表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険家ギルドへようこそ!  作者: 片栗キノコ
冒険家ギルドへようこそ!
2/41

プロローグ 2 ようこそ、冒険家ギルドへ。

「帰っていったか…。」


私はモヤシ男が出入り口から出たのを受付窓口から

しっかり確認する。

はぁ、と心の中で一仕事終えた達成感と脱力感を

感じながらも残っている仕事に取り掛かろうとする。


「(この張り紙は読めなくも…ないよな?いや、しかし…ここは受付嬢として見やすく私が書き直すか?でもそれはそれで面倒だなぁ…)」


受付嬢としては皆に見てもらいやすいように貼り紙を書き直すのが最善なのだろうが私はそれを渋った。

面倒な事はやらない主義なのだ。

そして私は受付嬢として書き直すのか、面倒な事はやらない私を受け入れそのまま掲示板に張り出すかポクポク熟考した結果…。


私はめんどくさがりの私を受け入れた。


「とりあえず…あそこの掲示板に…」


決めたことを行動に移すことだけは早かった私は

目線を受付窓口を隔てた向かいの掲示板へと向ける。


「ベスト・モーション…!(ここにあれ)」


そう呟くと落とし物依頼の張り紙がひとりでに動き

掲示板へと一直線に貼られに行く。


「この位置でいいか…」


そして、掲示板へとピッタリひっついた張り紙は

元々あった紙を固定する留め具の針を紙に刺した。


ベスト・モーション(ここにあれ)は、

私が編み出したオリジナル魔法だ。

この世界には魔法と呼ばれるものがある。

魔法には火、水、木、雷、闇、無、と6つの属性があり

そのどれもがそれぞれの特徴をしている。

闇と無以外はどれも読んで字のごとく、

それらを操ることが出来る。

例えば火属性ならば火を出すことが出来る。

もちろん初級から上級まで難しさはあるが。

そして、火と雷は水に弱く、

水は木に弱く、木は火と雷に弱いとそれぞれ属性にも

得意、不得意があったりもする。

闇と無は例外で、闇は魔法の中ではトップクラスで禁忌に指定されており、特定の人物や職業にしか扱えない。

理由は明白、闇は人を殺めるだけの魔法だからだ。

無はそのどれにも属さない魔法である。

例えば私のオリジナル魔法のベスト・モーションや

遠くの人と通信が出来る魔法、筋力増加などの

人にメリットを与えるものなどは無属性が多い。


「ふぅ…やっぱり疲れるなぁ…」


だが、魔法も決して万能ではない。

私のベスト・モーションも離れた物体を自在に動かせる効果があるが、自分の筋力より重いものは持てないし、

実際に物体を動かした分の体力は削られ

自分の視界に入り自分から半径5mの物限定となる。

しかも集中力をすごく使う。

例えるならスプーンに乗せたピンポン玉を落とさずに

持ち運ぶような感覚に近い気がする。

なので、魔法と言うのは決して万能ではないのだ。


「(ちゃんと魔法学勉強しといて良かった)」


実のところ魔法を使える人はとても少ない。

魔法学とはこの世界での学校の教科と思ってほしい。

学校では週に3度ほど魔法学と言ういわば無属性の魔法に関しての知識や歴史そして実技などを兼ね備えた教科である。

しかし、この魔法学、非常に難しいのが現状で、

魔法陣や魔法理論、魔法のシステムなどの知識や

これまでの魔法の経緯などの歴史をいかに理解しようと

実技となると完全に感覚の域で、

出来ない生徒や才能の無い生徒が大半である。

もし、仮に出来たとしてもほんのちょっぴりしか出来ないまま学校を卒業する。

しかも教えられるのは無属性のみ。

その理由としては6つの属性の中で最も簡単でかつ一番攻撃能力が無いからだ。

魔法にはそれぞれ資格と免許を取る必要があり

3年間その属性の専門学校に入学し、無事卒業した者だけがその属性魔法の初級程度の物を扱える。

つまり、確かな才能と果てしない努力の果にやっと

一つの属性魔法の初歩が使えるようになるのだ。

なので一般人がおいそれと使えるような代物ではない。

もし、誰もが火属性の魔法を使えるとしたら

今頃この世界は一面焼け野原になっていたことだろう。

つまり、私のベスト・モーションも努力の末に成り立っているので習得しようと思えば誰かは出来るのだ。


「(じゃなきゃ受付嬢やってねぇわな)」


そう、受付嬢は腐っても国家直属の公務員なので

国家試験での魔法の習得は必須科目だ。

なので、この町以外でも他の町にある冒険家ギルドの

受付嬢達は皆全員、魔法が1つは使えるのだ。

実は私はちょっとしたすごい人だったりする。


「(今となっては時代錯誤もいいところだけどね)」


魔法が全盛期だったのは少し昔の話で、

魔法を使える者が少ないのにはもう一つ理由がある。

それは、文明の発達だ。

先程言った通り魔法と言うのは習得するのが難しく

出来たとしてもデメリットが多くあまり恩恵を感じられないのもあるが、それに加えて文明が発達してしまい

無属性の魔法なら半永久的に装置に組み込められる発明をされており、例えば通信魔法は誰でもどこでも使えるのが今の常識だ。

医学も進歩しており魔法を組み込んだ飲み薬…

通称、ポーションと呼ばれるものも一般販売されている

短時間ではあるが飲むと任意で作動する筋力が上がる

ポーションや少しだけ俊敏になるポーションなど、

様々な効果がある。もちろん、あくまでも薬の範囲なので、必要な手続きなどはいるが。

一人の天才が便利な物を発明すれば何万人もの凡人は

それでいいのだ。


「さてと…そろそろ戻らないと…。」


そうこうしてる間にもうこんな時間だ。

早く報告書を提出しないとまたマスターにどやされる。

そう思いまた、私は自分の机へと戻ろうとするが…。


「おい、ここが冒険家ギルドか?」


「(今日はお客様が多くいらっしゃるようで…!)」


私は多分無意識にメンチを切っていたと思う。

そして、私は振り向いた事を後悔することになる。

なんなら振り向かず聞こえないふりをして事務所の奥へ

引っ込むべきだったのだ。

受付嬢としてこんな面倒ごと何回も経験してはずなのに

何回も同じパターンを繰り返したはずなのに。

どうしていっつも私の所にはこいつらが来るのか…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ