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第106話 前日祭

 収穫祭とは、毎年秋にジェルバンスで行われるお祭りの名称だ。

 昔から収穫時期になると、来年も豊作を願う為に村人たちが神様へと祈りを捧げたのが始まりだが、徐々にその形式が変わって行き今では王国の発展と平和を祝う祭りになっている。

 そして今日は、その収穫祭の前日祭と言う日である。


 元々は、収穫祭に王国外からやって来る者や、出店する者たちの歓迎祭と言うものだったらしいが、こちらも収穫祭同様にお祭り騒ぎとなり、今では2日間連続でお祭り騒ぎをすると言うもになったらしい。

 この2日間は、ジェルバンスは大勢の人であふれ、様々や出店や行事が各所で行われるので学院生たちもこの2日間はほとんどが外出する。

 そして私も今外出しており、待ち合わせ場所であるジェルバンス内でも有名な噴水前にいる。


 いや~想像以上の人混みだ……私の場所分かるかな、あいつら?

 私は、ルークの奢りと言う事でトウマと3人で外出する事になっていたが、トウマは先に外出しておりルークは後から合流と言う事で、私は1人で先に集合場所に到着し2人を待っているのだ。

 久しぶりに制服以外の男性用の服を着たので、初めは少し違和感があったが、今じゃその違和感もなくなった。


 にしても、少し服装がボーイッシュ過ぎたか? と言うか、最近こう言う服装にも慣れて来た。

 なんせ半年以上も男物の制服を着ているのだから、この程度の服は着こなすのもたやすい! ……私よ、少し冷静になれ。

 最近思考がおかしくなってるぞ。

 私は女の子なんだから、さすがにその考えはまずいだろ。

 と、私は1人相手を待つ時間で、両腕を組んで自問自答をしていた。

 そして私は、噴水前でトウマとルークの到着を待ちつつ、行き交う人たちを見つめていると、噴水の時計台から10時の鐘の音が響く。


 10時か、確か待ち合わせ時刻は10時過ぎだったはずだけど、まだあいつらの姿すら見えないな……はぁ~こんだけ人がいれば目的の場所に着くのも一苦労だろう。

 私は2人が来ても分かる様な場所で、座れそうな所見つけて、そこに腰かけた。

 とりあえず私は、気長に2人を待つことにした。

 そこで、ふとある事に気付く。


 そう言えば、ルークが王の子としての意識を持ったし、私がルークの鼻を折ってそれを自覚させる必要もないのでは?

 と言うか、現時点で私の役目はもうないんじゃないのかな?

 私がこの学院へ転入して来た目的を、既に達成しているのではないかと思った。

 しかもそれは私が直接何かをしたのではなく、ルーク自身がそう言う風になりつつあったので、今更私がやる事はないのではと考えていた。

 と言う事はもしかして私、もうこの学院に居る必要がないから、元の生活に戻されるんじゃ……

 私は急にこの生活が出来なくなると考えると、「それは嫌だな」と無意識に声が出ていた。


「何が嫌なんだ?」

「え? あ、トウマ」

「よっ、少し遅くなった。待ったか?」

「まぁ、少しな」


 そう返すと、トウマは「悪い、悪い」と言って周囲を見回した。


「それで言い出した当の本人の姿がないが、まさかまだ来てないとかか?」

「大当たり~」


 するとトウマはため息をつき、両腕を組んで座る私の隣に立って文句を言い出す。


「全くルークの奴、約束の時間も守れないとはダメだな~親友と言っても信頼関係と言うのがあるだろ」

「まぁ、この人混みだし少し遅れるって事もあるだろう。トウマもそこに立ってないで、こっちに座れば」

「っ……お、おう」


 私が隣を手でポンポンと叩いて教えると、何故かトウマは、少し緊張した感じで私の隣に座った。

 その後、人混みの騒ぎと近くの噴水の音を耳にしながらルークを待っていると、そこにモランの親友であるシルマとミュルテが通りかかる。


「あっ、クリスじゃん」

「あら、本当。クリス、久しぶり。私たちの事覚えてる?」

「あぁもちろんだ。シルマにミュルテだろ、今日はモランは一緒じゃないのか?」


 するとシルマが片手を腰に当てて、答える。


「それがよ、モランの奴今日あん……」


 そこでミュルテがシルマの口を突然と塞ぎ、変わり話し始める。


「もうシルマちゃんたら、何言ってるの? これからモランに会うんでしょ」

「おいミュルテ、何すんだよ」


 シルマがミュルテに向かい怒った口調で振り向くと、急に2人は私たちに背を向けてこそこそと話し始めた。


「これはチャンスだよ、シルマちゃん。ここにクリスが居るって事は、このまま足止めさせれば」

「おっ! なるほど。そう言う事か。それを早く言えよミュルテ」


 2人はこそこそ話が終わったのか、直ぐに私たちの方を振り向きたわいもない話を振ってくる。

 私はトウマの事を紹介したり、2人の問いかけに答えてた。

 ルークをただ待つのも、飽き始めていた所だったので2人との会話はちょうど良かった。


「なるほどね。トウマとは同室で、今日はルークと3人で飯を食いに行くのか」

「そうそう。なのにルーク奴が、まだ来てないんだよ」

「おうおう、それは男としてあるまじき行為だな」

「そう思うだろ?」


 何故かトウマとシルマの会話が盛り上がり始め、私とミュルテはそれを笑顔で見守り続けた。


「あっいたいた。こんな所にいたの2人共。人が多くて遅れちゃってごめん」


 そう言って息を切らした状態のモランがやって来て、着くなり両ひざに両手を付いて俯いていた。


「おっ! いいタイミングに来たなモラン」

「へ?」


 シルマの言葉にモランが息を整えながら顔を上げ、私の存在に気付くと物凄く驚いた顔をした。


「ななな、なん、何でここにクリスがいるの?」

「いや、たまたまルークとの待ち合わせ場所で、シルマとミュルテに会って話してたんだよ」

「あれ? モランじゃん。久しぶり、俺の事覚えてる?」

「ルーク様? そう言えば、来る途中で見たような……」

「本当!?」

「あれ? おーい、俺の声聞こえてる? もしかして、聞こえてて無視とかそう言う感じ? 辛いな~それが一番辛いな~」


 モランが、完全にトウマの事が視界に入っていないと気付いたシルマがそっと肩を叩き、少しかわいそうな表情でゆっくりと首を振った。

 それの動作で全てを悟ったトウマは、ゆっくりと瞳を閉じそのまま天を見上げた。


「(え? 何してるのシルマちゃん……それに、トウマも……ん~まぁ、いっか。放っておいた方がいい感じだねこれは)」


 ミュルテがそっと2人から目線を外して、モランの方に向けた。


「それで、どこにルークは居たんだ?」

「え~と……確か出店通りだったかな」

「それだと、もうそろそろ来るか」

「え? ルーク様と待ち合わせしてるの?」

「あぁ。そうだけど、どうして?」


 私がモランの問いかけに答えると、モランの口から思ってもいない言葉が帰って来た。


「だってルーク様、エリス先輩と一緒に歩いてどこかに向かってたから、てっきり2人で出かけているのかと思ったんだけど」

「はぁー!?」

本作品にご興味をお持ちいただきありがとうございます。

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