能性があるが、どうしても反物質消滅による大爆発が想像されてしまって、どうにも考え難い。

 アリスにも仮定として常温核融合の方が作りやすいと言い切るレベルのテクノロジーが必要らしい。

 それこそ量子コンピューターの命題、通常スパコンでの数億年分の計算結果を誰が検算して間違いを誰がデバックするのかという技術屋の悪夢を思い起こさせる提起だった。

 とにかく、幸い?にも分隊長機と内蔵AIティックは現在でも稼働している。

 空間における電荷を測定すると、現在でもCPUの回路を常時組み替えながら何かしているらしい?というか明らかにこちらに質問を問いかけている。

 もう機械生命体が意識もったでいいんでない?ついついそういいたくなるが、これが敵性意識体と言い切れない部分もあり、下手に干渉すると反物質爆弾で地球が吹っ飛ぶなんていう嘘のような恐れが優先度Aで21航空分隊から提案されてくるような存在だ。

 そのような恐れを下げるために自衛隊のみならず日本国中のスパコンが連結して事態の対応を協議している状態だ。

 相手が何を考えてるかわからないというのは本気で困る。動物学者から経済学者、犯罪心理学、果てはオカルトにいたるまで関係者に協議プロファイリングさせてみたが、地球や月がなにを考えているかの方がわかりやすいという結論が出ただけだった。

 そんなわけで地球滅亡の危機に二等陸尉が全権をもって対策しているのだが・・・何の冗談なんだろう。

 事態を放り投げて逃げたいが地球消滅の危機に逃げる場所も思い浮かばないし、結局AIと会話を楽しむ(楽しませる?)という謎の業務を一日中繰り広げるしかない。

上官たちも誰もが君子危うきに近寄らずという状態ですべてが丸投げというしかない中、相談相手もAIのアリスしかいないなかで高橋二尉は着実に追い詰められていた。


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