役員ブルーノの困惑
「では、そのように手配しておきます」
「あぁ、よろしく頼む」
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ブルーノは意外な来客に冷や汗をかいていた。
転生者が現れてしまった。
これはブルーノにとっては2回目のことであり
2度も経験はしたくない出来事でもある。
ブルーノは溜息をつき、革靴を鳴らしながら受付カウンターの右奥へと進み突き当りのドアを開け、閑散とした廊下を歩く。
その道中どうしようだとかこうしようだとか色々な思考が頭の中を駆け巡る。
まずは先輩に…いや、ここはギルドとの連絡を…
自分のオフィスであるドアの前で立ち止まる
とりあえずは許可証の申請と…あとは転生者の書類作成が先かな。
扉を開ける。自分の席へと座った直後
ピピッー…ガッー…
FAXから紙が届く音がした。
おおかたギルドからの転生者の書類であろう。
せっかく座った座席から立ち上がりFAXへと向かう。ペラペラと軽く目を通したところやはりあの来客について書かれていた。
転生者、加藤英一。
「…いまさらだな」
しかし、これで転生者であることは確定した。
あとは…
「おぉ、ブルーノ戻ったか」
ブルーノの背中に野太い声がかけられた。
「お疲れさまです。アンドリア先輩。」
ブルーノに声をかけた男は同じく役員の先輩であるアンドリアだ。ブルートとは同じ出身で大学も同じ学科の先輩と後輩という関係だ。二人ともまだ20代後半なのだがブルーノが年相応に対しアンドリアは30代前半かそれ以上に見えるのはヘビースモーカーのせいでその持ち前のガタイの良さと無精ひげがさらに拍車をかけているからだろう。
「そちらこそお疲れさん。相手、転生者だったろ」
アンドリアがめんどくさそうな顔で整えられた灰色の髪をかきあげる。これはアンドリアの大学生の頃からの癖でなにか面倒なことが起こる時、起こりそうなときによく出てきてしまう。
「ええ、そうです。」
「こりゃまた一仕事増えるな〜」
「…そうですね」
「あれから何年も立つんだ。切り替えていこうぜ」
「手を下すのは僕達じゃありません。あくまでも受付嬢達ですよ」
ブルーノは事実を述べる
「ま、そうだけどな。俺達役員も手を下すことはあるブルーノそれはお前が一番わかってるだろ?」
ブルーノは何も喋らない
「受付嬢は殺し屋でもなんでも屋でもない。バッドトリップも使えない小娘達じゃ手に余る時、その時に俺達の出番は回ってくるんだぜ」
アンドリアは覚悟を述べる
「わかってますよ。バカにしないでください」
「ははは!その粋だ!じゃ、早速取り掛かろうか」
アンドレリアが豪快に笑う。
これがいつもの仕事が始まる合図だ。