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陰ながら恋心を抱く一匹のオオカミ

あけましておめでとうございます。


今年もよろしくお願いします。


って、おかしい……、お正月の間に終わるはずだったのに……


――はい、いつものです。


今年は……違いますから!大吉引いたから!!(意味わからないです)

「――はぁぁぁぁー……」


 鋭い歯から(こぼ)れる溜息(ためいき)は白く、眼の前でゆっくりと消えていく。

 

 僕は身体を震わせて積もった雪を振り落とす。

 明るい茶色……黄色に似た色の体毛が姿を現す。


「今日()会えなかった……」


 広大な白い大地に寝転がり、そう呟く。


 僕が会いたいお目当てというのは、僕よりも一回り大きくて落ち着いた灰色の体毛をしている子だ。

 その子に対して()()()()()感情を抱くなんて可笑しいことは分かっている。

 なぜなら、その子は獲物、僕達オオカミの食料だからだ。


***

 僕が仲間と狩りに出た時のことだった。


 獲物が見つからず、僕は一匹でふらりと雪原を歩いていた。

 その時だった。何の警戒(けいかい)も持たずに、呑気(のんき)に草を頬張(ほおば)っているシカを発見したのだ。


 周りに仲間はいない。向うも同じ。

 僕が獲物がいることを仲間に知らせるのは容易(ようい)だったが、それをしなかった。

 鳴き声で逃げられてしまう可能性の方が高い……ならば、ゆっくりと確実に仕留められる所に移動しようと考えたのだ。

 僕は殺気を押しとどめ、一歩、また一歩と獲物に近づいていく――。


 ……あの時、すぐにでも仲間を呼べばよかったと後悔している。


 僕は……恋をしてしまったのだ。獲物である、食料である一匹のシカにだ……。

 何故かは分からない。おそらくは、ゆっくりとした動きで食事をしている姿に見惚(みと)れてしまったのだ。


 僕はそのシカを仕留めることなく、その場を後にしたのだった。



 それからというもの、僕は狩りの度にあのシカがいないかと探していた。

 お(かげ)で、「お前が真剣にやらないから腹ペコだ!」なんて仲間に怒られてしまう始末だ。

 だが、そのお蔭か、僕はあのシカを見つけることが出来た。その子の生活している場所も分かったので、狩りの時はそこに向かわずに違う所に行くようにした。

 暇なときに笹の束をくわえてあの子が来そうな所に置きに行く。……自分でも分かっているが何がしたいのか分からない。……気持ちだけでも受け取って貰いたかったのだろう。


 もしも、会うような事があれば僕はあの子を仕留めることになる。

 あの子も全力で逃げて、二度と会わない様に警戒するだろう。


 そんなことを考えながら、今日も僕は笹を集めて、いつもの所に持って行こうと思った時だった――。


「――最近、どうも可笑しいと思ってはいたが、何をしているのだ?ウォセよ」


 後ろから聞きなれた声を掛けられて、振り向くと仲間であるホロケウが立っていた。


「肉好きのお前がそんな雑草をくわえて……まったく。何があったか話してみろ。相棒であるお前がそんなでは狩りに支障が出ているのだからな」


 ホロケウはそう言い放ち(あき)れた顔で僕を見るのだった――。


 



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