お茶菓子会議その①
「対転生者迎撃連合会兼冒険家支援団体」
通称、冒険家ギルド。
国家承認の転生者に対抗できる組織の一つである。
日々冒険家の管理や転生者の抹殺に勤しんでいる。
転生者がどこから湧いて出てきているのかは不明ではあるが、ある学者に言わせると時空の歪みから来ているらしい。詳しい話はよく知らないが。
ギルドには役職ももちろんあり、
主に受付嬢と受付嬢補佐がいる。
と言っても上司と部下の関係ではないのだが。
(年の差での関係はあるが)
受付嬢も受付嬢補佐もともに専門学校出身でちゃんと国家公認魔法の取得もして卒業している。
つまり、どちらも地位的には一緒なのだ。
強いて違うと言えば受付嬢が補佐達をまとめ
1つの町を役所と連携しギルドをおさめている。
ここ(帝都南地区支部)フィスト課のギルドでは
私が一応受付嬢として補佐達4人を仕切っているが
私が受付嬢となったのもジャンケンで負けたからだ。
なぜニホン文化のジャンケンで負けて受付嬢をしないといけないんだ、腕相撲なら勝っていたのに…。
そして、ギルドではほぼ女性が働いていることもギルドの特徴とも言えるだろう。
魔法の性質上、女性の方が習得しやすいとか、ギルドは接客だから女性のほうが万人受けがいいとか…。
まぁ、そんな理由が定かではないが上や世論がそう言っているのだから多分そうなんだろう。知らんけど。
冒険家ギルドは一家に一台とまではいかないが
大体町に一つある程度でそれぞれギルドの役割も多少変わってくる。私が所属しているフィスト課は冒険家の
輩出が主な仕事で転生者の始末などは帝都や他のギルドにほとんど任せっきりなのだが…。
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あの後、チームを集め円卓会議をすることになり、私は必要な書類やマスターへの連絡などを済ませ、先に円卓会議の準備をさせていた仲間たちがいる会議室へと足を運ぶ。
「珍しいですよね、転生者がこの町に来るなんて」
アンナが机の上の出しっぱなしの書類やホッチキスなどの小物を整理しつつ仲間たちに話しかけていた。
「そうだねぇ…まぁ、ありえない話じゃないよ」
その隣で同じように机の上を整理していたマティルがその話題に乗る。
「そうですネ、来てしまった以上仕方ないですヨ」
フェルディアは皆の椅子を並べながら落胆したような声でそれに答える。
「えぇー…エレナやる気でなーい!」
エレナは回転式の私の椅子の上で回りながらぶつくさと文句をたれている。お前も働け。
「はいはい、みんな円卓会議始めるから、エレナ早く私の椅子返してくれない?他の皆も準備でき次第席について」
エレナを抱え椅子から降ろさせ、自分も着席する。
それに続くようにそれぞれ持ち場の椅子に座る。
「それでは今から転生者の始末及び…」
作戦について…と私が言葉を続くのを遮りエレナが話しかけてくる。
「もーいいよー!そんな固っ苦しいの!どうせ作戦についての円卓会議を始める!…みたいな事言うんでしょー?」
続きの言葉をそっくり言われてしまった。
「そうですヨ、そんなにかしこまらなくても良いじゃないですカ」
それに続いてフェルディアも抗議する。
「じゃあ私、お菓子と飲み物持ってきますね」
そこにアンナがすかさず茶菓子の流れを作る。
「あ!エレナ、ジュースがいい!」
「アタシはニホン茶!」
「わかりました、ではすこし待っててくださいね」
次々と仲間たちが勝手に行動し始める。
「ちょ、ちょっと待ておまえら!いいか?こう言うのはな…しっかりやらないと…!」
「とか言ってカテリーナさんもしっかりするのは
初めだけじゃないですカ?」
「ウッ…!」
図星をつかれてしまった。
確かに私もズボラな性格ではあるが…。
「し、しかし…もしマスターが抜き打ちで来て、こんなのが見られたら怒られるのは私なんだぞ!?」
「いいじゃない、抜き打ちで来たらその時はその時さ」
全く…こいつらはどうしていっつもこうなんだ…。
「カテリーナさん、…飲み物どうしますか?」
「…じゃあミルクティーでお願い」
まぁ…ほら、別に私だって堅苦しく行きたくないし…。
こいつらが良いって言うから…ね…?
「結局カテちんも甘々なんだから!」
「…効率的に会議をすすめるためだ」
見苦しい言い訳なのは私が一番わかっていた。