表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/119

その名はテスタロッサ

「お久しぶりです国王陛下。ご機嫌麗しゅう。アーゲノン・テスタロッサただいま参りました」

華やかなドレスで着飾った美少女はテスタロッサと名乗った。


「おお、よく来てくれたテスタロッサちゃん。堅苦しい挨拶はそのへんにして。もっと近くでその可愛い顔を見せておくれ」

国王はテスタロッサを手招きするとテスタロッサの顔をさすって破顔した。

デレデレだな国王。


「カズンも久しぶりね」

テスタロッサがこっちを見て言った。

そうか、俺たちは久しぶりに会うのか。

「ああ、そうだな」


俺の返事にテスタロッサの目つきが一瞬だけだがグッと鋭くなった気がした。


「国王陛下いえ、お義父様。あたしカズンと二人きりで話がしたいんですけどいいですか?」


「おお、そうじゃな。積もる話もあるじゃろうて。好きにするとよい」

そう言った後、国王は小声で俺に耳打ちした。

「くれぐれもバレんようにな」



場所を移して俺の部屋――。


「で、あんた誰なの?」

バレたー。国王速攻でバレましたけど。


鋭い視線を俺に浴びせてくるテスタロッサ。


「な、何イッテルンダ。お、俺はカズンじゃないか」

「知らないみたいだから教えてあげるけどね、カズンはあたしには敬語で話すのよっ!」

びしっと俺を指差す。

マジかよ……。

そんなのエルメスも国王も一言も言ってなかったぞ。あいつら~。


「顔はかなりイケてるけど詰めが甘かったわね。で誰? 話さないなら騒ぐわよ」


「はぁ、実は……」


俺は仕方なく全てを話した。

俺の正体。

俺が異世界から来たこと。

本物のカズン王子は家出したこと。


「ふ~ん」


黙って俺の言葉に耳を傾けていたテスタロッサが口を開いた。


「もしかしたらカズンはあたしが嫌で逃げ出したのかもね。そうだとしたら今あんたがここにいることの責任の一パーセントくらいはあたしのせいかもしれないわね」


テスタロッサが遠くを見つめる。


「あたしカズンが大嫌いだったの。王子として生まれたからって何もしないで遊んでばかり……」

うーん、耳が痛い。

「メイドや兵士たちにはいっつも命令してて、そのくせ自分は危ないところへは飛び込む勇気もないクズ王子だったんだから」


「婚約解消は出来なかったのか?」

「出来ないわよ。うちの国は経済的にも軍事的にも弱小国家だもん」


王女にも悩みはあるんだな。

俺は自分の置かれていた境遇を思い出す。

たった一度就職に失敗したくらいでうじうじしていた俺はなんだったんだろう。

テスタロッサを見習うべきかも――。

「だからあたし誰も見てないところでカズンをガンガンいじめ抜いてやったわ」

前言撤回。


「その点あんたは骨がありそうね。とりあえず今はいじめないであげるわっ」

テスタロッサはそう言ってウインクをしてみせた。

その姿は怖いくらい魅力的だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ