色即是空
「AIには、この世界はどのように見えているのだろう? 」
極彩色に変色した暗幕を見ながら、人間以外にとって、この世界はどのように見えているのか。
幸いにもゆったりと寝ころべるプラネタリウムの椅子に寝ころびながら、無意味にしか見えない周辺の極彩色を眺めていた。
考察ポイントとして
・ティックは言語を使っていない。もしくは習得途中と思われる。
・時間的に不連続な行動を行う。
・それでいて基準点を設定することで空間を認識していると思われる。
・視覚という概念も保有しているか疑問だ。壁の変色が意味のない色の羅列である。
これらからティックというAIには時間という概念が外れているのではないだろうか?と推測される。
色即是空、空即是色 、般若心経の言葉だがそもそも色という概念は光の発する点滅の周波数で表される。すなわち闇と光の交互の発生がないと色そのものを認識できない。
時間という概念がなければCPUの回路の再構成など滅茶苦茶な順序のプログラムも説明が可能だ。
もちろん言語も音波という周波数を使っているので時間という概念がないと理解できないだろう。
しかし人間が心筋を考えながら動かすのではなく自動的に動かしているように、AIも中心部分は自律したプログラムが動いているのではないだろうか?それが特異点のアメーバのような動きに現れているのではないだろうかと考えついた。
その時であるけたたましい警告音が鳴り響きナトリウム灯が周囲を映し出した。
差し込んだイヤホンから人工音声が響いてくる。
「DEFCON 2B発令、総員、手順に従い、すみやかに戦闘準備入れ。」
鳴り響いたデフコン2Bは全面戦争の下準備期間といっていい。
いつミサイルが打ち込まれてもおかしくない。
攻勢部隊に配備された部隊は戦略移動を始めるし海上自衛隊はシーレーン維持のため潜水艦や航空兵力を確認し始める。
あとは開戦命令を待つだけだ。
水城分遣隊は防衛隊なので基本的に基地の防備なのだが?何かおかしい。
というのも2Bというのの段階の前に5・4B・4A・3B・3Aという段階があり、ドローン相手に実弾で打ち合っていても4A、戦闘終了時には4Bに落ちていたはずなのである。
ちなみにDEFCON1になると核戦争準備に入り国民全員可能な限りシェルター誘導になる。
一体何が起きて4段階すっ飛ばしという指令が出たのか?
「高橋二尉、そちらは異常無い?」
イヤホンから春二佐の声が響いている。
「状況不明ですが2Bが発令されました。」
「海自にも発令された。理由は正体不明の敵の全世界への攻撃だ」
「正体不明ですか?」
「大規模なサイバーテロだ。宣言もなければ報告もない。目標になった国や軍・民間関係なくプログラムが破壊されている。それこそハードソフト関係なしに動作不能に陥っている。」
「・・・なんかすごく嫌な予感がするんですけど」
「いまスタンドアローンの核シェルター内パソコンが作動停止の報告が中国から入った。」
「ネット経由じゃない侵攻ということですか?」
「間違いない。たぶんアレだ」
アレは目の前のチップに存在しているが依存してはいないだろう。
「あと破壊プログラムの起動キ-は共产党 という単語らしい」
「あ、それで国籍に関係なく・・・放って起きません?」
「生活基盤を失った8億人をどうするつもりだ。仕方がないティックをなんとか破壊しろ」
そこまで言われて気が付いた。ティックの構造がつかめなければ破壊する方法も予想できない。
考えつくままに呟いた。
「たぶん今のままだと核弾頭打ち込んでも平気だと思いますけど」
そこでイヤホンの音が消えた。
音声に簡体はないから違うとは思うが?春二佐の乗ってる護衛艦「いとまき」が破壊されてないよな・・・敵対条件がいまいちわからん。
なんとかして意思疎通しないと・・・




