暗い人種
道に迷ってしまった。
どうやら迷子らしい。
大人だから迷大人か。
それにしても、この辺りの道は入り組んでいる。
まるで、迷わせるために作っているかのように。
でも、あまり時間が掛からずに、ここから抜けることが出来るだろう。
少しだけ方向音痴で、迷うことはよくあったが、持ち前の明るさですぐに解決してきた。
これは、コミュニケーション力を駆使すれば、何とかなるレベルだ。
人がパラパラといて、聞くことは出来る状況にある。
だが、みんな下を向いて、小さい声でブツブツと呟いているだけだった。
来る人来る人みんな、笑顔も覇気も吸い取られてしまったように見える。
気になったが、特に悲観することなく、道を訊ねることにした。
「あの?駅に行きたいんですけど、どうやって行けばいいか分かりますか?」
「ぼ、僕も聞きたいですよ。ここにいるみんなが聞きたいんじゃないんですか?」
その言葉に、返す言葉が見つからなかった。