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さようなら。君たちに会いたい、けど会えない

はいーーーー!


ギリギリセーフ(笑)


前回は期限2分前提出だったと思います。(何してるの?)



次回こそは――!……まあ、期待はしていないと思いますが(笑)


以上、庭城でした。

 気が付くと、いつも寝ている小さな洞穴(ほらあな)の中であった。


 ゆっくりと眼を開けると、ホロケウの姿が見える。


「……ホロケウ?」


「やっと眼を覚ましたか?死にかけていたお前を(かつ)いで、傷を癒して……と中々面倒をかけてくれる」


 いつもの様に強い語気が耳を打ち付ける……が、この感覚が嬉しかった。

 僕は生きて戻ってこれた。という、事実がハッキリと分かるからだ。


「ありがとう。そうだ……。ホロケウ、話したいことが…………」


 身体に力が入らない。口が上手く動かせない。


「無理をするな。ケガをしている身だ。体力も落ちている。栄養をつけろ、獲物は取ってきた。ほら……」


 ホロケウが首を洞穴の入り口に向ける。

 寝ている身体のまま、首だけを動かすと食料のシカが一匹倒れていた。

 

「ホロケウだけでやったのか、やはりすごいな」


「いいや、お前を見つけた時に一匹の傷だらけのオオカミがシカを捕らえて食べようとしていたのでな。お前を傷だらけにした奴だとすぐに分かってな、成敗(せいばい)がてらの戦利品というやつだ」


 そうか、あのリーダーオオカミはホロケウがやっつけたのだな。



 その時だった……。身体中から嫌な気配が漂ってくる!



 いま、ホロケウは何と言った……?



 傷だらけのオオカミがシカを捕らえて食べようとしていた……?()()()?あいつらの縄張り……、僕がさっきまでいたところ。



 ()()……!!



 僕は恐る恐るシカの顔を見る。


 ここからでは良く見えない……が、シカの口から()()()()()()()()――――。


「あ、ああああああああ!!!」


「どうした!?ウォセ」


「そ、そのシカは……」


「まさか――!!」


 ホロケウはすぐに気付いた……。


 そう、そのシカこそ僕が密かに恋心を抱いていた()()()()()()()()()()…………。



 僕は力を振り絞り、ユクコロのところに向かう――!


 ユクコロはまだ生きている……が息はか細く、いまにも消えてしまいそうだった。雪原の風のように……。


『……どうして……ユクコロ』


 会話を試みる――。


「……ああ、ウォセさん」


 返事を返してくれたが、喋るのもきつそうであった。


「ごめんなさい……、あなたと別れた後、なにやら騒がしいなと思ってその場所に近づいたら、傷を負った大きいオオカミと出会ってしまって……私は生きているのですか?」


『ああ……!生きているとも。そのオオカミは僕の仲間がやっつけてくれたんだ』


「そうですか……ありがとうございますとその方にお伝えください……」


 眼が開かないのか、僕の後ろにそのオオカミが居るというのに。


『ああ、伝えておくよ』


 僕がそう言うと、「お願いします」と優しい声が返ってくる。


「…………」


『…………』


「あの……お礼を渡していなかったですね、どうぞ……」


 口の傍にユクコロのように横たわっている花が見える。これのことだろう。

 綺麗なナズナの花が姿を見せている。


『ありがとう』


「……それと、いままでのおくりもののお礼もしちゃいますね」


『どういうこと?』


 ユクコロは息を整えてゆっくりと口を開く……。


「……私を食べて下さい。どうせ助からない命。なら、いままで私の食を用意してくれたのですから、私も同じように食べ物を用意するまでです」


『何を言っている――!食べるなんて、そんな――』


 反論する間もなく、ユクコロは続ける――。


「……息づかいで分かります。かなり体力を消耗しているのでしょう?丁度いいではないですか」


『食べることなんて出来ない』


 僕が首を振ると、後ろにいたホロケウが「食べるんだ」と小さく呟く。


「ホロケウ!!」


 僕は思わず叫んでしまった。


 ホロケウは小声で語る……。


「……本当に会話が出来ているのだな。不思議でならない、オレには何を話しているのか分からないが……そのシカを食べるのを嫌がっているのは分かる。分かるが……お前の体力が心配だ」


 いつものホロケウはどこにいってしまったのか、と問いたくなるほどに語気に力がない。


「すまない、お前が話していたシカだと分かっていれば……オレは……」


「ホロケウ……」


 ホロケウの申し訳ないと言う声に僕は何も言い返せなかった。

 僕を思って、僕のためにと考えて行動したのだから……。


「……私にはお仲間さんも見えなければ、会話も分かりませんがそのオオカミさんと()()()()です」


 ユクコロが口を開く。

 会話が分からなくても、お互いの考えは一致しているのか……。


「どのみち助からないのです。あのオオカミに食べられてしまうより、あなたの力となって命を終えたい……もらってくれませんか?”私の最初で最期のおくりもの”を……」



 返事を返す(ひま)もなく、ユクコロは息を引き取った……。



『ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!』


 僕は洞穴から身体を無理やり出して吠える!


 何も意味がない。

 吠える必要がない。

 でも、僕は力が尽きるまで吠え続けた…………。



***

 数日後、僕の身体はなんとか元に戻った。

 走り回れるし、吠えても全然疲れはしない。


「ユクコロありがとう。そして、ホロケウ」


 ()()()()()()()()()――、僕一匹だ。


 身体を癒して眠りに就いている時のことだった。

 

 眠っている僕にホロケウが(ささや)いたのだ……。


「ウォセ、すまなかったね。お前の大事なものをオレは酷い形でなくさせてしまった。……お前は優しいからきっと許してくれる……、でも、オレ自身が許せないんだ。だからお前とはもう会わない。さようなら、大好きだったよ――――」


 それからホロケウの姿を見る事はなかった。


「ホロケウ……ありがとう。そして、僕の方こそすまなかった」



 白い大地に一匹、オオカミの声は風と共に消えてゆく。


 もうあの二匹には会えないのだ……。会いたいのに、会えない――。


 僕は、支えてくれた二匹のためにも、「元気でやっているよ!」と伝えることしかできない。


「――――行こう」


 僕は走る。ひたすら走る。大きな山に向かって――、そして、力強く遠吠えをするのだった……。




 おしまい。





***

後から知ったことがいくつかある。

 この物語を聞いた”ヒト”と呼ばれる生き物が()()()()()()狩する神、”ホロケウカムイ”と言い、遠くから聞こえるウォセのことを、吠える神”ウォセカムイ”と呼んだそうだ。

 関係はないが、鹿を獲る神は”ユクコイキカムイ”と呼ばれているらしい。……そういえば、あいつはあのシカのことを”ユクコロ”と呼んでいたな。もしかしたら、ユクコロが時代の流れでユクコイキに変わったのかもしれない。


 そして、あのシカがくわえていた花、ナズナだったな。あれには意味があったそうだ。


『あなたに私のすべてを捧げます』


 ……本当に笑えない。ああ、ウォセ。お前に会いたい。けど、会うことはできない。

 だから、お前の遠吠えが聞こえたらオレは力尽きるまで狩りをし続けるのだ―――。






前回は期限2分前提出だったと思います。(何してるの?)



次回こそは――!……まあ、期待はしていないと思いますが(笑)



以上、庭城でした。

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