猿の前説 その⑤
あのあと農民のおっさんに案内してもらったギルド。規模はさほど大きくもない、まさに冒険家ギルドの体をなしていた。
加藤はいかにも「入り口です」と言わんばかりの自動ドアを抜ける。
……?
「なにか…おかしいぞ…?」
それは加藤が抱いた一瞬の違和感。
違和感は一瞬だけだったが加藤の足を止めるには十分の違和感だった。
「…今、俺はどこを通った…?」
振り返る。おかしいところはどこにもない。
内装はやはりと言うべきか中世を思わせるような
レンガ造りに漆喰の白い壁柱は丸木で年季を感じられる。入り口にはいつもの自動ドア。
ギルド内を見渡す。
受付と思われる窓口、その奥には長い髪のメイド服を着たような女が愛想よく笑顔を貼り付けたまま手を振り、モヤシみたいな男を見送っている。
視線を横にずらせばそこはこのギルドから併設されたのか食堂らしき円形の机と丸太を立てて置いただけの簡素な食事スペースそこから厨房を見れば癖の強い料理人がなにか仕込みのような準備をしている
「どこも不思議はないな…」
やはり、どこもおかしなところはない。俺の勘違いだったのだろうか。
加藤は自身が覚える違和感にさほど気にしないようにした。まずやるべきことは冒険家になりさっさと勇者となってチート能力で魔王軍の殲滅してこの世界に平和を与えなければ。それが俺の使命なのだ。
モヤシ男の横を通り窓口へと向う
「おい、ここが冒険家ギルドか?」