猿の前説。その③
あのあと倦怠感と手足の謎の震えに戸惑いながら町へと歩を進めた。ようやく町らしい町を見つける頃には(そこら辺に時計などあるはずもないので)体感にして2時間ぐらいはかかったと思う。
その時にはすでに体調の方はすこぶる調子がよく
以前よりも良いほどだった。
当時の自分は倦怠感や謎の震えなどの不快感を覚えたもののそこまで気にしてなかったかのように思う。(あるいはそれさえも気づいていない可能性も)
町には典型的な中世の町並み…例えるならドイツのローテンブルクを想起させる想像以上に想像に出できた冒険家達の町だ。
赤い屋根が高く白の壁と木の柱や梁との美しいコントラスト、郊外から徐々に発展していく町並み。
住民たちの服装や小物までもがまるで本当に中世の世界だと語りかけてくるようだった。
しかし、この世界には違和感があった。
まるでさっきまであったあの不快感のように。
その原因はすぐにわかった。
忠実にありすぎているのだ。
ローテンブルクに忠実なわけではない。
ローテンブルクなんて自分も写真で見たぐらいだ。
ローテンブルクとどこか違うかなんてその写真があればいくらでも挙げられる。
重要なのは想像と解釈違いがないこと。
もちろんのことだが想像と現実には切っても切れない因果関係にある。想像がそのまま現実になることは大抵の場合ないだろう。
しかしこの街は寸分も狂わず想像通りなのだ
まるで誰かが仕組んだように。
そう思うと気味悪さが腹の底から湯水の如く湧き出てくる。不気味なものが世界に混じって語りかける。ハリボテ感が一層現実味になつてくる。
これは夢ではないのか?自分は今まさに夢から覚めようとしているのではないか?
そこまで思考を巡らせてズキンと頭が痛む。
その痛みは徐々に大きくなっていき
頭を抱え込むほどに痛みだした。
「ぅ…頭が…い、痛い…!」
その場で膝を付きうずくまる。
「(これはまずい…!ここで目立つのは避けなければ…この世界のし、市民たちも俺の異変に気づいてやってくるはずだ…!)」
なぜそう思ったのかはわからない。俺の中の危険信号が赤の点滅を素早く点滅している。ここはまずいと、早く夢なら覚めてくれと、そう訴える。
(セカ……ニ……チ……ジョ……ヲ……コ……ヨニア…ヲ…)
「ッ!?」
この声は…なんだ…?誰が話しかけている…?
く、くそ…意識が…。
キーーーーーーーーン…………
そこで俺の意識はプツンと途切れた。
………………………
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