2030年4月第4週
4月22日(月)
羽陽「フーム……」
今日は健康診断だという。というが授業の合間に体育館で様々なことを測ったりするだけだった。
私はハーピーという異種族のため健康診断は一番最後に行うことになった。検査の結果、当然のことだが異状はなかった。
身長は175cmと同学年にしては大柄な方だった。そりゃ女子生徒が着るであろう制服が入らなくなるわけだ。体操着もお腹周りががっつり見えてたし、早く新しいのを用意しなければ。
―――――――――――放課後
羽陽「何しようかしら…」
何をしようか悩んでいたがこの身体に早く慣れるために、運動した方が良いだろうと考えた。
今日体験入部を行っている部はサッカー/野球/陸上/バトミントン/水泳の5つの部活だった。
羽陽「とにかく運動しなきゃ。」
今日は陸上部に行くことにした。
―――――――――――陸上部女子更衣室
女子更衣室とはよく言ったものだ。教室の中で着替えているだけなのだから下手したら下着泥棒とかありそうだ。最もそんなことすれば大問題になることは明らかのためする人間などいないだろうが。
羽陽「女子達は何をすればいいのかしら?」
首を傾げながら上級生の女子生徒に聞く。今日は特に特殊なことはせず、ハードルを並べてタイミングよく走り抜けることをするらしい。
足が大きい私には少し大変だろうが出来ない話ではないだろう。
羽陽「最初はゆっくり。だんだん早く。最後は全力で。」
準備運動をすれば上級生の指示に従って部活に必要な道具を運ぶ。男子女子混合でやるため一度に同じ練習が出来ない。そのため半分に分けて練習を行うらしい。
いざ走れば意外にもハードルの感覚が狭いことに驚いてしまう。何よりこの巨大な羽根がハードルを倒してしまう。広げて走ればいいのだがそれだと隣のレーンにまで邪魔をしてしまう。
羽陽「陸上部は無理そうだね……それにハーピーは地上を走る生き物でないし……」
苦い顔をしていたのだろう。苦笑されてしまった。
予想はしていたのだが、やはり胸が大きいため速度が速くなればなるほど凄く暴れる。重心を上手く移動させていかないと、すぐに前へ重心が移動してしまう。
羽陽「運動部に入るなら大きめのスポーツブラを用意しないと……」
自分の胸を軽く揉んで周りの人間とサイズを見比べてみる。身体も圧倒的だが胸のサイズも圧倒的に私の方が大きい。これは中々悩ましい現状だと実感した。
4月23日(火)
特筆すべきことはなかった。
体育の時間、桜ちゃんからの視線が凄かった。二人一組になる時、いつの間にか横に居た時は軽い恐怖を感じた。人間って本気を出すととんでもない生物なのかもしれない。
―――――――――――放課後
羽陽「なにしようかしら。」
放課後になり校内をブラブラ散歩していれば、昇降口付近の掲示板に不審者の注意書きが貼られていた。今時こんな馬鹿なことをする人間なんているんだ。としか感じなかった。
その後は特に何も起きず一日が終わった。
そういえばそろそろ生理が来る時期かもしれない。しっかりと準備して挑まなければ。毎月毎月この生理の時期だけは好きになれないな。と考えた。
4月24日(水)
今日は勉強も駄目だったし朝も眠れなかった。何より胸がかなり苦しい。つまり、とうとう来てしまったということだ。今日から1週間前後はキツイ日が続くだろう。
―――――――――――放課後
羽陽「うぅっ……」
まだまだ生理が始まったばかりだが、それでもこれだけキツいのだから気を引き締めていかねばならない。
教室で座って羽根と胸を枕に仮眠を取ろうとするが、やはりキツイものはキツイ。保健室のベッドを使おうと考えたため保健室に向かった。
―――――――――――保健室
羽陽「ベッド使わせてくださーい。」
保健室の先生「羽陽さん。それはちゃんとした理由があるんですか?」
羽陽「……こういうことなんですよ。」
自分の手で下腹部を撫でる。ハーピーは受精したかどうかは関係なく卵を産むため生理初動のこの時期でも人間に比べて負担が重い。
保健室の先生「あぁ~……空いているベッドを使っても良いですけど、他の生徒が使用したいと言ってきたら交代してくださいね」
羽陽「はぁーい。」
保健室のベッドで足を軽く広げて寝転がり身体をじっくり休める。
隣のベッドには桜ちゃんが寝ていた。どうやら連日の寝不足で倒れたらしい。
桜「羽陽ちゃんの役に立とうと思って……ハーピーのことを調べていたの。」
羽陽「それは嬉しいことだけどさー。自分の身体大事にしてよ。」
苦笑する桜ちゃんを羽根で優しく撫でてからベッドに突っ伏していればいつの間にか寝ていた。
4月25日(木)
今日もかなり辛い一日だった。先生に心配されたが毎月のことだし気にしないように伝えた。
―――――――――――放課後
羽陽「くうぅぅっ……」
そろそろ部活を決めなければいけない時期が近づいてきている。こんな体調ではまともな判断も出来ないだろう。幸いにも毎月の産卵日を逆算すれば部活動の提出期限日にまでは間に合う。
三雷「羽陽さん。昨日もそうだったが今日も辛そうだな。大丈夫かい?」
羽陽「全然。キツイものはキツイよ……」
心配そうにしてくれる三雷の印象が少しだけ良くなるが、やはり無理なものは無理。早く学生寮に戻って安静にしておきたい。
そういえば入学式の時から三雷の周りには取り巻きの女子生徒が沢山居たが、ここ最近そのように取り巻きを引き連れている様子を見かけない。私が見てないところでは取り巻きを引き連れているらしいが不思議に思う。
羽陽「そういえば取り巻きの女子生徒は?」
三雷「あぁ。羽陽さんと会う時だけ、俺から離れる様に言っておいたんだ。」
羽陽「ふぅ~ん。でもアタシのことを調べているなら、今誰が一番大事な人なのか、わかっているはずだよね?」
溜息を吐いて壁へ身体をもたれかからせる。三雷は私と桜ちゃんのことは既に知っているらしい。というかあそこまで女子生徒の取り巻きがいるならば知っていないとおかしいの。
羽陽「ま、友達かな。まだ入学したてだし。お互い学生生活を楽しみましょ。」
三雷「羽陽さん……」
定型文にして返したつもりが何故か印象を良くしてしまった。そんなつもりはないのに三雷は私のことを本気で嫁さんにしようと考えているのか。
その後は普通に雑談して終わりにした。
4月26日(金)
今日は少し楽になった日だった。勉強は余裕なのだがやはり生理による体調の崩れが酷い。
―――――――――――放課後
羽陽「今日はマシな方かぁ……」
だんだん下腹部の痛みなどが辛くなってくるが辛くなればなるほど、それは終わりに近付いていっているということ。としておきたい。具体的なアレコレは、いくら予想を立ててもわからないものだし、がっつり対策を立てて外した時が辛いから現状維持がベストだろう。
ということで今日もすぐに学生寮に戻って安静にしておくことにした。
この生理の期間中は何も出来ないのが辛すぎる。もっとみんなでお話したり遊びたいのだが、生理というのが耳に入っているのか、私に話しかけてくる女子生徒の数は確かに少なくなっていた。情報の伝達が速いことはいいことである。みんなに気を使わせてしまって申し訳ない気持ちになるがしかたないのだ。
4月27日(土)
休日だが遊びに行く気力も起きない。そのため図書室に行き図書館には置いてない本を借りて読むことにした。
4月28日(日)
明日は三雷との食事がある。この生理の辛さを和らげる薬が仕送りの中に入っているわけないし、我慢して食事しなければならないことに若干悲しみを覚える。
ここ1週間は本当に何もしなかった1週間になったため何かを頑張らなければいけない気がしている。
とりあえず【火の鳥】は全部読んでおこう。ぶっちゃけ表紙に心を惹かれたがそれでも読む理由としては十分だろう。
羽陽「あなたはもう死ねません。って言ってみたいなぁ。演劇部もあったはずだよねこの学園。部活動が沢山ある学園に来れてよかった。」
学生寮の自室で独り言を言いながら【火の鳥】を読んでいく。最後まで読み終われば一応感想文をノートに書いておく。その間も生理による能力の低下を感じたが、納得のいく感想文は書けたのだからヨシとしよう。
明日着ていく服を考えて今日は早めに寝ることにした。