幕間0(これまでの歴史)
この世界は遥か昔、とてもとても遥か昔
ある種族達によって支配されていた。
特徴はその種族により多種多様だったがその種族を統べる王が確かに存在していたのだ。ある古い論文によると、『人に似て非なるものであり、頭部からは1本から3本の単数または複数の突起物があり、鋭利な八重歯と爪、背骨の下の末端から生えている先が尖った尻尾』
などと書かれていた。
その後、その種族達から独立するように進化を遂げたのが人であると一般的には言われている。
そして、その種族達と言うのは魔獣であり、その頂点に君臨する者こそが『魔王』と呼ばれていた。
ちなみに、魔物は大抵の場合魔王の親戚や魔王直々の家臣である場合が多く、魔獣の中では魔物は貴族と同等、またはそれ以上の扱いを受けていた。
そんなこんなでここ、数十年前までは魔王率いる魔獣達と独立した人間達との平和なやり取りが続いていた。
確かに数十年前までは平和だったのだが…。
「魔族」と「人間」には暗黙のルールがあり
そのルールというのは『他の領土に入ることなかれ』
と言い伝えられている…というか今も続いている。
早い話違う国家の領地に入ったやつはどの種族は身分に関係なく始末されてしまうのだ。
そして数十年前ピクニックに来ていた魔族の家族が
人間の領地に入ったとして家族のうち妹(後の魔王となり今なお魔王の座に君臨している)以外の父、母、兄を
その場にいた警備団の人間の兵士達に処刑された事件をきっかけに魔族と人間との抗争が始まった。
元々家族が処刑された一帯は国の境界線が曖昧で
その警備団の兵士達と言うのも国家承認ではなく近辺の村の男たちが集まった自警団のようなものであった。
しかも始末されたのが魔物のチンピラとはわけが違う。
そしてそのいざこざは戦争までに発展した。
やれ領地に入っただの、いやあそこは魔族の領地だの
今まで曖昧にしていた課題や問題があの事件により浮き彫りになってしまい、人類と魔族の中では規模が最大でありどちらにとっても初めての全面戦争となった。
戦況は終盤まで魔族軍が押していた。
魔族や魔物には生まれつき魔力なるもの(人間の精神力のようなもの)が強く、今でいう魔法などが簡単に使えたのが魔族が有利な点として1つ挙げられた。
魔物達も例外ではなかった。
口から火を吐く者、空を飛べる者…実に多くの戦況や
戦場において人間よりも有利に戦っていた。
人間はそれに対抗すべく武器や防具の生産性や有効性など数多の画期的発明されまた、擬似的ではあるが
魔法学を人間独自で初めその頃から冒険家などやそれを支援するギルド、役所などの基礎となる組合が設立されはしたが、やはり戦場では魔族や魔物達には遠く及ばず人間は以前変わらず苦戦を強いられた。
そこで、元の国王や叡智の結晶とも言える賢者たちが秘密裏に集まり当時でも禁忌に等しかった闇属性の黒魔術、『転生者召喚』が断行された。
転生者召喚…というのは
『別世界線の化け物級の猛者を召喚する』というような脳筋にも程があるようなチートであった。
実際この召喚で成功はしたものの犠牲者が続出し、それに比例するかのようにエゲツない奴が召喚された。
そのエゲツない奴…初代転生者と言うのは
蛙の子は蛙というか…チート魔術の結果はチートと言えばいいか。
いわば無双と呼ばれるもので、一度見た魔法や火を見ただけで全火属性魔法を覚えるようなチートさで
魔族軍との一つの戦いを半日終わらすようようなチートのような存在が現れたのだ
そいつの名前は「ケンシロウ」
この世界線には存在しないニホンという名からやってきた一般男性だった。
不思議なことに初代転生者はなんの能力も持たない
いわゆる我々と同じ人だったのだ。
しかし、本人曰く、「普通の高校生だった俺がこうして転生できたのも女神のおかげ」らしい。
なんでもケンシロウは普通の学生でありながら
不幸な交通事故に会い、その後目が覚めると女神とやらの目の前に立っていたという。
つまり転生者というのは『女神の加護を受けた状態での人間』ということになる。
そして、紆余曲折を経て、この世界に転生したと同時に様々なチート能力を授かった。
この転生者召喚の成功は世界に衝撃をあたえた。
転生者は私達で言うところの未来を生きているらしく
恩恵は凄まじい程で転生者が転生して今日に至るまで
多大なる科学、医療の発展、発明の発展に貢献され、
文化などはかなり変わった。例えば学校などが
ニホンと同じ制度になり学科に日本語、漢字など教科も追加された(地名のニホンは名残でカタカナになった)
ある転生者は「景色や魔法以外は現代のニホンと遜色ない」と驚いたほど。
しかし、転生が良いことばかりではなかった。
最初の方こそケンタロウは英雄視はされはしたが
人々の心はしだいに尊敬から恐怖に変わった。
元々この世界の人々は魔物達にに対してさほど
危機感を持ってはいなかったのだ。
「我々とは存在が違うもの」として広く認識され
魔物を深く探ろうとする者は少なかった。
そんな時に始まった全面戦争と転生者の介入
人々の目には「よく知らない魔物達が訳のわからない転生者とかいうやつに蹂躙されてる、次は我々の番ではないのか」と。
この懸念は群衆に次第と根も葉もない噂と一緒に広がっていき人々はケンシロウの味方でありながらも恐怖の対象として彼を敬い、そして恐れた。
そして、それに呼応するかの様にまた、彼…ケンタロウ自身も力に溺れ、この世界を支配せんとした。
いつの間にか人間と魔物たちの戦争は
転生者対人間と魔物たちの戦争になっていった。
魔物との戦いに20年。初代転生者に10年。その歳月を経て、今では30年戦争として知られることになる。
結果としては人間と魔物たちの勝利に終わったが
人間や魔物たちの方もただでは済むはずもなく
あまりにも多くの人や魔物たちを犠牲にした。
それ以降魔物たちとの大きな対立もなくなったが
前述したように初代転生者…。つまりその後も
この30年戦争以降から今日に至るまで
転生者と呼ばれるものは数多くこの世界にやって来た。
魔族や人類は初代の時と同じ過ちを繰り返さないために
協力して転生者達を始末…つまり殺られる前に殺る作戦を大体的に宣言した。
その翌年から転生者を始末するために設立されたのが「対転生者迎撃連合会兼冒険家支援団体」通称「冒険家ギルド」や「国家治安維持隊」通称「役所」と呼ばれる組織が形成され現代では国家の中核を担うほどに大きな存在となっている。